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第1部

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第1回~22回
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#霊長類

【7】10分で振り返る人類700万年史

霊長類の中の人類 この連載は進化心理学(的な発想)を一つの柱としている。である以上、他の動物と比較するだけでなく、人間自体の進化史も一通りおさえておかなくてはならない。ということで今回は、600万年とも700万年とも言われる人類の進化史をなんとか4000字程度に押し込んで振り返ってみたい。 「そこまでさかのぼるか!?」という感じではあるが、一応、最初の最初、霊長類の登場から始めると以下の順序になる(後ろの数字は注の番号)。 ・約6500万年前:霊長類が登場〈1〉 650

【11】進化心理学で考える性差(3)男が惹かれる女とは(前編)

意外性ゼロの結論 第7回以降中断していた「進化心理学で考える性差」シリーズの(3)である。この間、人類の進化史や美的感覚の普遍性についての記事をはさんだ。変な流れに見えるかもしれないが、これには一応構成上の理由がある。  今回から数回にわたって、男性と女性それぞれの配偶者選好の違いについて考えていきたいのだが、その前段階としてヒトが進化の過程で発達させてきたとされる審美感覚についての話が必要だと思ったのだ。  さて、今回の副題を見てモテ論の話だと思って読みにきた女性がいると

【12】進化心理学で考える性差(4)男が惹かれる女とは(後編)

ヒトとチンパンジーの違い〔前回の続き〕  前回はチンパンジーのオスが中年のメスを好むのに対し、ヒトの男性には20代を中心とした若い女性を好む傾向があり、その理由は文化的な要因だけでは説明できないことを述べた。では、この傾向は何に由来しているのだろうか。  チンパンジーはヒトに最も近縁な霊長類ではあるものの、第7回で触れたとおり、人類との共通祖先から分岐したのは600~700万年も前のことである。当然、生理的条件や生態はヒトと違う部分も多い。  チンパンジーのメスがヒトの女性

【15】進化心理学で考える性差(7)女が惹かれる男とは ③

男はたいして役に立っていない?〔前回の続き〕   第8回でも述べたとおり、現代の狩猟採集社会を対象にした研究によると摂取カロリーに占める動物の肉の割合は30%程度でしかない。イヌイットをはじめとした北極圏に住む狩猟採集民は、オットセイやセイウチなどの肉を中心とした食生活を送っているが、それ以外の地域では主に女性たちが採集する植物性の食料が摂取カロリーの大半を占めている〈1〉〈2〉。  パラグアイのアチェ族では、男性はイノシシやシカといった大型哺乳類の狩りと森でのハチミツ集め

【16】進化心理学で考える性差(8)女が惹かれる男とは ④

女性は地位の高い男が好き?  あまりに長くなったこのシリーズも今回でいったん終了である。今回は女性が地位の高い男性を好む理由について考えてみたい。世の中では一般に、経営者や管理職、大企業の社員、医者や弁護士など社会的地位の高い職業に就いている男性はモテるとされている。実際、そうした肩書に魅力を感じる女性は多い(これもまた全ての女性があてはまるわけではないが)。  これはなぜだろうか。まず思いつくのが「地位の高い職業はたいてい収入も高いから」という説明である。しかし、例えば学校

【19】そろそろボノボの出番 ヒトの配偶形態 ③

ヒトとチンパンジーを比較することの意味 この連載では、ヒトの性的な在り方の起源を考えるにあたり、何度もチンパンジーとの比較を行ってきた。ここでいったん立ち止まりヒトとチンパンジーを比べることの意味について述べておきたい。  何回も触れているとおり、チンパンジーはヒトに最も近縁な動物である。しかし、それは彼らが「ヒトの一段階前の生き物」だとか「ヒトになりそこなった生き物」であることを意味しない。人類とチンパンジーが共通祖先(仮に「X(エックス)」と呼ぶことにしよう)から分岐し