オタク文化の真理が共有できてないと感じた話

私の身内にサッカーオタクがいる。一人で日本全国津々浦々、アウェイ参戦したりインスタにはサッカー関連の投稿が並んだりと。サッカーと一蓮托生を決め込んだ女。早い話が実の姉である。数年前、突然ズブズブにハマりだした姉の様子を「随分楽しそうですね」と遠目に眺めていた。

ある日、チームの「ファンミーティング」なるものに誘われた。これまで理由をつけては誘いを断っていてため適度な罪悪感もあった。姉孝行をすべく行くこととなった。「観戦」をすっ飛ばして「ファンミーティング」なんてものに足を突っ込むこと自体、もしかしたらだいぶアレなのかもしれないとは思いつつ、行くことと相成ったのだ。

とはいえ、私自身サッカー観戦初心者というわけではなく、身内にJリーグ関係者がいたためスタジアムには何度も足を運んだ経験はある。ので、ガチのサッカーファンが、どういう身なりで、どういったテンションで挑むかくらいは心得ていた。

心得ていた。

待ち合わせ時刻。チームカラーをカラフルにまとったサッカーファンをかき分けるように笑顔で走ってくる一人の人物。

なんかくる。なんかきた。

姉だ。

ドン・小西も恐れ慄く発光体。嘘だろ。あんたEarth & Music Ecologyとかリンネルとか好きやん。なにその深海魚みたいな発光体、一度も見たことない。うわ、しかもなんかめっちゃ笑顔で走ってくる。こわ。

首もとにはチームマスコットのクソでかい被りもの。え、なにそれ呪霊? こわ。背後へ回ると背負っていたリュックには監督やマスコットのバッジがびっちり並んでいる。もうびっちりである。リュックにまでバッジやぬいぐるみを背負わせるなんて、まさにリュックのマトリョーシカ状態である。

発光体の群衆の中、全身ブラックで統一していた私は確かに浮いていたかもしれない。ただ、己のポジショニングを持て余していたので、とりあえず今回は黒子ポジでいきますねー……と心に決めたのだ。決めた矢先、「これ被ってよ」とマスコットの被り物を差し出す姉。殺意 Now on sale。

被った。写真を撮られた。なにこのプレイ。

といいつつも、何かにハマった末に人間が起こす行動みたいなものへの理解はあるつもりだ。またそんなにハマれるものに出会えてよかったね、とも内心思った。

「私も漫画とかアニメのジャンルで、ぬいとかバッジを山盛りつけてる人たくさん見たよ。最初はよくわからんかったけど、推しに囲まれたい、という心理はわかってきた気がする」。

すると「ええ〜、それと一緒にしないで欲しい(笑)」と返してきた。

………は(宇宙猫

ハマる対象がサッカーでもアニメでも行動原理は同じはずなのだが、姉に言わせるとそことは違うらしいのだ。どうやら"ジャンル"というものに優劣があるらしい。

「こちらのジャンルにハマれ」とは言わないが、どっぷりハマるジャンルを体験しているにも関わらず、他方のジャンルを貶めるような考え方ができてしまうことに、正直ガッカリした。

「サッカーに限らず、自分、他にもムーミンのぬいとかぶら下げとるやん。あれと一緒やで」と諭すも、やはり「それとこれとは別」らしい。お手上げである。

大したオチもなく申し訳ないが、ここ数年引っかかっていたことを書きたくなったので書きなぐってみた。

姉の名誉のために、反感を買ってしまいそうな姉の言動ではあったが、この思考は世の人間の心理の縮図である気もする。そして、私もわかった気になって自分の知らないジャンルを貶めるようなことがないように気をつけようと思った。

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