見出し画像

ベンゾジアゼピン減断薬 - 水溶液タイトレーションで微量減薬はできるのか(できているのか)

僕はベンゾジアゼピン受容体作動薬の、いわゆる「水溶液タイトレーション」について、患者さんにはお勧めしない立場です。

第一に、約束事としてそれはできません。
製薬会社のウェブサイトを覗いてみるとわかりますが、どの企業サイトでも「医療用医薬品は、患者さん自身のご判断で服用(使用)を中止したり、用法・用量を変えたりすると危険な場合がありますので、服用(使用)しているお薬について疑問を持たれた場合は、かかりつけの医師・歯科医師または調剤された薬剤師に必ず相談してください」という記載があります。

これは医療用医薬品を使用する場合の大原則なのです。
医師を頼りにしない自己判断に基づく減薬・断薬の手段としての水溶液タイトレーションについて、インターネット医療相談(遠隔健康医療相談)や診察の場でお勧めすることは、まずこの点から致しかねます。

その主治医が頼りにならないケースが少なくないことは認識していますが「駄目なものは駄目」とさせていただいております。

第二に、純然たる技術的(薬物動態学的)な観点からも、水溶液タイトレーションは成立しない・していないリスクがあると僕は考えています。
調剤の訓練を受けていない一般の患者さんがAmazonで電子秤やシリンジやビーカーを買い揃えても、(「その手の」ブログなどでしばしば言及されているような)微細な用量調整は極めて難しいのではないでしょうか。
減らしたつもりで減っていない、ステイしたつもりで減ってしまっている(そして離脱症状が現れる)、といったテクニカル・トラブルが人知れず起きている可能性は低くないのではないかと想像します。

水溶液タイトレーションを実践している方、しようとしている方はよく勉強されていますから、最高血中濃度(Cmax)や最高血中濃度到達時間(Tmax)、そして血中濃度半減期(T1/2)といった薬物動態学的指標をご存知かもしれません。特に作用時間と近似する半減期については耳にしたことが多い方か多いのではないでしょうか。

ここから先は

2,282字 / 1画像

¥ 1,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?