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「Mリーグの夢 天鳳の現」

(※12月26日に追記①②③。下の局面での、手牌進行・手牌構成・心理に対する読み、予想される展開、採用すべき戦略、についての解説を大幅に捕捉)

まだまだ麻雀界では言動やペンの自由は許されていない。確かに私達位の立場で若手を批判すれば暴力になってしまうし、ベテランを批判すれば、そのプロを貶め、私達は生意気とみられるので、誰も得をしない。
「批判されるのもプロの仕事」
という私の考えは、まだ早すぎるようだ。


先ごろ話題になった萩原氏のInstagramに対して、私がまず感じたことは、観戦記者としてのゆうせー氏の観察眼の鋭さだった。

あのオーラスの、西残し初打2sと、中一枚目スルーは、リアルタイムで観戦してはいたのだが、もはや萩原氏の麻雀を論理的に汲み取る事を放棄していた私は、嘲笑するでもなく、ただただ無機質な映像としてぼんやり眺めていた。

一方、これもTLですぐさま非難轟々となった4m放銃に関しては、評価を保留していた。むしろTwitterでフォローしている多くの天鳳民の大騒ぎが浅はかに覚えていた。

麻雀には対局者でしか分かり難い情報が無数にある。

理牌、仕草、目線、息遣い、打牌速度、間、打牌モーション、リーチ宣言の動作などなど、牌の組み合わせ・確率から成る純粋な数学的世界とは異なる要素も、常にプレイヤーは感じながら判断している。そういった面はMリーガーだと園田氏が長けているだろうか。もしかしたら和久津氏もそうかも。(連盟A1ブランド)

天鳳で言えば、ポンラグ・チーラグは勿論だが、あまりTLで紹介されないものとしては「リーチ宣言の間」と「副露の間」がある。どちらも「牌を選択できる」という情報が露わになっている。古のプレイヤーの中には、手動理牌や右クリリーチを用いて、その傷を減らそうと努めていた方もいた。最近はまず聞かない。

戻って、萩原氏がどういった認識で打4mとされたかは我々には分からない。Instagramで説明されていることが全てではない。対局時の皮膚感覚とでも呼べるものは、対局直後の対局者ですら、言語化による正確な再現は至難であろう。いわんや観戦者においてをや。

また各チーム・各プレイヤーは勿論お互いにお互いを研究し合っているわけだが、その研究を全て公に示す馬鹿はいない。プロスポーツの世界と同じである。

何も背負うものがない気楽な我々一般のファンは必ず、以上挙げたように、生のプレイヤーと比較しての、「情報の欠落」に留意して観戦・批評しなければならない。


ただし、、では「中スルーは四暗刻狙いだった」という萩原氏の告白についてはどうか。配牌時なので言わずもがな、アナログ的情報に極めて乏しい、ほぼ純粋な数学的世界である。

私には、論評の必要が無いほどナンセンスな選択に映っていた。近年の現代アートと称されるものを目にする時と同じく、ただの記号の散乱に無教養な屁理屈を付けて、何か斬新な意義あるものに見せかけ、時間と金の余ったミーハーを驚かし騙すような、そんな安っぽさに軽い不快感すら過っていた。またいつもの役牌1枚目スルーですかと。

対局終了後、upされた観戦記のライターがゆうせー氏だったのでチェックすることにした。(他にZERO氏とmasasio氏のも大体目を通している。天鳳民だからというのでは決して無く、ちょっと他の方は質がかなりよろしくないのが多くて…)

そこで感心というか感銘すら受けたのである。

この道で生きているプロは違うなと。萩原氏の思考を、読み解き、寄り添い、抑制的・客観的に批判し、最後には希望を抱かせる論調に、天鳳十段辣腕塾講師は伊達じゃないな、と嫌みではなく本当に素直に思った。

率直に言って、私がここまで対局者に寛容になれることは永遠に無いだろうなとも思った。仮に私がライターなら、この萩原氏の選択については、さらっと流し、お茶を濁し、代わりに他のプレイヤーに関する記述で埋めるだろう。(あの魚谷プロの白放銃に関する記事も、内容的には必ずしも評価できなかったのだが、プロの節度が見て取れて、とても真似できないなと思った)

また、雷電のファンの方々による萩原氏への激烈な擁護・支持も拝見した。私のTLには皆無だったが。

私が今後Mリーグに対する批判的論評を行う際は極力、無料公開にすべからずと悟った。昔から今に至るまで、技術的批評と人格的批評が、ごっちゃにされてしまうのが麻雀業界である。


このnoteの冒頭の文章は、勿論まだMリーグ開催など誰も思い浮かべられるわけはなかった2006年に発行の、『多井隆晴の最速最強麻雀』からの引用であった。今、読み返すと、麻雀界の現状への不安・不満、未来へのそこはかとない期待、他のプレイヤーから卓抜した多井プロの先見的な技術、等々が文面からひしひしと伝わってくる好著だと分かる。

ここで、多井プロの今季Mリーグでの、云わば会心の一打について紹介してみたい。Twitterでも少し触れたが、氏の麻雀観・思考に更に深く踏み込む。私的には近藤プロの大三元よりずっとハイレベル。

この局のみならず、今回、多井プロの牌譜を徹底的に調べ上げたので、その研究結果を披露する。

ところで、実は、先程から少し憂鬱なのである。脳がどんより沈んでるような、文字を打つ腕が重くなっているような。

もう一つ未だ触れていないテーマがある。

萩原氏のInstagramを読んだ時に、ゆうせー氏の慧眼に感服した事は既に書いたが、次に感じたことは、「夢を追う」というフレーズへの違和感、というかもはや、Mリーグへの観戦熱を冷ます嫌悪感すら帯びた、既視感であった。

嫌な、汚れた、悲しい、いつかも来た道。

私がしばらく天鳳や天鳳TLから離れていた原因だったりもする。

そんな昔話も多少語ってみたい。なので広く捉えれば今回も天鳳史。

とりあえずは多井プロの神打から。恐らく皆さんの想像を絶する膨大な解説になります。この選択、この局面をどう考えるべきか。多井プロの頭脳を解き明かします。

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