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短歌

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短歌の連作をまとめています。
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#日記

短歌「Good-bye (Summer) Holidays」

日めくりの麦茶に沈む夏休み あぼーんと鳴くギター片手に 屑鉄を拾い集めるおじさんがたまにささやく不吉な予言 音楽は心の阿片と笑いあうシーシャで夜に伸ばす手のひら そっけなく「おはよう」と言う姉ちゃんの秘密ノートに書かれた名前 ファズ踏んで入道雲が見る海を伝えるそれが僕の宿題 冷房を浴びる喫茶で海になる日記のきみはまだ笑ってて 即興のブレイクビーツの爆ぜる音エモい花火のエモい消え方

短歌「東京2021」

目白から乗った女がアイライン引いて始まる一日のこと 天国はね、蓮が浮かんでるんだって 消えたあの子と歩く美術館 愛なんて言わないでいてTOKYOの音楽に朝はまだ来ないから 若者が一心不乱に笑ってる池袋にある裏の入口 穴の空いた羽根をどうにか引き摺ってきみに会いにいく東京駅

短歌「さよならグッドモーニング」(18首)

g 00 d M oRn I N g 斜陽シテ目がまわり超高速度で落下し定点 オーディオの音を抜き取り味見して噎せた入道雲の終わりに 路の傍に落ちてる花を噛み千切り匂いを嗅いだ探索犬B 朝靄の雑踏の隙間駆け抜ける閃光一筋フラッシュバック 蜘蛛の巣が地球をさらいに来るらしい試験は忘れていい雰囲気だ 貪欲にあの子の窓を這う蔦は血管らしく取り払えない ざらざらと小川に流るる太陽をつまむと白く溶け落ちていく 足元のレールの終わりが見えなくて線路と呼ぶのをやめ

短歌「救済論的滑り台」(29首)

「髪切って、侵略するの、仕方なく。」仕方ないことだ、春なんだから。 足りないと繰り返すだけの機械でも浄土を待ってるノイズ文学 「席に着け、これから描いてもらうのはどちらからでも消費できる絵」 オフィスでは郵便の人もドランカー「宛先ばっかり書いてあるのよ」 紙束をマッハで数える銀行員、真実はひとつセカイ☆征服 「宇宙には何でもあるよ」「amazonも?」「飛田新地も東京タワーも」 教会の壁の張り紙「気をつけよ、隣人の都市はそっとされたし」 揺れ出した電車の中吊り広

短歌「世界が文字にならないうちに」

また朝だコインを投げたらうら/おもて 夜は深紅のカーテンに散る 換気する音がうるさい めちゃくちゃに海の氷は掻き混ぜられて 東京は3の腹から産まれ出た 012は足掻けども0 背表紙を撫でれば崖を越える日が孵化する いつかの自分が飛んだ 美しき君の裸を見せてくれ 世界が文字にならないうちに 煮えたぎるブルーベリーに溶ける日の少年は重い銃を手にした 灰はただ天に召される父たちよ静かな街を愛した者よ カフェインを摂るようにしてあなたからやさしさ奪う僕の指つき アルバ

短歌『カラフルという色』(21首)

*こちらは『POP & END』に収録された一篇です。『POP & END』のご購入は https://yoruiroyozora.booth.pm/items/665168 から 『カラフルという色』 法律が白くて飽きる羽根外すドラッグストアに履歴書送る 痩せ煙草喫むキッチンで革命の卵焼かれる匂いは朝だ

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0-2013.6短歌

『部屋』 1.水槽に消えゆく霞に祈りつつ乾いた花びら千切っては口に 2.セーターの毛玉を食べた心地して猫のとなりにあった空咳 3.いなくなる瞬間気圧を下げるなら気象予報士のままでいたい 4.眠れずに吐いた言葉が合図して僕を海から引き剥がしてく 5.夕暮れに傘差してみるも青じみて浴槽に羽根が落ちていたんです 6.あのゆめの覗き込むのを壊そうと屋根裏に捨てたバットを探す 7.交わす舌灰の味しかないけれどふたつの身体に音素が落ちる 8.白日に消されてくのは焦燥でそれ