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人類ならば、ハーヴェステラをやるべきだ(レビュー・ネタバレなし)

ハーヴェステラをやるべきではないならば、人類ではない(対偶)

2023年4月28日から5月10日まで50%引きのセールとなるハーヴェステラ。僕はTwitter上で何度も何度も買え買えと言っています。その様子は、まさしく盛夏の朝の蝉の如し。けたたましくて、そして、虚しい。いつ始めてもいいので、安いうちに買っておきましょう。マジで。これは経済の話。セールは期間限定なので、こんな記事は一旦買ってから読んでください。この一匹の蝉の儚い叫びを意味あるものにするのが、他でもないあなたであることを願っています。


1.そもそもハーヴェステラって?

2022年11月4日にスクウェア・エニックスより発売された、ファンタジー×生活シミュレーションRPG。プレイヤーは一人で、マルチ要素はなし(だからいつ始めても良いし、だから良作なのにいまいち広がっていかないんだろうな)。

この世界の人々は「死季」という現象に悩まされている。死季とは、この世界に存在する四つの季節を司る結晶体「シーズライト」の異変によって発生する現象。あらゆる生物の生命を脅かす物質が空気中に舞い、人々は死季の間は外を出歩くことができない。近頃は、この死季の期間がだんだん長く、間隔が短くなっているという。
この世界に迷い込むようにしてやってきた「あなた」は、死季のことを知らないまま外を出歩いてしまう。倒れたところを「レーテの村」の人々に保護され、「あなた」はこの世界で農業をしたり、街の人々と交流したりしながら暮らすこととなる。そして、「あなた」は仲間との出会いや冒険を通して、この世界の謎に迫ってゆく。

なんか上手いこと説明できてる感じしないんですが、あらすじはこんな感じです。体験版は大体3〜5時間程度で終わるし、この説明がある場面のちょっと先ぐらいまでできるので、まずは是非体験版をやってみて、雰囲気を見てもらえたらと思います。体験版ってそのためにあるから。

2.ゲームシステム

「ファンタジー×生活シミュレーションRPG」って聞いても、結局何?って感じだと思います。正しい感想です。ここでは具体的な仕様などについて説明します。体験版と併せて、プレイのイメージを膨らませるのにご活用ください。

☆基本的な仕様について
・季節→春夏秋冬が30日ごとに切り替わり、季節の変わり目に死季が訪れる。死季の間は住民も出歩かないので店などの利用もできないし、探索もできない。大人しく料理とか道具作って一日を終えましょう。死季の間のみ挑めるダンジョンがありますが、クリア後のやり込み要素みたいなところがあるのでやりたければやってもいい、という感じ(最初の方は普通に突破できます)。死季が終わると樹木以外の作物は全て枯れる。

・レベル→パーティ単位でレベルがあり、キャラごとにはない。新たに育成することなく、好きなキャラを好きなタイミングで使える(ただし装備強化分の差はある)。経験値はストックされ、その日の終わりにベッドで寝るかHPが0になって倒れた時に一気に獲得する形。そのため道中でのレベルアップみたいなのはない。

・時間について→現実世界の10秒でゲーム内の10分が経過する。クラフトや料理、ハシゴの修理などにも時間を使う。夜8時には飲食店以外の店が閉まり、夜10時には「眠くなってきた……」という表示とともにステータスが一時的に少し低下する。夜0時を迎えると「ますます眠くなってきた……」という表示とともにさらにステータスが下がり、ダッシュができなくなる。そして深夜2時ぐらい(正確な時間表示はない)になると倒れ、強制的に1日が終了。基本的には真夜中になったらもう寝た方が良いです。

・お金について→作物やアイテムなどを出荷することで一日の終わりにその精算が行われ、お金が手に入る。クエストや料理納品などによっても入手可能。入手手段が少ない割に結構使うので、作物の種が買えなくなるぐらい無理して大きい買い物をするのは避けるのが吉。

・体力表示としてはHPとスタミナがあり、HPが0になると倒れてその日が終わる(出荷物や経験値などの精算が行われ、翌日の昼12時からスタート。医療費も取られます。覚悟の準備をしておいてください)。スタミナは農業だけでなく、採集・採掘やダッシュ、攻撃にも使用する。スタミナが0になると走れなくなったり、攻撃できなくなる。HPは自宅に戻るか料理や飲み物で回復可能。スタミナは料理などを食べると満腹ゲージが溜まり、それが0になるまでは自然回復する。朝適当にそこら辺から植物を2本ぐらい採って食べておくと楽。野生児の食生活。

・各地には「転移モノライト」というものが置いてあり、セーブできたりそのエリア内の転移モノライトへワープできたりする。

☆農業について
・道具はクワ、シャワー、ハンマーの3つ。クワで耕して種をまき、シャワーで水をやり、日数が経ったら収穫する、というのが基本の流れ。ハンマーは邪魔な岩や作物、設置物を破壊するために使う。

