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2019/10/05 映画「攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY」鑑賞

映画タイトル:「攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY」
鑑賞方法:Netflix
監督:神山健治
個人評価:★★★★★★★☆☆☆

攻殻機動隊S.A.C、S.A.C. 2nd gigを全て鑑賞した後に鑑賞。映画版「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年)」「イノセンス」も鑑賞済み。
少子高齢化、児童虐待などの現在日本が抱えている社会問題をテーマとして扱っている点は良いが、TVシリーズ版で扱われたSF的要素、哲学的要素が弱く、個人的にはやや物足りなかった。また、TVシリーズでのストーリーをあまり踏襲していないので、この作品から見始めることも可能だと思う。
攻殻機動隊らしくなかったが、アクション系アニメ好きにはお勧めできる一作。


↓以下はネタバレを含むレビュー

【鑑賞動機】
攻殻機動隊S.A.C、S.A.C. 2nd gigを見たので、その続編である本作を見てS.A.C.はコンプリートしたかったから。(SAC_2045が製作されるがそれは除いて)

【世界観】
攻殻機動隊S.A.C. 2nd gigの2年後の西暦2034年の新浜(東京近郊)が舞台。アニメーションの描写は、TVシリーズよりもより立体感の増したものとなっている。音楽は押井監督版の映画「攻殻機動隊」を彷彿させるような民族合唱っぽいBGMと、TVシリーズで使われた現代風のBGMが混在している。

【内容・ストーリー】
草薙素子が去った後の公安9課は、次々と連続して自殺者が現れる事件の真相に立ち向かう。そこで見えてきた、傀儡廻という超ウィザード級天才ハッカーとsolid stateという老人たちの居住区に迫ることになる。少子高齢化や児童虐待といった、現代にも存在するる社会問題を中心に扱っており、今までの攻殻機動隊とは異なり、SF的要素や哲学的要素は弱く、個人的には攻殻機動隊らしさが感じられなかった所に無念が残る。

【役者・キャラクター】
草薙、バトー、課長はTVシリーズ通りの持ち味を発揮して登場していた。今回の作品で注目したいのがトグサであり、少佐が去った後の公安9課のリーダー的存在になっている点、家族を大事にしながら事件にも勇敢に立ち向かう公私両立を目指す姿が印象的だった。今回の敵役は宗井とコシキで、最終的な事件の動機は「虐待される児童を助けたかった」「家族も子供も持たず老いて介護だけを要する貴腐老人が許せなかった」と共感しやすいが、今までの映画やTVシリーズからすると弱い気がする。

【作品の深み】
やはり、映像技術の発達によるアニメーション技術の向上と、日本の社会問題をテーマとして扱っている点。日本国民全員に響くような作品となっているため、攻殻機動隊シリーズで誰もが一番取っつきやすい作品かもしれない。(自分は他作品の方が好きだが)

【印象深いシーン】
個人的には、トグサの娘が行方不明になったという妻から、急いで自宅に戻るトグサと、サイトーがラジ・プートを射殺しようとするシーンが平行する場面。とてもスピード感のあるシーンで目が離せなかった。終盤のアームスーツと公安9課の戦闘シーンはもう飽きた感じで、あまり印象に残らなかった。

【総評・レビュー】
まずはS.A.Cシリーズ間で比較すると2nd gigが個人的には好み。その理由は、「個別の11人事件」というスタンドアローンな事件を描きながら、難民や核、安保といった社会問題と哲学的要素を上手く取り込んだ上で、さらに公安9課のキャラクターにも焦点を当てたストーリー(サイトーやパズ)を織り込んでいて良かった。また、S.A.C.と逆説的な結論に到達している点も興味深い。一方で今作はちょっと独立している感じかつ、内容が薄いように感じてしまった。
映画版同士を比較しても同じで、今作は95年版や「イノセンス」よりSF的要素・哲学的要素といった攻殻機動隊シリーズに欠かせないものが不足している気がした。一般ウケは一番するのだろうが、攻殻機動隊シリーズに精通する者からしたら満足度は高くないような気がする。

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