見出し画像

冬の蜂の生態


冬の蜂

先日蜂に刺された。
冬なのに。

苦痛をぼくに与えたこの蜂はどこから現れたのだろう?
そう言えば数日前、枝の剪定をしていて、長く伸びて絡まった枝を力強く引っ張ったりしていて、もしかしたら巣でもあって、この単体がカーディガンに落ちて、ポケットに潜り込んだ可能性は高い。

近寄る物体(ぼくの左手)に身の危険を察して刺した気持ちは分かる。
表情はないんだけど、彼が怒っているらしい事を察することができた。

渾身の力を振り絞って刺したのだろう。まだ刺し足りないのか、胴を丸めてヒクヒク尻を動かし対象物を探していた。体力の低下している冬では動作に精彩を欠いていた。ぼくは容易に彼の攻撃を回避できた。

どうしたものだろう?

ピンセットで蜂を捕まえ、空のグラスに落とし、グラスをテーブルに伏せ様子を見た。グラスの淵に少し付着しているアルコールのガスが中に充満しているのか、苦しんでいる様子が伺える。

まあ、いいか。
どうせ、外に放っても群れから外れたこの単体は自立して生きていけるわけもないし、とそのまま放置放した。

三日後。
時々襲ってくる痒みで、そう言えばあの蜂はどうしているだろうと思い出した。
様子を見てみると、まだ生きている。
使いっ放しのグラスで外側の手垢やら内側に付着した被膜やらがガラスを曇らせ中の様子が鮮明ではなかった。

洗浄済みの新たなグラスに置き換えると、この蜂は生気を取り戻した。
グラスの内壁を登り中腹に佇んだ。

蜂の冬の休息活動は

Queen

のようであると推測する。
蜂の生態は、共同住居の中においてそれぞれの役割を担って群集で社会生活を営んでいそうだ。
彼あるいは彼女の、群れでの役割はなんであったのかは知らないけど、成虫でありそうなので、その日以来少し観察してみようと思いついた。
観察するためにはこの蜂に餌を与えなければならないと思った。
肉食なのだろうか、草食なのだろうか?

雰囲気からしてカマキリと戦って捕食したり、ミミズなんかを丸めて食ったり肉食っぽい気がするが、実はぼくが夏よく見る光景としては、熟したイチジクを食い荒らしている。

その観点から、オレンジなんかも好きかと思い、皮をガラスケース(グラス)の中に差し込んでみた。

2時間くらい後。
・皮の周りを活発に動き始めた。
・オレンジの皮に止まる。

さらに数分後。
・オレンジから発せられる香り(ガス)の為か、かじったエキスの為か、苦しんでるのか、酔ってご機嫌なのか、もがき始めた。(ひっくり返る。足を動かし、つかみどころを探すようである。アルコールを摂取した時の人が酔っ払ったようである。)
・なのでオレンジの皮を取り出す。
・ケース内の空気を入れ替える。
・ケース内の通気を良くする目的で網目の粗い布を敷く。

思えば冬眠中の動物は行動を起こさないのだから、エネルギー消費はほぼない。なら供給しなくても生き延びられるとも言えよう。わたしたち人間の常識で余計なお節介は止めようと判断した。

幸いこの部屋は外気と同様寒い。冬眠には適している。

この蜂もぼくもこの冬が過行くまでじっと絶えよう。

そして春が来て、また力強く生きていく意義を見出そう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?