博士と妻 第二回 洗濯機
今思い出しても笑ってしまう。
たしか結婚してすぐの頃だった。
洗濯機の調子が悪かったので、私は近くのコインランドリーに洗濯に行っていた。
妻は第二種電気工事士資格を持っているので、はりきって洗濯機の修理をするというので私は一人で出かけたのだった。
乾燥機にもかけて洗濯物もふかふかになって、意気揚々と帰ってきたちょうどその時、事件は起こった。
「キャー」という妻の声に何事かと駆けつけた。すると、まるで水道工事のCMのように水道の蛇口から大量の水が彼女の顔を直撃していたのだった。
妻は水道の水を全身に浴びながら何とかして水を止めようと格闘していたのだが、どうやら彼女は洗濯機の問題は排水のホースに何かが詰まっていると考えて洗濯機を横に倒したらしい。その弾みで、洗濯機に水を溜める水道ホースの接続部分が外れて水が溢れ出したのである。
洗濯機と洗面台に挟まって、濡れネズミのようになって固まっている妻を見て私は呆然とした。
まるで志村けんのバラエティーのような状況に既視感を覚えながら、私はしばらく何もすることが出来なかった。
しかし洗面所に水が大量に流れていることに我に帰って、蛇口をとりあえず洗面台に向けて排水口を確保したのである。
水道の直撃を免れた彼女は、びしょびしょなままゲラゲラ笑っている。つられてわたしも笑い出し、着替えも忘れて笑い転げた。
二人でずぶ濡れになった5月の連休の新婚生活の始まりであった。
結局、洗濯機は買い直すことになった。
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