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岡村隆史のこと

めちゃイケの、岡村隆史のオファーシリーズが大好きだった。

オファーシリーズとは、劇団四季やEXILE、モーニング娘。や市川海老蔵の歌舞伎などあらゆる舞台に岡村隆史が挑戦する企画だ。今でも内容をはっきり思い出せるぐらい、私はこの企画の時はテレビに張り付いて見ていた。

この番組で、岡村隆史はそれぞれのプロフェッショナル達のレベルまで自分を高めていく姿を見せる。真面目に一生懸命に、しかし笑いもとる。最後にはいつも完璧な舞台を見せる。

「一生懸命さ」は時に痛々しく見えたり、笑いではなくお涙頂戴になってしまったりするが、オファーシリーズはこの辺りのバランスがとても良く本当に面白くて大好きだった。

以前カジサックのYouTubeに岡村隆史が対談相手として出ていた際、「自分にはお笑いのセンスが無いから一生懸命な姿を見せるしかない」と言っていた。

もうお笑い芸人としてトップの位置にいるのに謙虚で全然偉そうじゃなくて、好きだなあと思った。だからラジオでの発言を知って、それ以来岡村隆史のことをずっとぼんやり考えている。

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会社員だったころ、会社の飲み会の帰り道はいつも死にたくなった。

人の表情や言葉を深読みしがちな私は、その場の空気に過剰に適応しようとするくせがある。飲み会で興味のない話に大げさに笑ったり、全然好きじゃない下ネタを言ったあと、帰り道に思い出してはしょっちゅう死にたくなった。でもその場では、思ってもいないことを言ってしまう。

岡村隆史は、心の病で芸能活動を休んでいたそうだ。その理由を私は何も知らない。
だけど本当に勝手に想像するなら、岡村隆史もまた過剰に適応する人だったのではないか、と思う。求められているものを感じ取って、見ている人に届ける「サービスの人」だったんじゃないか。

深夜ラジオとは想像だけど、何となく男性パーソナリティが多くて、リスナーも男性が多くて、深い時間帯だから下ネタも自由に話せる空気で、女性はその場にいることを想定されてない感じ、なのかもしれない。

岡村隆史の「可愛い子が風俗嬢に」発言は許せるものではない。彼の倫理観には大いに問題があったと思う。

一方で、あの発言は本当に岡村隆史だけの問題か、とも思う。
番組を作るスタッフも、リスナーも一緒に、ちょっと下品な話題を求める空気があったのではないか、と思わずにはいられない。だからと言って岡村隆史の発言は電波に乗せて言うべきではないけれど。

矢部浩之の公開説教を聞いた。こうやって言ってくれる人がいて良かったと思った。岡村隆史がちゃんと今の価値観にアップデートされてほしい。

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唐突だが、前の会社で飲み会の度にいつも同じ話をする60代の男性がいた。
「自分は大学の卒論を提出前日に1日で書いた」という話だ。

男性は毎回初めて話すようにしゃべり、私は同じ話を4回は聞いた。
他の社員もわかっていて、でも誰も「その話は聞きました」とは言わなかった。

私は内心その男性のことを可哀想だなと思っていた。
同時に、自分がいつか若い人に過去の自慢話を何度も繰り返してしまったら、そしてそれを誰も注意してくれなくなったらどうしよう、という恐怖心が募った。

これほど「老い」を感じさせることはないからだ。

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両親がたまに、前に聞いたことがある話をする。その度に私はいつも少しイライラしながら「前も聞いたよ」と言う。優しくうんうんと聞いてあげることは、どうしてもできない。

私はまだ、両親の「老い」を受け入れられないのかもしれない。

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