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Apple Watch で100万人の心房細動を検出する

Apple Watchのアップデート(Watch OS 7.3、iOS14.4)に伴い心電図が測定できるようになりました。

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測定の仕方は簡単です。下図のように左手にapplewatchを装着し、右手でクラウンを触って30秒待つだけです。

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そうすると以下のような心電図がとれます。

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結構立派な心電図がとれています。ただ、これで何がわかるのかというのが大事です。100万人が罹患している心房細動がわかります。

心房細動は何が危ないのか

心房細動というのは心房が不規則に収縮してしまう病気です。心房細動は脳梗塞を引き起こします。脳梗塞によって私達の体が動かなくなったり、死亡したりしてしてしまいます。心房細動が脳梗塞を起こしてしまう原因を見ていきましょう。

心臓は4つの部屋に別れます。以下のように心房と心室が左右に一つずつあります。血液の流れは全身→右心房→右心室→肺→左心房→左心室→全身というように流れます。

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心臓はリズムを刻みながら収縮していますが、実はこの心房と心室は同時に収縮しているわけではありません。①心房が膨らみ(全身や肺から血液が心房に流れる)、②心室が膨らみ(心房から血液が心室に流れる。心房は収縮する)③心室が収縮する(心室から全身や肺に血液が流れる)という具合です。このリズムを作るために、心臓には電気信号が以下のように流れています。電気が流れた順に収縮していくので心房→心室が収縮する様子がわかります。

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心房細動はこの電気信号がなんらかの原因で本来は上図の洞結節だけから出るものが肺静脈からも信号が出てしまい心房全体の信号がひっちゃかめっちゃかになってしまいます。(下図)

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信号が入り乱れてしまった心房はうまく収縮できませんが、一方で心室への信号はちゃんと道筋通りに進むので全身や肺への血液はちゃんと行き渡ります。心臓の大事なポンプ機能を司るのは心室です。心室が血液を送るポンプの役割をしている一方で、心房は血液を一時的に貯めて流れをスムーズにさせるタンクのような機能です。心房細動ではこの機能が失われるため、流れが悪くなり血栓を作ってしまいます。これが脳に飛んで脳梗塞を起こすわけです。

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この怖い心房細動ですが、実は半数程度が無症状です。また一時的にこの心房細動が起こるもの(発作性心房細動)もあり、自分が動悸がすると感じても、医師のもとに言ったらもとに戻って心電図をとっても異常はないと言われることになります。「本当に異常があったんだ!」と言っても、実際に現症が起きていないと医師としては診断できないため、「何もない」ということになってしまいます。

今回のApple Watchのアップデートではいつでも・すぐに測れることが革新的なところです。特に今まで健康診断でちゃんと心電図まで測っていないという方や、ちょっと動悸がするのだけれど医者に行くのはちょっとというかたにはかなり朗報です。是非一度試してみてください。また計測した心電図は下図のようにiphone上で表示してくれます。PDFで印刷して医師に見せることも可能です(iphone上で見せても良いと思います)

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ただ1点注意して頂きたいことがあります。
正式な心電図検査の代わりにはならないという点です。正式な心電図ではこうしたリズム以外にも様々なことがわかります。重要な病気としては心筋梗塞や狭心症が挙げられますがこれらは完治することができません。実はこの機能は本来の正式な心電図(12誘導心電図)のごく一部しかみていません。12誘導心電図は以下のようなものです。

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このうち今回のapple watchで見ているものは以下の第一誘導と呼ばれるものです(厳密には違います)。ここだけしかみていないと、狭心症や心筋梗塞の判断がつきません。

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この12誘導心電図というのはあらゆる方向の心臓の電気信号を追いかけています。今回のApple Watchでは右手から左手に向かう電気信号(電位の差)を見ているはず(左手をapplewatchの背面で感知、右手をクラウンで感知)ですので一方向しか判断がつかないわけです。正式な心電図の計測の仕方は以下のようになります。

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こうしたものを使用することによって心臓の異常や、異常のある心臓の部位を特定することができるわけですね。ちなみに以下のように電位の差をみています。(下の図は四肢に取り付けられた電極4つで見ているものです。これだけでも第1誘導、第2誘導、第3誘導、aVR、aVL、aVFという方向が判断がつくので通常なら黒い太枠の→で示される電気の流れがどうなっているか判断できることになります、難しい話になってしまうので今回の記事では割愛しますが、Apple Watchで見ているものは右手と左手しかみていないから、全部の重大な心臓の病気はかばーできない、ということがわかっていただければOKです)

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YouTubeクリニックの動画では実際に計測した様子も撮影していますので是非見てみてください。
https://youtu.be/wT0WOANf8aU


画像 引用
心電図の誘導法と装着部位
http://www.eonet.ne.jp/~hidarite/pm/ecg01.html
静岡県立こども病院
http://www.shizuoka-pho.jp/kodomo/department/cardiova/normal/index.html
第一三共株式会社 心房細動.com
管理薬剤師.com
https://kanri.nkdesk.com/naika/sindenzu.php


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