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「〈つながり〉を読み解く英文読解」によせて

▼いつも読んでいただきありがとうございます。「〈つながり〉を読み解く英文読解」について,twitter で次のようなありがたいお言葉を頂戴し大変恐縮に感じております。今日はこの「〈つながり〉を読み解く英文読解」を書いている意図や,概要などについて記したいと思います。

「〈つながり〉を読み解く英文読解」概要

▼現段階で「〈つながり〉を読み解く英文読解」は以下のような構成になっています(番号は便宜上のものです)。2020年4月28日の時点で[03.52]まで書き終えてアップしました。

[00.00] 【大原則】英語は同じ表現の繰り返しを嫌う
[01.00] 同一表現の繰り返しを避けながらつながりを作る
  ┣[01.10] 代名詞・指示語を使って言い換える
  ┣[01.20] 〈定冠詞(the)+名詞〉を使って言い換える
  ┣[01.30] 代動詞を使って言い換える
  ┣[01.40] 代用表現を使った節の言い換え
  ┣[01.50] 省略する
  ┣[01.60] 類義語・反意語を使って言い換える
  ┣[01.70] 上位語/下位語を用いる(抽象化⇔具体化)
  ┗[01.80] 部分語・関連語を用いる
[02.00] 連結表現(cohesive devices)
  ┣[02.10] 順接(順態接続):A⇒B
  ┃ ┣[02.11] 因果関係
  ┃ ┣[02.12] 条件と帰結
  ┃ ┣[02.13] 目的と手段
  ┣[02.20] 逆接(逆態接続):A⇔B
  ┃ ┣[02.21] 対比・比較
  ┃ ┗[02.22] 譲歩と主張
  ┗[02.30] 説明:A=B/A=B, C, D, E…/A+B+C…
    ┣[02.31] 具体化・同格
    ┣[02.32] 抽象化・一般化・要約
    ┣[02.33] 類比・類推・類似
    ┗[02.34] 列挙・追加・補足・補強
[03.00] 情報構造(information structure)
  ┣[03.10] 旧情報
  ┣[03,20] 新情報
  ┣[03.30] 重点情報
  ┣[03.40] 主題と題述
  ┃ ┣[03.41] シームとリーム
  ┃ ┗[03.42] しりとり型と鯉のぼり型
  ┗[03.50] 情報運搬構文(information packaging)
    ┣[03.51] 前置・左方移動
    ┣[03.52] 後置・右方移動
    ┣[03.53] 倒置
    ┣[03.54] 存在構文
    ┣[03.55] 外置
    ┣[03.56] 分裂文
    ┣[03.57] 受動態
    ┗[03.58] 左方転移と右方転移
(続く)

なぜ書き始めたのか

▼以前から,大学受験生の苦手な分野の一つとして,文と文や段落と段落の「つながり」を問う問題が挙げられていました。センター試験(筆記)では第3問で例年,そうした問題が様々な形式で出題され,受験生を悩ませてきました。

▼もちろん,中には「こんな問題,楽勝だよ」という受験生もいたはずです。しかし,かなり前に,ある学習参考書の出版社の編集さんとお話をしたときに「学校の先生方から,この第3問対策の問題集が欲しいという声がよくあがっている」という話をうかがい,また,実際,授業で「つながり」を問う問題について解説していると,どうしても「場当たり的」「その場しのぎ」な解説になってしまいがちで,「つながり」について体系化する必要性をずっと強く感じてきました。

▼さらに,いわゆる「自由英作文」を出題する大学が年々増加していることも「つながり」を考える必要性を高めています。文と文のつながりを意識し,まとまりのある文章を書かねばなりませんが,そのための道具としても「つながり」について体系化する必要があると考えてきました。

▼また,もう二十年近く前になりますが,谷口 賢一郎『英語のニューリーディング』(大修館書店,1992年)という本に出会っていたことも大きかったと思います。昔から「英語を読むための道具は一つではない」ということに気づいてはいたのですが,この本がそうした様々な「道具」の概略を学ぶ入口になってくれました。

▼ところが,いざ体系化しようとしても,いわゆる「構文」とは異なり,「つながり」は前後関係などで変わるため,かなり流動的であり,また,いわゆる「情報構造」はあくまでも「傾向」に過ぎず,文法のルールに比べると厳密さに欠けるところもあり,非常に難しいと言わざるを得ませんでした。

▼じっさい,「ディスコースマーカー」を除けば,学習参考書や問題集で「つながり」を体系的に説いたものはきわめて少なく,体系化するにはどこからどう手を付けるべきかわからないまま,それでも断片的にあれこれ書き始めました。

巨人の肩の上にのる

▼また,もっと大きな課題がありました。それは,先人たちが積み重ねてきた研究に基づいたものを書かねばならない,ということです。これは学習参考書や問題集に共通の問題点なのですが,多くの参考書や問題集には,説明の背景となっている参考文献の「出典」が書かれていません。一般書や研究書であれば参考とした文献の出典が書かれていますから,興味を持った人はその先に進むことができますし,書かれている内容に対する信頼性も高まります。まして,これから大学に進学する受験生を指導する以上,私自身は「ぼくのかんがえたさいきょうの〇〇」を書くという独りよがりの姿勢ではなく,「巨人の肩の上にのる矮人」としての姿勢を持つべきだと思うのです。

▼そんなこともあり,何年にも渡ってずっと必要な文献を集め,それを参考にちまちまと書き溜めてきました。ただ,何しろもともと英語学は門外漢,いまだにわからないことだらけ,知らないことだらけです(※私の専門は社会学です)。また,とんでもなく膨大な知見を持った化け物(誉め言葉)のような目利きの先人たちの慧眼に恥じぬものを作らねばなりません。まして,これを参考に勉強してくださる受験生の皆さんに対して誤った情報を提供するわけにはいきません。そんな思いで,日々,悪戦苦闘しています。

専門知を入試対策にどう生かすか

▼そして何より大切なことは,そうした専門書で得た知見を大学入試の英語の学習にどう結び付けるか,ということです。たとえば,この問題を解く際にはこの観点で,こうした英文を読む際にはこの道具を使って,というように,入試の英語の学習で「使える」道具立てを整える必要があります。その意味で,この「〈つながり〉を読み解く英文読解」は,私自身が学んできたことの備忘録でもあると同時に,受験生の皆さんにも役立つ「道具」であってほしいと願っています

▼ただ,これは私自身の力不足が大きいのですが,まだ受験生の皆さんが活用できる「使いやすい道具」にはなっていないと思います。これは文法学習でも言えることですが,整理するためにはどうしても「専門用語」を使わざるを得ないため,受験生がそうした用語に振り回されないようにしなくてはなりません。また,書物によって書かれていることもまちまちなので,その中で整合性を取ってまとめることも必要になりますし,そもそも「分類」自体が使い勝手の良いものでなくてはなりません。今後,ここに書いたことをさらに進化させて受験生にとって使い勝手の良い道具にしていければと考えています。

▼なお,「〈つながり〉を読み解く英文読解」では,構文の解説は一切していません(それはこの文章の目的ではないためです)。そのため,これを活用していただくためには,自分で文構造を文法的にあるていど正しく理解できることが前提となります。その点は予めご了承ください。

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