見出し画像

ベンゾジアゼピン・コラム - 我らの敵を根絶やしにせよ [Free full text]

減断薬界隈医療側エリアにおいて最近台頭が目覚ましいのは、「反ベンゾジアゼピン特務局第13課」とでも形容すべき医師たちである。

ベンゾジアゼピンの負の側面を認識していて、だからベンゾジアゼピンをいっさい使用しないという立場の医師の一群だ。比較的若い精神科医がこの派閥を構成していて、彼らの勤務先は大学病院や総合病院精神科といったアカデミックな要素が強い医療機関であることが多い。

興味深いのは、彼らがベンゾジアゼピンを処方しないからといって代わりに精神療法を行うわけではないところだ。
不眠症の患者さんにベンゾジアゼピンを処方しない理由を訊いたら「望ましくない副作用と依存性があるからだ」とのたまうのでCBT-Iでも施しているのかと思ったらミルタザピンとクエチアピンを処方していたりしやがるのである。適応外処方であるし、望ましくない副作用と依存性がミルタザピンとクエチアピンに無いわけでもない。向精神薬に対する彼らのベネフィット/リスク評価は、ことベンゾジアゼピンが絡む場面においてバグっているように感じられる。

彼らが初診から診ている患者さんがベンゾジアゼピンを排除した薬物療法で良くなるならそれはそれでよいのだが、彼らの勤務先の属性上、他の医療機関からの紹介患者を引き受けるケースも多く、そこで問題が生じることがある。患者さんがベンゾジアゼピンを服用しているとわかると機械的にそれを中止してしまう習性が彼らにはあるからだ。一定数の患者さんが離脱症状を経験し、それに対するケアはプア。ベンゾジアゼピンを使わない彼らは、ベンゾジアゼピンの離脱症状への対処には全く長けていないことが多い。

オンライン医療相談のクライアントから「町医者のいい加減な処方でベンゾ依存になったので大学病院に転院したらベンゾを全部切られて酷い目に遭った」というお話を伺ったことは一度や二度ではない。
最近は減薬外来を設けている大学病院もあって、そういうところはまた違うのかもしれないが、すでにベンゾジアゼピン依存を呈している患者さんが減断薬を希望して大学病院を受診する意義について、僕は個人的には懐疑的な立場である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?