【読書】『ROADSIDE BOOKS』 都築響一 本の雑誌社(2014)
最近のマイブームは、都築響一、坂口恭平、東浩紀の三人である。
筆頭の都築響一の本を読んで思うことは「ちくしょー」。
悔しいのだ。
以前写真集を何冊か持っていたけど、書いたもの(本、Web含む)を読んでいなかった。
都築がどういう人間か知らなかった。
どういう思いで、どういう経緯で、写真を撮って本を出していたのか知らなかった。
何より都築が大切にしているものへ向ける優しい視線に気づかなかった。
これが悔しいのだ。
都築は、月四回毎週水曜日に『ROADSIDE Weekly』という有料メールマガジンを発行している。
2012年に発行を始めて10年になる。
メールマガジンといっても「毎週水曜日の朝5時に、1万字からときに2万字を超える記事と、200枚以上の写真や動画や音源がメールで届く仕組み」(『圏外編集者』都築響一 ちくま文庫(2022))で、1回のメールマガジンが1冊の雑誌に匹敵し、かつその膨大なバックナンバーが月1000円、1回あたり250円で読めるのだ。
都築は、このメールマガジンを発行するにあたり、「…そんな野望を実現させてくれるメールマガジンのシステムは、世の中に存在しなかった。なのでけっきょく、自分たちでサーバーを借りて、ゼロから新しい配信システムを構築しなくてならなかった。」(『圏外編集者』都築響一 ちくま文庫(2022))。
また、少額の課金ができる世の中を待っていたともいう。
当然、メールマガジンを取るようになり、そしてバックナンバーを読み漁るようになり、ますます本を読む時間が減っている。
こういうことを知らなかった自分が悔しい。
書評である本書の中で都築は、「…久しぶりの「やられた」感に打ちのめされた、…」(本書P36)、「…その一冊をある日僕は見せられ、その美しさに打ちのめされた。」(本書P87)と幾度も打ちのめされている。
僕の悔しさと同じではないだろうか。
都築のモチベーションは、「…「好きだから」じゃない。「いま取材しておかないと消えてしまう」「自分がやらなきゃ、だれもやらない」というやむにやまれぬ危機感、そして世間の無理解に対する怒りと焦燥感だ。(談)」(本書P302)だ。
都築の目は血ばっしているかもしれないが、その目線は優しい。
メールマガジンのバックナンバーに次のような美しい文があった。
「他人と交わることも、人を押しのけて出ていくことも、言いたいことをいつでも言えることも、面と向かって反抗することも、ましてや愛を告白することもできなかったら。そういう人間にとって芸術はサイドの砦に、唯一のサバイバルツールになりうる。(略)…誉められることもなく、貶められることもないまま、○○君はこの先もスクラップブックを作り続けていくのだろう。そして新しい一冊ができるたびに、新しい封筒が届くたびに。僕はそのひそやかなエネルギーのかけらをもらうのだ。」(2013年2月20日号)
僕はこれを手書きで写した。
そして最後に「ちくしょー」と書いたのだった。