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「次期青森県基本計画」(原案)に対する日本共産党青森県議団の意見

知事が提案している「次期青森県基本計画」(原案)に対して、各会派からの意見提出が求められていました。今日10月6日、日本共産党青森県議団として提出しました。
以下、見出しと注釈を加えて紹介します。
なお、この計画はパブリックコメント中です。全文もそちらに掲載されています。ぜひご意見をお寄せいただきますよう、お願いします。

「次期青森県基本計画」(原案)に対する意見
2023年10月6日 日本共産党青森県議団
  
■県行政が、日本国憲法――とりわけ「地方自治の本旨」(第92条)にたつものだということを、「基本計画策定の目的」に(原案1ページ)
「地方自治の本旨」(日本国憲法第92条)にたった行政運営を自覚的に行うためにも、基本計画策定の目的として、「日本国憲法にもとづく」ことを書き込むべきと考える。
 
■全政策を点検する視点として、ジェンダー平等と「若者の未来」の位置づけを(原案2ページ)
基本理念のなかに「政策点検の視点」を新設し、次の2つを位置付けることを提案する。
一つはジェンダー平等。県行政の現状が、ジェンダーバイアスによってゆがめられていないかどうか、また政策の一つひとつがジェンダー平等の前進に資するものなのかどうか、常に点検する視点をすえる必要がある。
もう一つは若者視点。ウェールズの未来世代法(※)をイメージし、県のあらゆる意思決定を未来世代の利益が十分に配慮されているかどうかで点検すべきである。
この2つの視点を「基本理念」にすえることで、ジェンダー平等と若者の未来を県の基本姿勢として明確にできると考える。

※イギリスのウェールズで制定されている法律。国や行政機関が何を決めるときも、「未来世代のことを考えて決めたかどうか」をチェックすることを義務付けるもの(HP「私たちの手で作る『未来世代法』日本版」https://futuregenerations.jp/から)

■基本理念(青森大変革=AX)の基盤として、「対話」を位置付けたことを歓迎(原案3ページ)
基本理念をめざす基盤の一つ(※)に、「対話」をすえ、「県民の声にしっかりと耳を傾ける」「県民の主体的な行動や県と県民との協働が欠かせない」などとしたことは評価したい。
ただ計画原案全文のなかに「対話」の文字は3ヶ所しか登場していない。「変革への道標」というなら、基本計画全体に「対話」を重視した記述があってしかるべきと考える。

※「基本計画」(原案)では、基本理念(AX)の基盤として、①県民一人ひとりの挑戦が起点であり、②その道標は、県と県民が力をあわせる「対話」であり、③それを歩む「翼」はDXとしている。
 
■DXが問題解決の万能薬ではないことに配慮すべき(原案3ページ)
デジタル化や「デジタル技術の最大限の活用」が課題解決の手段として有効な場合もあるが、そうならない場合もある。個人情報の保護など懸念すべき課題もある。デジタル化とDXを区別する必要もある。DXだけでは解決しない課題もあることへの配慮に言及すべきと考える。
 
■賃上げを正面にすえ、賃金水準、新規学卒者の給与額水準、男女間の賃金格差是正の目標設定を(原案24ページ)
所得向上のためには賃金の引き上げが不可欠である。秋田県は基本計画に、男女間の格差を意識した賃金水準の向上について中期的観点から目標値を設定し、さらに社会減対策という位置づけで新規学卒者の給与額水準の目標ももっている。本県でも、賃金水準、新規学卒者の給与額水準の引き上げ目標をもち、加えて、男女間の賃金格差の是正をすえるべきである。
 
■“生産費の保障”を農業政策の基本に(原案25ページ)
農家から寄せられる声の中心は、「生産費を下回る価格になっていることが一番の課題」ということ。基本計画ではここに切り込み、農産物の価格保障と所得補償を位置付けるべき。
 
■「子どもの権利条約」を子ども政策の基本理念に(原案34ページ)
子どもにかかわるあらゆる政策の基本理念・指針として、子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)をすえるべき。
なお、「子ども」の表記について、こども家庭庁が昨年9月、「特別な場合をのぞき『こども』を用いる」ようにもとめている。この指摘は合理的なものであり、基本計画においても採用すべきと考える。
 
■教育改革の土台に、「教職員の抜本増」をすえること(原案35ページ)
「教育改革」の名のもとで、学校現場に新たな課題が押し付けられ、結果として多忙化が加速したというのがこの間の経緯。「教職員が子どもと向き合う時間を十分に確保する」ことに本気で取り組む気があるなら、教職員の抜本増――とりわけ定数増を基本計画にすえるべきと考える。
 
