【感想】『ゴジラ -1.0』を見ました(ネタバレあり)

ゴジラに踏み潰されれば一撃でパーになる人生を歩んでいる皆さま、いかがお過ごしでしょうか。同じくゴジラに踏み潰されれば一撃でパーになる人生を歩んでいるゆうととです。この度『ゴジラ -1.0』を見てきたので、感想を書きます。大学卒業間近に滑り込むように映画を見ることにしたんだけど、この作品自体上映開始から結構経ってるみたいなので、もしかしたら二重で滑り込んでいたかもしれません。
実は僕は高校の時『ゴジラ(ゴジラに恋した少女の話。原作は二時間脚本なので長いけど、無料で読めるので良かったら読んでね。リンクも貼っておくから)(https://playtextdigitalarchive.com/author/detail/301)』を上演した経験があって、その時は円谷英二役をやっていました……が、僕自身はゴジラにまつわる作品を一つも見たことがありません。これが初ゴジラです。よろしくお願いします。
普段から感想記事はネタバレなしで書いてるんですけど、今回はまあ上映開始から結構日にちが経ってるしもうそろそろ終わるかもしれないのでネタバレありで書こうと思います。ちょっとスペース空けとくんで、今のうちに避難してください。


















よし
行ったな?
では始めていきましょう。

あらすじ

大戦末期、特攻隊員に任命された敷島。彼は戦闘機の故障を訴え、大戸島にある整備場に着陸した。しかし、戦闘機に故障はなかった。彼は、結果の見えている戦いに命を賭す気がなかったのである。水面に浮かび上がった魚の群れをぼんやりと眺めながら、敷島はただ時を待っていた。
その日の夜、敷島と整備員たちの傍で大きな破壊音が起こる。駆けつけた彼らの前に立ちはだかっていたのは、得体の知れない大怪獣だった。島の住民が「ゴジラ」と呼称するそれを戦闘機の機銃で撃ち殺すよう指示を受けた敷島。しかし、模擬訓練では好成績を収めていた彼の手は、恐怖に縛られて動かない。破壊、蹂躙、そして殺戮。想像を絶する惨事に意識を失った敷島が次に目を覚ました時には、彼ともう一人を除いて既に全員が命を落としていた。
やがて戦争が終わり、失意の中で家に帰ると、さらなる絶望が彼を待ち受けていた。両親は空襲で死亡、親しかった近所の女性も子どもを亡くし、敷島は彼女に激しく責め立てられる。「生きて帰って来い」と激励を受けたその口から、「腑抜けの卑怯者」と罵られる。その絶望は、敷島の心を折るには十分だった。信頼と誇りを失い、抜け殻の如くただ時を過ごしていた敷島は、偶然幼い赤子を抱えた女性、典子と出会う。その出会いがきっかけとなり、彼は新たな人生を歩み始める————

