組体操を披露して、苦笑い
小学6年生の頃、最終学年の運動会では、組体操を披露した。うちの学校の恒例だった。
6年生しかできないレベルの高い演技、そして、流行りのかっこいい曲に合わせて扇やらピラミッドやら矢倉をする。
先輩たちは、小学校最後の運動会をカッコよく終えていた。最終学年のお兄さんお姉さんたちは、毎年めちゃくちゃカッコよかった。
我々もカッコよく締めたい。我々の番がようやく来たかと、みんなそれなりに気合いが入っていた。
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しかし、そう思い通りにいかないのが人生。
担任の先生が考えた組体操のプログラムは、猛烈にひどかった。ほとんど一人技と二人技で完結。最後の方に三人技を少々。クライマックスは、ピラミッドも2段と中央に3段が一つだけ。もちろん矢倉はなし。
何より選曲がダサかった。
ラピュタのメインテーマ「君をのせて」だった。
ルルルールルールルー🎶ってやつ。
めっちゃ暗い。
地球は回る〜、き〜み〜をのせて〜🎶ってやつ。
めっちゃ暗い。
父さんが残したあつい想いと母さんがくれたあの眼差しを背負いながら、重苦しい雰囲気で2段ピラミッドたくさん、中央に3段ピラミッドを添えて。
で、フィニッシュ。
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異議を唱えたのは、学年のイケてる女子5人組。こんなダサい組体操で最後の運動会を終えたくないと立ち上がった。
ダサいを嫌うイケてる女子たちは、自分たちでプログラムの変更を申し出たのだ。自分たちで考案した組体操のプログラムを担任の先生に提出した。
学年のイケてる女子が休み時間に黙々と練習していた。曲も流行りのホワイトベリーの「夏祭り」に変更。いい感じに尺も合わせて、ガチで頑張っていた。
この違和感わかってくれるだろうか。
基本、不良であるイケてる女子が、ノートを開いて真剣にプログラムを考え、意見を出し合い、自分たちで組体操を作っている。
ダサい組体操回避のために全力である。
そして、ついに完成。とある昼休み、昼ご飯終わりに教室の机をのけて、イケてる女子5人組が、担任先生に披露した。
ちなみに担任の先生は、ハゲ散らかしてて、小太りで、いつも少し汗ばんでて、喋りは面白くなく、整っていないチリチリの髭をお持ちで、全校生徒からの人気は皆無で、綺麗な女の子にベタベタ触っている、時代が時代なら訴えられててもおかしくない、ていうか、多分アウトな50代。順番的に次、教頭、じっとしてたらその次、校長的なおじさん先生である。
ぶっちゃけただの悪口だが、悪口でしか形容できない気持ち悪さがあるタイプの先生であった。
そんな先生の前でイケてる女子5人組が頑張って作ったプログラムを披露してた。
先生は、真剣に見るはずもなく、ニヤニヤしていた。まぁ、気持ち悪かった。
けど、ま、そうなるわな。的な空気の中、イケてる女子が頑張って披露してた。あんなにポップなホワイトベリーが悲しく響いていた。
ボクはというと、違和感しかない様子を見ながら「これ何の時間?」と思ってた。「誰の何の罰ゲームやねん」と思っていた。もちろん口には出していない。
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イケてる女子のプログラムは、全く採用されなかった。というわけで、連日のダサい組体操の練習をした。連日のルルルールルールルー🎶な日々を送った。
練習中の雰囲気は暗い。
そりゃそうだ。
ルルルールルールルー🎶なんだから。
活気のかけらもない。
そりゃそうだ。
ルルルールルールルー🎶なんだから。
諦めモードで重苦しい空気の中、組体操してた。
ルルルールルールルー🎶なんだから仕方なし。
そして、当日。
こんなにも活気のない組体操があっただろうか。ってな具合の暗い暗い組体操を披露した。全体的に暗い雰囲気の組体操。
小学校最後の運動会は、シュールな思い出だけが残った。
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家に帰った後、おかんに言われた。
想定内の感想に苦笑いでしか返せなかった。
・こぼれ話
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