・作物ごとに植えることができる場所と季節、収穫までの日数、再収穫の可否が決まっている。水をやらなくても育たないだけで枯れはしない(水をやっている日のみ収穫までのカウントが進むイメージ)。成長促進剤のようなものはなく、決められた日数をちゃんと待つ必要がある。

・先述した通り、樹木以外の作物は死季が終わると全て枯れる。枯草は特に使い道がないので売るか収納箱に眠らせておきましょう。

☆RPGについて
・装備は武器とアクセサリーのみ。武器を強化すると防御力も上がるので、武器と防具を一本化しているイメージ。

・パーティは最大で3人。街の中か、転移モノライトの近くで編成できる。仲間ごとに固有の編成ボーナスがあり、キャラクターストーリーを進めることで補正倍率が上がる。仲良くなることもまた、強くなることなんだ。

・複数の種類のジョブがあり、仲間との出会いなどに応じて解放されてゆく。ジョブは3つまでセットが可能で、探索中に切り替えることができる。ボス戦は弱点属性を突くのが重要なので、ジョブは固定せずある程度バランス良く使っていくことをおすすめします(僕はファイター・メイジ・スカイランサーだけで最後まで行ったので別に必須ではない)。一つ固定で残りを流動させるようにするとちゃんと強いジョブもできるのでそれも良いでしょう。

☆探索について
・敵を倒しながらダンジョンを進んでゆく、基本的なRPGと大差はない作り。ただし時間の都合上、一日でダンジョンを全て踏破するのは現実的ではない。転移モノライトがちょくちょく置いてあるので、一日で次の転移モノライトを目指すという流れを繰り返して少しずつ進んでいきましょう。

・雑魚の攻撃がかなり痛い。油断してるとすぐ死にます。主人公のジョブを遠距離攻撃系にするなど、とにかく主人公が死なないための対策をとりましょう。味方はHPが0になっても一定時間で復活します。それ何の技術?俺にも使わせてくれよ……

・エリア内にはFEARと呼ばれる強力な敵も存在する。世界樹の迷宮とかやったことある人なら分かると思いますが、アレです。無理に戦いを挑まず、レベルが上がったら後から倒しに行くのが吉。倒すとステータスやら何やらを強化してくれるアクセサリーが手に入る。

・転移モノライトの近くで一日一回「ブレイクタイム」ができる。料理の効果が増すだけでなく、ここでしか見られない会話も多くあるので是非。料理の種類とかキャラの組み合わせで内容が変わるからテキストの量凄まじそう……(いらぬ心配)

3.このゲームをおすすめする理由

正直いくらでもありますが、特に以下の点に当てはまっている人にはこの機会を逃してほしくないです。この機会を逃してほしくないという理由と併せてお伝えします。

・農業系のゲームが好き→買っておきましょう。農業それ自体をかなりしっかりやりたい方からしたら少し物足りないかもしれませんが、作物は決められた日数でちゃんと育ちますし、ゲームが進むごとにできることが増えていく楽しみもちゃんとあります。

・農業系のゲームにあまり慣れていない→今作の農業はかなり簡単で、旬とか土の質とかそういう小難しいシステムが取り払われています。何なら水をやらなくても育たないだけで枯れません。初めてプレイする農業系のゲームには最適だと思います。

・かわいい動物を見たい→種類は少なめだけどちゃんと良いデザインです。撫でることもできます。

・RPGが好き→今作はこう見えてかなり王道のRPGに近い作りです。アクション要素も入ってきますが、アクション力で突破できる場面は結構少なく、基本的にはキャラのステータスなどRPGの要素が中心になってきます。だからこそ「ファンタジー×生活シミュレーションRPG」と銘打ったのでしょうね。

・ゲームのBGMに関心がある→今作の楽曲は『ゴッドイーター』『鬼滅の刃』などの楽曲を手がける椎名豪氏が制作しています。とても良いです。自分がBGM好きだと信じているなら買いましょう。

・良質なシナリオを読みたい→買っておきましょう、としか言えないんですよね、シナリオに関することは……全部終わったらハーヴェステラのプレイヤーが全然シナリオの話しない理由が分かると思います。

・手ごたえのあるゲームをやりたい→ゲームの難易度は結構高く、特に雑魚の攻撃が痛いので油断してるとすぐ死にます。レベリングしたり武器強化したりすれば割と楽になりますが、その辺を普通に進めてるとまあまあ手応えある作りになっていると思います。

・ゲームをあまりやらない→今難易度が高いって言ったところですが、ちゃんと丁寧にプレイして、ボス戦の前には準備すれば順当に進めます。このゲームはアクションではなくRPGなので、レベルを上げればその分だけ勝ちやすくなります。あとこのゲームのシナリオは、言い方を選ばなければ「良質なゲームシナリオの上澄みの部分を集めたような作品」と言えると僕は考えていて、だからこそゲーム慣れしていない人にやってほしいと思っています。

