どうせなら、愛されるハゲになりたい。
定期的にみる夢がある。
現状の私にとっては、どちらかというと悪夢に分類される夢だ。
***
気がつくと私は、家の洗面所にいる。
朝、むにゃむにゃと起床し、洗面所の鏡の前で寝癖を直そうと髪の毛に100均の霧吹きでシュッシュする。いつもと変わらない光景だ。
そのときに違和感に気づく。
いつもより髪の毛が薄いのだ。
明らかに昨日の自分より薄い。
夢の中の私はうろたえる。
「え、え、え?なんで?」とうろたえる。
***
悪夢の後、汗ダクで起床する。
ひとまず洗面所へ向かう。
鏡を見て、自分の髪の毛の存在を確認する。
夢だと気づいて、安堵する。
ほっぺたをムニっとつねるとしっかり痛い。
ああ、良かった。ここは現実だ。
さっきまでの薄毛の映像は、夢だ。
良かった、夢確定。
鏡には、依然として、寝癖ホヤホヤの髪の毛を両手でガッツリ掴んでる私自身が写っている。焦りのあとに一気に安堵する36歳のブサイクなおじさんである。
***
最近、同世代にもハゲ予備軍が出没してきた。
彼らは口を揃えていう。
「まだ大丈夫」
「ハゲは予防医学だ」
「植毛考えてんねん」と。
私自身、遺伝的にいつハゲ出してもおかしくない。親父もお爺ちゃんもご立派におハゲになられている。
ふと、今までの自分の人生を振り返ってみる。年上のハゲをみては、笑い、イジりたおしてきた自分である。
漫才師ギャロップのつかみも好きだし、新喜劇の島田一之介の一連のくだりも大好きだ。何度見ても笑ってしまう。
そんな私だ。
いずれハゲの神様から天罰が下るだろう。
人を嘲笑った過去は、そのうち返ってくる。
*
ここにハゲへの心得を書き記しておく。
何事も心の持ちようだ。
変化に対する心の準備が大切だ。
何もハゲになることが怖いのではない。
ハゲになった自分を愛せるか。
たとえハゲても、自分らしくいれるかどうか。
ハゲてるのに、心はフサフサなんておかしい。
すんなり受け入れて、ハゲマインドを手に入れたいのだ。
外見と中身はある程度リンクする。筋肉ムキムキの人は、筋肉ムキムキの性格になるし、髭もじゃの人は、髭もじゃの性格になる。
ハゲたときは、性格のターニングポイントになりかねない。せっかくハゲたのだから、それなりにポップな性格になりたいものだ。
眉間に皺寄せたハゲにはなりたくない。
笑顔の似合うツルピカエクボハゲになりたい。
どうせハゲるなら、愛されるハゲになりたいんだ。
みんなからいじられるハゲになりたい。
自虐的にハゲを使っても、フサフサの人たちから気を遣われないハゲになりたい。とはいえ、雑なイジリには、バシッと対応できるハゲになりたい。ハゲの矜持を持てるハゲになりたい。
*
おそらく、急にハゲが来ることはおそらくない。
ハゲは徐々にくる。
どこからハゲるかは分からない。
徐々にハゲてきたときに、周りに根回しするのも大切だ。中途半端にハゲてるときに、どのタイミングで自分で自分のハゲを認めるか。
その線引きも難しそうだ。
しかし、どこかでハゲの一線をまたがねばならない。
ハゲの一歩目をピカッと晴れやかに踏み出したい。
結局何が言いたいか。
どうせハゲるなら、愛されるハゲになりたい。
それだけである。
・こぼれ話
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