【読書】『創作の極意と掟』 筒井 康隆 著 講談社 2014年
ここ最近は、東洋思想から「禅」と辿ってきたが、ここで筒井康隆となった。
NHKで筒井康隆90歳の特集があり、その中で取り上げられていた本の中で読んでみたいと思ったのが本書だ。ここまで読んできた本と全く違う、と思われるかもしれないが、そんなことはない。ただ、この点については後でふれたい。
序言の冒頭に筒井の本書は遺言であると書いている。
「この文章は謂わば筆者の、作家としての遺言である。その対象とするのはプロの作家になろうとしている人、そしてプロの作家すべてだ。」
ただし、エッセイであるという。
このあたりの書き方が筒井康隆なのだ。
高校から大学までは筒井の本を読みまくっていた。
文庫版が出るたびにほぼ買っていた。
本編を読んでいても読むリズムが懐かしい。
筒井節なんだ。
筒井は「小説」について、「凄味」から始まって「幸福」まで32の項目に渡ってあの手この手の筒井節で迫ってくる。遺言なんてとんでもない。
筒井の「文学部唯野教授」は今も持っている唯一の筒井の本だ。
この本は、現代文学理論をぶった斬る内容だったけど、僕には現代思想の入門書(入門以上には進まなかったけど)であった。他の入門書も買ったけど、これほど「読める」本はなかった。筒井は「読ませる本」を書くプロなのだ。
本書では、いくつか実験をした、と書いてある。
理論を理解したうえで、あえて違ったアプローチでチャレンジする。
最近ベストセラーになった「残像に口紅を」のほか、いくつか出てくる。
自分のスタイルに固執しない姿勢がある。
本書を読んで一番困ることは、紹介されている本を読みたくなってしまう。
筒井は本を買わせるプロでもあるのだ。