魔法

いつしか全てを諦めて

特に何を欲しいということもなく

感情を失えば楽に生きられる

と人間らしさをも要らなくなった。

悲しいと思うことに疲れ、

こうありたいと思う度に絶望した。

期待も願いも全てやめた。

自分を守る毎に壁を隔てて

来るものを拒み、去るものは追わなかった。

でも唯一手にしたいと思った。

あの人だけは。

欲しくて欲しくてたまらなかった。

気付いたら手を伸ばして

手中に落とそうと躍起になった。

不思議なものだ。

いとも簡単に変えてしまう。

恋という名の魔法が。





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