シナリオについて

良かったです(語彙力-1.0)。「破壊の象徴」としてあまりにも広く知られすぎているゴジラという存在を、現代においてもここまで絶望感のあるものとして描くことができるのかと感嘆しました。圧倒的な脅威を前にした人間の恐怖、そしてそれを打倒しようと奮い立つ勇気(あるいは、蛮勇)……そんな具合で、災厄とも言える暴威に立ち向かう人間の心理に焦点が当てられていたように思います。
ゴジラにまつわる作品を見たことがない僕でも知っている有名な説として、「ゴジラ、自然災害のメタファー説」なるものがあります。ゴジラは自らの思うがままに破壊の限りを尽くし、気が済んだらどこか見知らぬ場所に帰ってゆく。そのありようが自然災害と類似しているという話ですね。これを踏まえて見ると、「確かになあ……」と思う面が多々ありました。本来人間がどうこうできる話じゃないけれど、どうにかして抵抗したくなる。それが人間の性なのかもしれません。また、これに加えて「ゴジラ、戦争のメタファー説」もあります。放射能の熱線を吐くなど、所々の習性に戦争の暗喩らしき部分があるので、確かにこれもまた有力と言えるでしょう。今回は第二次世界大戦前後の話だったので、特にこちらの方がよりそれっぽく見えました。
終盤ではゴジラを仕留めるために民間人や軍人が決起して作戦会議を開く場面があるんですけど、ここの描き方が本当に巧みだと思いました。ゴジラを仕留める作戦が提示された後、「今度は戦争のようには行かない。守るべきものや家族がいる」と去っていく人物が出てくる場面がありました。一人、また一人と人が去ってゆく中で、作戦の司令官は「この作戦は強制ではない。守るべきものがある者は帰ってもらって構わない」と伝えます。そして、残った人たちの間では「死ぬと決まったわけじゃないから、戦争よりはマシだ」という言葉が上がり、決心を固くする……そんな流れなんですけど、これ多分かなりカルト宗教とかの人の引き込み方に近いと思うんですよね。「賛同できない者は先に逃しておいて、残った者の仲間意識を高める」という手法。作戦への参加を拒み、会場を去った人がいる中で、ここにいる人たちはその場に残ったということ。その事実を意識した人々は、これ以上退くことはない。この……なんでしょう、上手く言えないんですけど、ゴジラを戦争のメタファーとして見た時に、二時大戦の時にあった「愛国心、あるいはナショナリズムの醸成」と今回のこの場面は酷似しているように感じました。戦争というあまりにも巨大で漠然としたものから、ゴジラという単一の怪物に対象が置き換わっても、「未曾有の恐怖」を前にした人間の反応は変わらないのかなあ、などと考えていました。
あとは、そうだね……「生き残ってしまった」という罪悪感、俗に言う「サバイバーズギルト」も重要なポイントだと思いました。主人公の敷島は最初の場面だけでなく、その後何度もゴジラに遭遇し、その度に何かを失って、そして自分の身は助かっています。ただでさえ「特攻を免れた人間」として背負っていたその罪悪感が、ゴジラに遭遇するたびに増幅してゆく。そして苦悩に喘いだ末、その苦しみは「自分の中の戦争を終わらせなければならない」という使命感に形を変え、一度は退いた戦場に彼を再びいざなってゆく……そういうわけで、物語が進むにつれて敷島の中で「ゴジラ」という存在はどんどん大きくなっていくんですけど、それに応じて「ゴジラ」が「戦争」というものに重なっていってるのかなあ、などということも考えていました。
それと、戦争では特攻を避けていた敷島がゴジラとの戦いにおいては自ら特攻を選んでいるというのも大きな変化ですね。これは戦争の時代には敷島自身に「直接の被害」がなかったのが大きいんじゃないかと思います。彼は空襲による両親の死亡という「直接の被害」を戦争の後に知った一方、ゴジラには目の前で仲間や大切な人を奪われている。彼はこの作品において最も多くゴジラと遭遇した、いわば最大の「当事者」なのです。だから同じような脅威でもそれに向き合う姿勢には変化があって、戦争においては彼の中になかった特攻の意志もゴジラとの戦いでは芽生えているのではないでしょうか。そして、この「当事者意識の有無で変化が生じる」ということは当時の戦争でもやはり利用されていて、「進め一億火の玉だ」とかそういう戦時中の標語は、特攻を恐れていた敷島をも変えた「当事者意識」を全ての国民に植えつけるものとして大きな役割を果たしていたんだろうなあ、などと考えていました。
あとは最終盤のシーン。敷島はかつて出来なかった特攻を果たし、ゴジラは爆撃を受けて海の中に沈んでゆく。そして、今度の「特攻」は戦争のそれとは違い、敷島は戦闘機の整備士が用意した脱出装置で生還する。最後に敷島はある報せを聞いて病院に駆けつけ、ゴジラの襲来で命を落としたと思っていた典子と再会し、落涙の中で終幕————かと思いきや、最後に水底に沈んだゴジラの身体が膨らみながら再生し、脈動するように蠢く映像が流れて終幕。僕はゴジラが倒れることは絶対にないと思っていたので、勝った時は「勝つことあるんだ」って思ったんですけど、やはりそう上手くはいかないようです。敷島は確かにゴジラを倒した。だから、その姿が海に沈むとともに、彼の中の「戦争」もまた終息を迎えたのでしょう。しかし、「戦争」という存在それ自体がなくなることはない。その象徴たるゴジラが再び目覚める火種は、今も海の底で眠っている。最後はまさしく、現代を生きる僕たち観客にその「当事者意識」を持たせてこの作品は終わるわけです。反戦を訴える作品としてこの手の描き方は定番というか、よくあるものだと思いますが、それだけに非常に重みがあると感じました。拙い感想ですが、シナリオについてはまあこんなところです。

映像について

すごかったです。視覚効果か何かで賞取ってるらしいね(世間知らず)。確かに作中何度かあるゴジラの襲来シーンはどれも映像的なこだわりを強く感じました。映像については本当に素人なので(さもシナリオについては玄人であるかのような物言い)、細かいことは分かりませんが、特にアングルなんかは分かりやすく「凝ってますよ」って感じがしました。浅いね〜!

音響について

IMAXで見たので、凄まじい迫力でした。IMAXって何なのかよく分かってなかったけど、IMAXにして良かったね〜ってなりました。上映前にIMAXの告知映像(最高の体験をお届けするみたいなやつ)が二回も流れたので、「そこまでかよ〜」と思ってたんですけど、そこまででした。
音の遠近感がすごくリアルに表現されていて、ゴジラの迫力が数段増していたように感じましたね。今回は特に戦闘機が物語上重要な立ち位置を占めるので、IMAXの強みが存分に活きる構成になっていたと思いました。
あとは最後の決戦シーンの「ゴジラのテーマ」も良かったです。それまでの襲撃シーンでは多分使われてなかったと思うんですけど、だからこそ良かった。この曲がすごく大事にされているのが素人目にも分かります。分かりやすい最強のカードを、分かりやすい最善のタイミングで切っているこの感じ。シリーズのファンであればあるほど感慨深いものがあるんじゃないでしょうか。どうだろうか。

タイトルについて

『ゴジラ -1.0』。これって何?とずっと考えていました。僕なりに考えた仮説は「特攻と言えばやはり有名なのは零戦。しかし、戦争のごとく不退転の特攻で命を落とすのではなく、命を賭して戦う覚悟を決めた上でなお『生きること』を諦めない勇気。ゼロから一歩引き退がる勇気を表すために-1.0というタイトルをつけたのではないか」という感じです。
ちなみに公式サイト見たら「ゼロからマイナスへ(大戦の被害で「ゼロ」の状態になったところにゴジラが現れ、「マイナス」になるという意っぽい)」って文言があったので、多分僕の仮説は全然違います。無情。

終わりに

他のレビューや資料もろくに見ず、好き勝手色々言いました。卒業間近の大学生が滑り込むように見た感想なので、まあそれぐらいのものとして見ていただければ幸いです。映画館で映画を見るの自体久しぶりでしたし、IMAXで映画を見たのは初めてだったんですが、めちゃくちゃ楽しめました。またそう遠くないうちに別の作品も見てみたいと考えているので、その時はまたnoteを書くかもしれません。気楽にお待ちいただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。お互いゴジラを目覚めさせることがないよう、ぼちぼち生きていきましょう。


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