見出し画像

ベンゾジアゼピン減断薬 - 操作的診断基準はなぜ無力なのか (3/4)

割引あり

精神科の(研究ではなく)臨床において操作的診断基準を用いる場合、それは問題集の解答編のように用いられることが多い。

診断を下すために、「DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」を片手にそこに記載されている症状の有無を患者さんに1つ1つ確認する精神科医はいません。
例えばうつ病に関しては多くの精神科医が症状や経過、状態像についての知識やイメージを持っています。それに照らして問診を進め、目の前の患者さんの経過や症状が「自分の中のうつ病像」に合致していればうつ病と診断を下すことが大半だと思います。パニック障害の診断でも統合失調症の診断でも同様です。日常的な精神科診療の場において、診断を下すために操作的診断基準が参照されることはまずありません。

臨床において操作的診断基準が引っ張り出されるのは前述のように公的な診断書を作成する場面であることが多い。操作的診断基準の「うつ病のページ」を開き、既にうつ病と診断した患者さんの症状や経過が操作的診断基準に合致していることを確認して、F32.1やF32.3といったコードを診断書に書き込むのです。

ここから先は

1,018字

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?