上記に当てはまらなかった方も、それはそれとして買うことをおすすめします。僕はこのゲームを「踏襲」と「革新」が絶妙なバランスで同居した作品と評しています。数多くのゲームに触れてきた人にとっては懐かしく、ゲームに慣れていない人にとっては新しい。そのためコンテンツとしての受け皿はかなり大きく、「嫌い」な人はほとんどいないんじゃないかと思います。発売当初は体験版に問題点があったようで、ちょっと否定的な意見が優勢でしたが、今はそれも修正されてもうすっかり落ち着いています。

4.問題点・不満点

人にものを勧める上で、問題点から目を背けるのは不誠実というもの。良くないと感じた点もしっかりとお伝えします。

・ボイスが少ない→これ僕は全く問題だとは思わないんですけど、なんか指摘してるレビューが多かったので一応。確かにボイスは少ないですが、「魅せ方」がしっかりしており、少ないボイスの表現上の効果を最大化するような演出はちゃんとしています。あとそもそもただでさえ新規タイトルで予算もないだろうにテキスト量が膨大なんだから、こんなんフルボイスにしてたら定価が1万じゃきかなくなっちまうよ……

・ゲームのテンポが遅め→これは類似のゲームシステムを持つルーンファクトリー4と比較した印象なんですが、ゲームのテンポは遅めです(ルンファク5と比べると大体同じぐらいの印象)。ただ、多分これはアクションとしてこのゲームを見た時に抱いた印象で、RPGとして見るとそんなに遅くはないのかなと思います。複雑だね……

・ゲーム内の時間の縛りが結構ある→プレイしていて、あらゆることにゲーム内の時間を使うなと感じました。例えば先述の通り、ハシゴを修理するのに1時間かかったり、料理や道具を作るのに2,30分かかったりするなど。また、これは類似ジャンルのゲームでも大体そうですが、店が開いてる時間が決まってたり、夜遅い時間帯には民家に入れなかったり、その辺の制約があります。でもこの制約を取り払うとそれはそれでゲームとして突っ込みどころを生んでしまうことになるので難しいところですね。ただ飲食店も他の店と同じ時間に開けてほしいとは思いました。朝一番に雑貨屋とか寄るついでに顔出そうとすると絶妙に時間を持て余す。釣りでもしてればいいんですけどね……

・季節で作れる作物が完全に縛られる→この作物は春のみとかこの作物は冬には作れないとか、作物を作れる季節が種類ごとに決まっています。他の作品だと「春の畑」みたいな感じで常にその季節として扱われる畑があり、移動の手間さえかければいつでも作物を作れるみたいな措置があるんですが、今作にはそれはないです。まあ移動にも時間食うからこの判断が間違っているとは一概には言えないんですが、作物が縛られると料理も縛られるし、特定の料理を要求してくる要素もあるので、ここはもう少しやりようあったかなと思いました。

・「次のレベルまで」の表示が問題→先述した通り、経験値は一日の終わりに一気に獲得できる仕様なんですけど、次のレベルまでの必要経験値は見ることができ、敵を倒したその時点で更新されます(なのでその日の終わりにレベルアップするかどうかはわかる)。ただこの仕様上、次のレベルまでしか表示することができず、終盤で一気にレベルを上げたい時には少し不便でした。

・読み込みの頻度が高い→時間としてはそんなに長くないんですが、建物の中に入ったり、エリアを移動したりする度にロードが入るので少し気になりました。まあでも明らかに「重いな!」って感じではないです。体験版ではそこも含めて見ておくと良いでしょう。

まあこれぐらいかな……って感じです。全体として見ればかなり些細なもので、こうやってレビューとか書くために振り返ろうとしなければそんなに気になるものではないかなと思います。

5.終わりに

まあ色々書いてきましたが、僕がこんな記事を書いてまでおすすめしたいと思った最大の要因はやはりシナリオです。ただゲームとして面白いだけだったら、こんなに人に勧めようとは思いません。僕はハーヴェステラの十倍ぐらいの時間スマブラをプレイしていますが、スマブラ一緒にやろうと誘うことはあっても、わざわざ記事を書いてまでおすすめをしようとは考えません。僕はそこまでの熱意を持ち合わせているような人間ではない。それでも、多くの人がこの作品に触れてほしい、正確にはこの物語を自分の体験として味わってほしいと思ったから、今この記事を書いています。僕がこの作品をおすすめする時に毎回述べていることですが、決してプレイ動画は見ないでください。それなら買わずに去る方がマシだとすら思っています。世の中に僕らが自ら体験して味わうべき物語というのは確かにあって、この作品は間違いなくその一つです。皆さんが自分の体験として、この世界に飛び込んできてくれることを期待しています。


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