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「b-lab自体がひとつのチーム」#にっとん

文京区青少年プラザb-labは、中高生にとって自分らしく過ごせる居場所であると同時に、「やってみたい」に挑戦できるチャレンジの場です。そんな「中高生の秘密基地」であるb-labでは、たくさんの大人たちがユースワーカーとして活躍しています。
b-labで活躍するユースワーカーには、職員に加え、フロアキャストと呼ばれるボランティアがいます。彼らは、半年~1年という比較的短い期間の中で、中高生とより近い距離で関わってくれる社会人や学生たちです。日々中高生と向き合う職員やフロアキャスト達は、どんなことを大切に関わり、何を学んでいるのでしょうか。
「Interview~b-labユースワーカーを訪ねる~」では、そんなb-labのユースワーカーたちにインタビューをして、彼らの言葉を綴ります。今回は、昨年度までフロアキャストとして活躍してくれたにっとんに、お話をきいてみました。

僕が中高生の時にこういう居場所があったら、絶対通いつめていた

―b-labのフロアキャストに参加したきっかけを教えてください!
もともと、カタリバが運営している学校向けの出張授業のボランティアをしていて、その同じキャストの紹介で、b-labが実施している出張授業に参加したんですよね。そのときに、「こんなところがあるのか!」って未知の世界に来た感覚があって。僕が中高生の時にもしこういう居場所があったら、絶対ここに通いつめていただろうって思いました。そこから、「今の僕ができることってなんだろう」って考えたときに、「ここの居場所づくりをやってみたいな」って思って参加しました。

ーそもそもカタリバに関わったきっかけは?
実は全然教育関係ないんです(笑)。
もともとは弁護士を目指していたんですけど、大学3年生の5月に受けた司法試験に落ちてしまったんです。「やることなくなっちゃったなあ」「どうしようかなあ」って、すごく路頭に迷っていた時期に、カタリバについて知り合いから聞いて「ちょっと行ってみようかな」って思っただけで。一応、困ったときに教員にシフトできるように、もともと少しずつ教職の授業をとってはいたので、司法試験に落ちたあとに、完全に教員のほうにシフトしたんです。でも、カタリバに関わってみて、教育に魅力を感じて、そういう道を選ぶことになったんですよね。

―そうだったんですね!にっとんって、カタリバ内でもカタリバ外でもいろんなことに関わっている印象があるのですが、その原動力はどこにあるんでしょうか?
やっぱり、孤独になりたくないっていうのが一番あるんですよ。もともと引きこもりタイプの人間なので、居場所がなくなってしまうと家に引きこもってしまうんです。だから、とりあえず何か予定を入れようという気持ちでした。
僕自身、不登校だった時期とかもあって、そのときの一人の時間がものすごく嫌だったんですよね。孤独で、頼る人も友達もいないっていう環境がすごくつらいんだって、僕自身もう知っているので、そうならないように「まずはb-abにいこう」「他の団体にもいこう」と思って、頼まれたら絶対「やります!」って言ってました。断ったことほぼないんじゃないかな(笑)。
それに、やるからには真剣にやりたいっていうのがあって。目標とかあまり立てないタイプなんですよ。とにかく、いま目の前にあることを全力でやるっていうスタンスでやっています。

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他の人がやっている関わりは、観て学ぼうと思った。

ーb-labでフロアキャストとして活動し始めたときは、どんな感じでしたか?
来た瞬間に新しいポケモンについての話を振られて、世代の差を感じました。最初はただただ聞いてましたね。途中でスタッフの人がボードゲームを持ってきてくれて、一緒にやったところから、「なんかちょっと会話するの楽しいかも」っていうふうになっていきました。
当時、シフトに入っていた時間は中高生が少なくて、カウンター席で1人で過ごしている中高生ばかりだったんですよ。でも、「b-labで何か残したい」っていう気持ちはあったので、「この子毎回来てるから話しかけなきゃ!」って思って、カウンターにいる子たちに話しかけました。「このゲーム楽しそうだね」とかって。勉強してる子とかにも、「これこういうふうに解くんじゃないのかな~」とか言ったり。アドバイスというより、一緒に解いてみたって感じですね。「難しいね」とかっていうと、「これはベクトルで解くんですよ」みたいに中高生が教えてくれたりしました。

―そういう関わりから何かを残そうとしてたんですね?
そうですね。それこそ、毎日来館しているいわゆる「常連」の中高生とは全然関わってなかったんですよね。そこはもう他のフロアキャストが担当してくれてたので、「いまさら自分が介入してもなあ」って思って。それだったら、自分はそれとは違うところにいる中高生と話したりサポートしたりして、居場所づくりしてみようかなと思ったんですよね。

