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(日記)前方後円墳の秋


 先日ケモビールを作った時にダントツでよく分からないラベルを描いてしまった。この記事のサムネイルでもある巨大前方後円墳サツガイ=サンがそれだ。こんなのを描いたのには深いわけがあるが、深いわけの部分も正直我ながらよく分からない。でも因果はある。それについて書く。

(夢)2023年9月3日

 近所に新しくできる産業団地に法面工のでかい現場があり、珍しい工法だというので見に行く。神功皇后の遺跡があるかもしれないらしく、施工の前に業者と市担当者が試掘確認をしている。曲面で構成された有機的なフォルムの足場を桃色の淡い防音素材が覆い、崖じみた急勾配の法面はよく見えない。見学のため足場の階段を登っていると一段だけウエハースで施工されており、踏んだとたんウエハースが割れて法面にあった滝に落下する。

 落下した先は遺跡内の空洞らしかった。空気式ヘルメットを業者から借りていたおかげで無傷。よく見ると周囲にはすごい壁画。こりゃすばらしい古墳だと思う。

 歩いているとサツガイ=サンとすれ違う。誰かに肩を貸しているようだったが、よく見ればぽろぽろに風化した真っ黒な人の遺体らしきものを運んでいるだけだった。他人がいると思っていなかったらしく、サツガイ=サンはすれ違いざまぎょっとした様子で遺体をササッと寝かせ直し、何事もなかったようにその辺に座り込み、黒い粉末をはたいたあと無意味そうな手遊びを始める。鼻歌も歌い出す。おいでよどうぶつの森の関所で流れるBGMだった。

 自分がいつまでも訝しげに見ていたせいでサツガイ=サンは「違うんだよ」と口を尖らせる。まるきり怪しい。盗みではないかとより訝しむ。

「少しうたた寝しちゃって、気づいたら全員こうなってたんだ」

 ぽろぽろの遺体を差し示されて拍子抜けする。ここを見て考古学者を呼ぶやつはいるが警察を呼ぶやつはいない、ということをちっとも分かっていない。まずサツガイ=サンが古代のなにかしらの犯人でも自分は全く気にしない。

 単に盗掘を疑っただけなのに、むやみにじろじろ見てしまって申し訳なかったなと思った。サツガイ=サンにばつの悪い思いをさせるのはやけに嫌なものだとも感じる。あっけにとられたせいで、神功皇后と面識があるのか聞きそびれたまま帰宅。

2023年9月3日

 うっかり風呂で熟睡したせいで上記のサツガイ=サンに遭遇した。

 もともと自分は夢を見やすく、好きなキャラクター登場率も高い。必然的にサツガイ=サンは意識消失時にちょくちょく見かける。この日の場合はおそらく、現実世界で浸かっている浴槽と石棺のイメージが混ざってあんな夢になっていた。ちなみに神功皇后の遺跡はおそらく福岡県那珂川市(こないだ筑紫郡那珂川町から市制に進化して筑紫郡が失われた。発展自体は嬉しいが、個人的には郡の名前が破られていくのは悲しい)の裂田溝だった。本物は崖どころか平地だが、夢の設定ではかなりあの辺ということになっていた。

2023年9月4日

 naggyfish=サンのケモビール作り募集案内を目撃してすぐに飛びついた。とにかくラベルっぽいものを1枚描く必要に迫られたのでとにかくラベルについて考えていたが、必要に迫られると何も描けなくなりがちなせいで、順当に何も描けなくなった。このあと2週間くらいはふにゃふにゃの円や波線くらいしか描けなかった。

2023年9月23日

 近所の祭りに顔を出して豪勢な装束と牛と馬を見ていたらなんか描けそうな感じが復活。とはいえ極めてかんたんなサツガイ=サンくらいしか描けず、ほとんどてるてる坊主くらいの絵を量産する。

