贋物

夜になれば、世界のすべての秩序が元通りになると思っていた。もろく崩れ去った造花の薔薇が夜の静けさを得て、本物の薔薇のように品性を取り戻してくれるものだと信じていた。

だが、現実は残酷で、あまりにも優しかった。

その優しさに甘えすぎた結果、輪郭に触れることのできない影のような私が誕生した。実体のない抽象的な存在、それが私なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?