―周りの人とは違うところにいこうみたいな気持ち?
そうですね。なんか他人と一緒が嫌だったんですよね。少しとがってたというか。「独りぼっちのところにどう介入していくかっていうのが、のちのち経験として生きていくんだろうな」とも思ってました。常連のほうが話しやすいし引き出しやすいんですよね。それに満足してしまいがちだけど、そこに成長があるのかなっていう疑問をもっていたので、挑戦していこうという気持ちでした。
それから、自己成長っていうのも意識していて、「もっと成長したい」って思っていました。現状維持っていう言葉がそもそもあまり好きじゃないので、「自己成長できるためにどうすればいいかな」っていう軸で考えていたんですよね。だから、「他の人がやっている関わりは観て学ぼう」って思っていました。

ーそのような「成長したい」という気持ちはどこから?
司法試験に落ちて、今の自分変わらなきゃって思ったところですかね。
司法試験落ちたと同時に、付き合っていた彼女とも別れて。「自分変わらなくちゃいけないな」って思いました。同じことやっている限りは、今の自分になっちゃうから、別の自分に変えていきたいなって。

ーカウンターの子に常に関わっていて、難しさを感じた瞬間はありましたか?
ありましたね。
でもそういうときは、続けていたらいつか変わってくるのかなっていうのを信じ続けて。夜回り先生も、ずっと話しかけ続けて対話に繋がっていくじゃないですか。それがb-labでも活きるのではないかなと思っていました。
みんなで過ごすのじゃなくて、一人で過ごしたい子もいると思うんですよ。そういう子に話しかけてあげないと、その子の価値観とかも広がらないと思うんですよね。ほっといたらほっとけちゃうけど、そのうちb-labにも来なくなっちゃうかもしれないし。
S君という高校生との出会いはひとつターニングポイントでした。最初は特に、その子以外、全然話しかけても反応してくれないっていう感じだったんですよ。だから声かけたときにいつもゲームの解説をしてくれたのが、励みになっていました。まあ夢中になっているときもあるので、何度か話しかけて会話を積み重ねたのですが。やっていたゲームが同じで、それを一緒にやるっていうコミュニケーションをとれたところも大きいなと思います。

b-lab自体がひとつのチーム

―教員になった今、b-labのフロアキャストとしての経験を通して得たものって、どんなものだと感じますか?
やっぱり、中高生と対話するっていうこと自体が、なかなか経験できないから、貴重だったなと思います。あとは、中高生のやりたいということを拾って、それを企画として実現することも。この2つの活動っていうのが、高校の教員をやっている今も生きてるなって思いますね。授業とか公務とか手いっぱいなところとかもあったりするんですけど、そのなかでも、生徒と話すときに単調では終わらないというか。「どうして?」とか「なんでこういうことがしたいの?」っていう視点が持てたことで、会話が増えてきたなっていうのも感じています。

―問いの種類が増えたんですかね?
そうですね。「どうやってこの子たちに話しかけようかな」っていうことを、b-labで常に考えていたので。これは生徒指導でもとっても役立ってます。先生から「ちょっときて」とか言われると堅いじゃないですか。そうではなくて、会話からすっと入れるっていう。そうじゃないと、僕も言いたいこと言えないし。そういうところには活きてたりするなって思います。

ー最後に、b-labの中高生との関わりにおいて大切にしていたこと、これからも大切にしてほしいと感じることを教えてください!
僕が一番大切にしてほしいって思うのは、「全員とコミュニケーションを取る」ってことですかね。一定の層としかコミュニケーション取らないんじゃなくて、全員ひとりひとりに話しかけるっていうことは、一番重要だと思ってるんです。居場所づくりとして取りこぼしもないし、一人でいる子に話しかける難しさはあるけど、自己成長につながるから。中高生も話しかけると嬉しい顔するし、そういうところを体験してほしいなと思います。
そこからさらにステップアップするなら、巻き込むってこともやってほしいなと思ってて。僕自身、最初の頃って、他のキャストと全然会えなかったんです。だから、2期目以降とかは、他のキャストと話したり巻き込んだりとかを重点的にやってました。カウンターの子たちと話すときにも、他のキャストと一緒に声かけて。ちょっと会話が盛り上がって、「うまく繋げたな」と思ったらスッと抜ける、みたいなことをしてました。「みんなでチームでやるのがいい」って、自分のしんどかった経験から感じていたので。
いろんな中高生を巻き込むのもそうだし、それだけじゃなくキャストも巻き込む――。僕はb-lab自体がひとつのチームだと思っているので、その部分を大事にしてほしいというふうに思っています。

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インタビュー:b-lab職員ふーちゃん

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