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チェーン店パン屋の今後と、変な名前の高級食パン店が不調な理由

立て続けにnoteを更新しますが、最近は衝撃的なニュースが多いのでこの件について言及します。

神戸屋が店舗型の事業縮小を発表しました。

これ以外にも最近では、ベルベの倒産、HOKUOの事業撤退など、パン業界の暗いニュースが散見されます。

共通しているのは都心展開の中規模サイズ、セルフサービス式のチェーン店という点です。僕は2020年にコロナ騒動が始まった際、パンの需要がコンビニの袋パンと個人店のパンに集中し、このような規模のパン屋は厳しくなる。という予想をしていました。

原因①コロナ禍におけるセルフサービス式のリスク

コロナ禍において消費者の意識が一番大きく変わったのは、衛生面です。僕は「飛沫感染」というワードがメディアに出始めた時点で、「今後は飛沫というものに国民全員が敏感になるな」と感じ、個人店としてはいち早くアクリルパーテーションを導入しました。(僕が買った直後に価格が高騰し、一時は2倍以上の値段になりました)

従来のパン屋のセルフサービス式では、消費者は少なからず「誰が触ったか分からない」という不安感を持っています。チェーン店ではカバーをつけるなどの措置を取っていますが、これは今までになかった余計なコストです。

また、衛生面における消費者の目線も非常に厳しくなってしまった中、トングとトレイの使い回しにおける抵抗感を払拭するために、今まで以上に念入りに洗浄をする必要があります。ここに人件費がかさんでいる店舗もあると想像します。

原因②商品のコモディティ化

コモディティ化とは、簡単にいうと差別化が出来なくなってしまっている状態です。市場が活性化し各社が生産性を追求していると、自然と同じような商品ばかりになっていく傾向があります。

テレビモニターなんかが良い例で、国産も外国産も大差が無くなってしまったテレビモニターは、今や価格の安い(原価の安い)サムスン、LGにシェアを奪われてしまっています。コモディティ化の先にあるのは、価格競争になります。

多くのベーカリーでは問屋さんを通じて限られたメーカーから材料を仕入れていますが、例えばパン屋Aとパン屋Bの、カレーパンのフィリングがエスビーの同じカレーフィリングである事はよくあります。つまり、パン業界にも既にコモディティ化は起きており、どうしてもチェーン店各社が価格競争をする現状になってしまうのです。

個人店も安泰ではない

現在は原材料価格がリアルタイムでぐんぐん上昇しています。お店を休んでいる間に、原材料価格が1割くらい上がりました。

個人店の弱点は「値上げの決断が苦手な人が多い」という事です。ここを克服できないと、疲弊する事になります。

個人店が今後生き抜くのに必要なものは「お客さんとの信頼関係の構築」「ここでしか買えない商品」の考案・セルフプロデュースです。

信頼関係のあるお客さんは、適切な値上げには理解を示してくれます。逆に、値上げに対して離れていってしまうお客様は、その程度だったのだと割り切りましょう。

冷たいように感じますが、これは単に「店舗と消費者にミスマッチが起きていた」だけの話です。

「小麦の奴隷」の先見性

以上の点を踏まえると、ホリエモンがFC展開する「小麦の奴隷」のように、冷凍生地で生産性を追求しコストを抑えたまま、地方に展開するという方向性は非常に合理的で、流石に先見性があるなと感心します。

これは従来存在していたパン屋さんを駆逐する恐れさえあり、競合したくないパン屋さんは多いでしょう。ただし、そこに新たに雇用が生まれるのならば、そこまで悪い話では無いと感じています。

業界として避けたいのは、チェーン店で働いていた野心と実力のある若手職人が職を追われ、生活の為に冷凍生地のパン屋さんで働かざるを得ない状況だと思います。

傾向としては避けられない流れ

戦後に出来た昭和の個人店のパン屋は、チェーン店の台頭で淘汰されてしまいました。同じ事が、今度は都市部のチェーン店に起きると思っています。これは時代の流れなので、ある程度避けられないと感じます。

ベルベが倒産した理由の一つは、過去の粉飾決済により借入が出来ず、延命措置が出来なかった事も要因の一つだと予想していますが、このニュースを聞いた時、しばらく閉店のニュースが続くであろう事は予測しました。

ベルベのニュースを見てYouTubeで早めにこちらの動画を作ったのは、そういう理由です。

当たってほしく無い予想

まだしばらく、閉店のニュースは続くと思います。政治的な話はなるべく避けますが、現状の政権の方向性では原材料価格はまだまだ上がり、国の補助にも限界が来るでしょう。

パン業界に関わらず、傾向として多くの業界で倒産が続きます。そうなると、パンに高いお金を払える人も少なくなっていきます。その先にあるのはコンビニやスーパーの袋パンの需要増と進化です。

今後、味を追求する個人店のパン屋は、より「嗜好品」としてのパン作りを模索する必要があり、それを適切に売るプロデュース力と信頼関係の構築が必要です。焦らずじっくり考えましょう。

高級食パン専門店が最近不調な理由

嗜好品として好調に展開していた岸本氏の高級食パン専門店が最近閉店続きなのは、自身のプロデュース店舗そのもののコモディティ化と、顧客との信頼関係の構築が疎かになっていた結果だと感じています。

日本人は嫌儲主義なので、簡単に儲かっているような様子をテレビでバンバン流しては、オーナー希望者向けには良いかもしれませんが消費者目線では足が遠のく理由になるでしょう。

ただし、高級食パンは流行り物の為、どちらかというとパン屋というよりタピオカ屋などにジャンル分けされるものであり、本人も分かっていて短期決戦のつもりでやっていただろうなとは思っています。個人的には、予想より1年以上長くブームが続いたなと思います。

岸本氏はミャンマーにも日本式のパン屋を展開していて、日本の職人を引き連れてミャンマーで技術指導もしています。その点は僕は非常に評価すべき点だと感じています。

余談ですがタイ、ベトナム、ミャンマーなどは日本式の甘いパンが好まれる傾向にあるらしく、今後日本のベーカリー企業が進出するべき場所であると思っているので、神戸屋が東南アジアに展開したら面白いな。と、勝手に思っています。

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