2023年9月30日

 かんたんなサツガイ=サンをうじゃうじゃ描いたデータが百舌鳥古墳群みたいであることに気がつく。せっかくなので百舌鳥古墳群の方向にする。

ケモビール記事にものせたこれ

 そもそも今更ながらサツガイ=サンは、本編でもナガリやらユミルやら死んだニンジャをつつき回しがちだ。ピラミッドを開ける(家主了承済)、陵墓に潜り込んで宝物にちょっかいかける(無断)なども含めると存分に墓暴き活動をエンジョイしている。まずもって本人がマガタマだったりもする。ちょっかいをかけた宝物もジュエル・ソード・ミラーと、明らかに現実世界の三種の神器だ。

 無尽蔵ともいわれるサツガイ=サンのチャームポイントの一つに「第四の壁をやんわり侵してくる」というのがあるが、忍法っぽすぎるニンポを使ったり地の文にぬるっと混ざったりするのと同一線上に「ヌンチャクメンポブレーサーではなく鏡剣勾玉を出してくる」というのがあって、この辺は個人的に以前から好きな部分でもある。サツガイ=サンは思考回路も世界線も『ニンジャスレイヤー』という箱の中で若干めりこみバグを起こしており、床に足をつけられないし本人も気にしていないのが良い。

 話が逸れた。夢とか偶然とかに指し示されてようやく初めて気づいたが、サツガイ=サンはなにかとヤマト王権草創期くらいの文化と親和性が高い。気づいてしまうとやたらと気になる。そこでいったんガッツリ古墳になっていただくことにした。そうしてサムネイルに至る。

 あとこの日はケモビール打ち合わせ会が行われた。ケモビールのラベル絵には何らかのケモビール要素が必要だが、サツガイ=サンはニンジャの好きなサケ記事で「ケモ・エナジー」なる謎の蛍光カクテルが好きと開示されているので、若干の縁がなくもない。ケモチャンは古墳上空に飛来してもらうことにして、無理矢理古墳をラベルプランに組み込む。

 あとついでに古墳の高まりを感じて、前から気になっていた近所の古墳を探ったところ、近く秋の特別公開があるらしい。夢日記をメモる時に背景の参考にしたくらいには気になっていたところがたまたまこのタイミングで公開とは知らなんだ。予定を入れた。

2023年10月14日

 福岡県嘉穂郡桂川町(もう嘉穂には桂川しか残っていない。ちょっと前の筑紫郡那珂川町状態)にある王塚古墳の特別公開に行った。王塚はものすごい豪勢な装飾古墳だが、発掘当時の保護意識とか色々が追いついておらず100年そこらでかなり色が劣化してしまった。今はしっかり保護がなされて、年に2回の特別公開でしか見られない。

 まず古墳の入場受付をしてからぷらつく。公開に合わせて古墳まつりが開催されていて、時間は楽しく潰せる。近くにある資料館で原寸大レプリカを見てしっかり予習し、なぜか無料配布されている猪粥を食う。あたたまってうまい。新米の特別販売に並んだり手羽唐に並んだりピザキッチンカーに並んだりして、古墳を見る前にだいぶ食い倒れる。

 古墳は入場受付したあと3時間くらいで見られた。今はごっつい観察室で入口を完全に密閉し、内部の温度湿度をコントロールすることでしっかりと劣化対策が行われている。崩れないように鉄骨の支保工が入ってもいる。特別公開時にも直には入れず、光での劣化も避けなければいけない。監察室の厚いガラス越しに暗い石室を見る。埋葬のための空間は今の人なら絶対に寝転べないほど狭く、当時の人の背が小さいのが分かった。黒馬赤馬の図案は目が慣れると見えた。

 そういえばサツガイ=サンはどこにも出現できるせいで、密室破りとしての性質も持っている。千数百年続いた密室が、破られたが故にここまで傷んでしまうのを見るとだいぶ罪深いなあと思う。サツガイ=サンはもたらす被害がでかいほど良い。

2023年10月21日

 ビールにラベルを貼った。詳しいことは別記事に書いた。

2023年10月27日

 作ったビールが無事ニンジャスレイヤー翻訳チームに届いた。サツガイ=サンの古墳ラベルだけ割れていたと聞いてついつい爆笑した。


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