■再生可能エネルギーの普及に、自然・地域との共生の原則をすえることを歓迎し、適切な規制をかけつつ再エネの促進をはかる「本県ならではの地産地消モデル」に期待(原案41ページ)
脱炭素にむけたとりくみを加速化させるために、自然・地域との共生の原則をすえたことを歓迎したい(※)。「植民地型」「環境破壊型」となっている乱開発型の再生可能エネルギーに適切な規制をかけながら地産地消の再生可能エネルギーの普及をはかるという本県ならではの21世紀型再エネ促進モデルを構築してほしい。
同時に、この部分のなかに、脱炭素の目標を明記すべき。その際、三村前知事が行った「2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ」とした宣言の目標年次を前倒しし、より積極的な目標をもつことを求める。

※宮下知事が9月12日に策定した「自然環境と再生可能エネルギーとの共生構想」では、県内の電力需要相当量の全てを再生可能エネルギーによる発電で賄うことが可能な規模の設備容量の導入をめざす、としたうえで、その前提として、①自然環境との共生、②県・地元自治体・地域関係者の合意、③地域経済等への貢献を置いた。カーボンニュートラルという人類史的課題を地域の資源を破壊させない形ですすめる方向性が示されたことは歓迎したい(https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/energy/enerugi/kyouseikousou.html)。
 
■原発・核燃は撤退戦略をすえたうえで、安全対策の位置づけを(原案45ページ)
原子力施設の安全確保について、県独自で検証する機能をもつべきと考える。
また原子力の避難計画については、計画策定・検証・訓練のあらゆる段階で住民参加を保障することを「基本計画」として書き込むべきである。
さらに、高レベル放射性廃棄物の最終処分地にしない決意を基本計画に書き込む必要があると考える。
なお、原子力関連の政策が「環境」に位置づけられていることはそぐわない(※)。そもそも、事故による未曽有の危機をひろげた技術に依拠し、廃棄物処理など先々の見通しもなく、多額の費用をかけて事業を続け、個々の事業がつまずくことで全体に影響が及ぶことを固有の性格としている原発・核燃政策を推進することを前提としていることに問題がある。同時に、いったん関連施設を受け入れた以上、原発・核燃政策の転換があったとしても、廃炉などのために必要な一定の共存期間が続くことを考慮する必要がある。基本計画で原子力施設に言及するのであれば、撤退戦略を正面にすえたうえで「持続可能な地域社会の形成」の部分に編入することを提案する。

※原案では、原子力政策が「政策テーマ4 環境」に含まれている。これは政府の「GXに向けた基本方針」に「原子力の活用」が位置付けられたことが反映している。
 
■「持続可能な観光」の推進を(原案48ページ)
「持続可能な観光」(※)を位置付けて推進をはかるべきと考える。

※オーバーツーリズムなど観光公害への対応が新たな課題となっているなか、国連機関からも「持続可能な観光」というあり方が提起されている。日本では観光庁が「『住んでよし、訪れてよし』の観光地域づくりを実現するためには、観光客と地域住民双方に配慮し、多面的かつ客観的なデータ計測と中長期的な計画に基づく総合的な観光地マネジメントを行うことが重要」とし、「日本版持続可能な観光ガイドライン」を作成している。
 
■交通政策として、「在来線の維持・存続の明記」と「高校生の通学費補助」を(原案52・53ページ)
在来線の維持・存続を明記すべき。
「どんな環境であっても…質の高い教育」を受けるためには、デジタル技術の活用だけでなく、それを可能とするあらゆる手段が必要と考える(※)。その一つとして、高校生の通学費補助を書き込むこと(ただし記述場所は、「政策テーマ3 子ども~子どもの健やかな成長~」の適切な部分でもいい)。

※原案で「政策テーマ3 子ども」のなかに、2040年のめざすべき姿として、「全ての子どもは、どのような環境にあっても、デジタル技術も活用しながら、質の高い教育を受けることができ…」と書かれていることを念頭に置いている。
 
■男女共同参画の推進を(原案57ページ)
男女共同参画の推進を位置付けるべき(※)。

※ここで指摘したのは、「女性の人財育成とエンパワーメント」のなかに位置づけるべき、ということ。原案では「男女共同参画の推進」が「家庭生活における男女共同参画の推進」だけにしか書かれていない。
 
■ 「地域別取組方針」を示すなら、県民局のあり方とあわせて提起を(原案65ページ)
この部分は現在の6県民局に対応する形で記述されているが、その一方で知事は、県民局のあり方の見直しに言及している。ここに齟齬が生じる可能性がある。県民局のあり方と一体に地域別取組方針を定めるべきと考える。
 
■SDGsのすべてのゴールを見据えた計画にすべき(原案104ページ)
文章上は「17のゴールの達成に向けて…行動することが重要」としているにもかかわらず、基本計画とSDGsの関連を8つの優先課題との関連でしか記していない。17のゴール全体と基本計画との関連を記述すべき。

■米軍三沢基地との関係について
米軍三沢基地の存在は、県民の安全にとって大きな課題となっているはずなのに、原案には記述が欠けている。適切な場所に、「これ以上の基地機能の強化は認められない」(※)ことを書くことが、最低限必要と考える。

※三村前知事の米軍三沢基地に対する基本姿勢のこと。

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