No.130 『人物雑感』 わたしの会社の尊敬すべき人物
わたしが勤める金融機関の尊敬すべき人物を今回はご紹介したいと思います。もともと関西の血筋が色濃い企業なものですから(というのも語弊がありますが)、いわゆるシュッとしたエリート銀行員のみならず、「ナニワ金融道」を地で行くようないぶし銀の人たちも少なくありません。
社内向けに配信している内容を加筆修正したものなので、外部の方にとってはピンと来ないのであまり面白くないかもしれません。年末の余裕のある雰囲気のなか、「銀行にはこんな人もいるんだなあ」くらいの寛容かつ温かい気持ちで軽く読み進めていただければ幸いに思います。
「私的な企業分析」といいながら、これまでも個性豊かな企業経営者の横顔を好んで描いてきました。日本電産の永守会長、HOYAの鈴木CEO、エーザイの柳CFO・・・、いずれも一度会ったら忘れない強烈な引力を放つ人たちばかりです。
しかし、魅力的な人物は会社の外ばかりにいるとはもちろん限りません。オフィスをぐるりと見渡せば、みなさんの近くにも「愛すべきキャラクター」がいるのではないでしょうか。わたしの場合は現在の部署(アナリストの知見を活用して企業にM&Aなどの提案をする部署。一般的にはリサーチ&コンサルティング部などと呼ばれます)に8年近くもおりますので、すでに異動されたり転職されたりした人も含めますと、心惹かれる顔ぶれというのは十指に余ると言っていいように思われます。
その中でもわたしの心を捉えて離さないのが、「太陽にほえろ!」か「仁義なき戦い」か、正邪が共存する鉄拳の男「N」 であります。このNさんにまつわるエピソードは枚挙にいとまがないのですが、法律的に問題のない範囲でいくつか列挙させていただきたいと思います。
① 現在の部署へNさんが異動してきたとき、挨拶で使った四字熟語が「粉骨砕身」。本来は自己犠牲の精神を表す美しい言葉のはずが、この人の口から放たれるとなぜか血生臭く聞こえた。「骨を粉にして身を砕く」対象は果たして自分なのだろうか。戦慄が走った。
② ノートにメモを取るときは、いつも赤いサインペンを使う。重要な箇所だけではない。すべての文字が赤く描かれる。心の中で「デスノート」と思わずつぶやく。そして祈る。どうかわたしの名前が書き加えられないようにと。
③ 数年前からわたしはパーマをかけるようになった。髪型の変化を敏感に察知したNさんが遠い目をして放った一言が忘れられない。「そういえば、おれは昔パンチパーマにしたことがあったけなあ」。何かのケジメなのか、頭を五厘に刈ってきたときも度肝を抜かれたが、Nさんとパンチパーマはあまりにベストマッチすぎる。
④ 老化によって身体が崩れることを恐れて、わたしは8年前から加圧トレーニングを続けている。あるときNさんが言ってきた。「おれも筋トレしてるで。拳立て伏せな。腕立て伏せじゃないで」。おそらく、筋トレする目的がわたしとは本質的に違うのだろう。何かこう、もっと実戦的な気がする。
⑤ トイレで用を足していると、他の便器が空いているにもかかわらず、わたしの隣で必ずチャックを下ろす。Nさんに「PHYSICAL DISTANCE」は通用しない。無言の圧力に耐え切れず話しかけようとすると、手洗いもそこそこにトットと出て行ってしまう。やはりデキる男はすべてが速い。
企業経営者の魅力を描く筆致とはかなり異なりますが、本当にありがたい縁をいただいたなと日々感謝しております・・・
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
無名の文章を読んでいただきありがとうございます。面白いと感じてサポートいただけたらとても幸いです。書き続ける糧にもなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。