“こども・若者の居場所”ってどんなところ? ——中高生が語るユースセンターの日常
中高生の声を聴く
皆さんは、中高生時代にどこで日々を過ごしていましたか。そこでは、誰と何を話し、どんなことを感じていましたか。
いま、社会全体で「居場所」が注目されつつあります。今年度から始まったこども家庭庁の「こどもの居場所部会」では、現在進行形で「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」が検討されています。その検討過程では、パブリック・コメントを通してこども・若者の意見も募られていました。
居場所は、誰かが居場所だと言うから居場所になるわけではありません。そこで過ごす本人が居場所だと感じることによってはじめて、居場所となるものです。そのため、こども・若者の居場所を社会に増やしていくためには、そこで過ごすこども・若者自身のリアルな声をしっかりと聴くことが不可欠です。
今のこども・若者は、どこで日々を過ごしているのでしょうか。そこでは、誰と何を話し、どんなことを感じているのでしょうか。
そういったこども・若者の声を実際に聞いてみませんか? この記事では、ユースセンターで日々を過ごす中高生が、自分の過ごす場所について語るイベント「#ユースセンターがある生活」の様子を報告します。
「ユースセンター」は、若者が自由に過ごすことのできる施設です。訪れた若者は、勉強をしたり友達と遊んだりできます。またそれだけではなく、常駐するスタッフと話したり、それをきっかけに興味のあることにチャレンジしたりもできます。ユースセンターは、若者の居場所であり、活躍の場でもある、そんな施設だということができます。そんなユースセンターという施設で中高生がどのように過ごし、何を感じているのかに触れて、一緒に “こども・若者の居場所” について考えてみませんか。
ユースセンターMoi Moiの日常的な姿
2023年10月24日、愛知県名古屋市にあるユースセンターMoi Moiをお招きして、イベント「#ユースセンターがある生活 第7弾」を開催しました。イベントでは、実際に施設を運営されているスタッフの丹羽さんと、施設を日常的に利用する高校生レオンさんにご登壇いただきました。お話のなかでは、Moi Moiがどんな場所で、何を大切にしているのかを伺うことができました。
Moi Moiは、名古屋市子ども・若者総合相談センターの施設「金山Branch」の2階にある、オープン型交流スペースの愛称です。名古屋市内在住の15〜39歳の方が無料で利用できる施設になっています。施設には、本棚や卓球台があるほか、無料で飲めるドリンクやハンモックなども設置されています。
実際、日頃利用している高校2年生のレオンさんは、「お茶をいつでも飲めるのは便利」と話していました。レオンさんは、高校受験に向けた勉強期にお姉さんから紹介されてMoi Moiに来るようになり、今でも主に勉強する場としてMoi Moiを使っているそうです。そして「勉強に集中しているとのどが渇く」と話すレオンさんからは、施設で自由に飲み物を飲めることで快適に勉強できている日々の様子が浮かんできました。
そんな、日常的に何気なく過ごしやすい空間であるMoi Moiは、若者を見守り、応援する場所としての役割を持っています。Moi Moiのメインターゲットは、「相談」に拒否感を持っていたり、自身の違和感が「相談」に値しないと感じていたりする若者です。スタッフはそうした若者と日常的に関わることで、日常の延長線上で若者の悩みを聞いたり、若者が自身の考えを広げるのを手助けしたりしています。「無理に相談につなげない」「専門性よりも関係性」と話す丹羽さんのお話からは、若者の日常を何よりも大切にする姿勢が感じられました。
ユースセンターでの人との関わり
このイベントには、Moi Moiの利用者レオンさんだけでなく、東京都にある文京区青少年プラザb-labを利用する高校1年生のめいめいさんと、北海道にあるYouth+を利用する高校3年生のねここさんも登壇してくれていました。3人の高校生は、それぞれの居場所で過ごす日常の様子を話してくれていました。
北海道札幌市に住むねここさんは、あるスタッフと札幌以外の北海道の地域について話すことが多いと言います。ねここさんは、根室など、札幌から離れた様々な地域にお母さんと一緒にドライブで度々行くそうです。しかし北海道が広いこともあり、そういった遠方に行ったことのある同級生は多くないといいます。だからこそ、土地についての知識を要する会話は、Youth+にいるスタッフとの方が合うのだそうです。時には知らない土地についての話をスタッフから聞けることもあり、日々楽しく喋っているとねここさんは話していました。
一方レオンさんは、スタッフと交わした印象的な会話として、受験結果の報告を挙げてくれました。受験の合格は本人にとって嬉しい出来事ですが、周囲の友達もそれぞれ自身の結果に一喜一憂していると思うと、気軽に友達に話せる話題ではありません。そのため、レオンさんはMoi Moiに入館するときに、スタッフに受験の合格を伝えたそうです。そしてそのときにレオンさんと一緒にMoi Moiスタッフが喜んでくれたことを思い出として話していました。
こうして高校生の話を聞いていると、それぞれの施設が高校生にとってひとつの日常的な居場所となっていることが伝わってきます。それではなぜ高校生は、他の選択肢ではなく、ユースセンターという居場所で休みの時間を過ごすことを選ぶのでしょうか。
めいめいさんは、家にいるのではなくユースセンターb-labに来る理由として、兄弟の話をしてくれました。めいめいさんには、歳の小さいご兄弟がいるそうです。そのため、休みの日に家で勉強しようとしてもあまり集中できないことがあるといいます。そんなめいめいさんにとっては、b-labが土日に勉強をしに来たり、気分転換したりする場所になっているようでした。
また、質疑応答のなかでは部活とユースセンターの違いが話題にあがりました。レオンさんは1週間のうち5日は部活動をしており、部活が休みの日にMoi Moiを訪れているといいます。そんなレオンさんは、「部活は楽しいが、Moi Moiも楽しい」と話します。そして、部活が「幅を広げる場」であるのに対し、Moi Moiは「リラックスする場」であるとして捉えているようでした。
昨年度まで生徒会長を務めていたねここさんも、生徒会とユースセンターを比べて実感を話していました。それによると、生徒会では1つの物事に対してまとまって動いていたそうです。それに対しYouth+では、よりリラックスして素を出せるような友達が多いといいます。そしてねここさんは、「生徒会・Youth+どちらの友達も大切」と話していました。
今回のイベントでは、このように高校生自身の日々の過ごし方は、他の場所との違いを聞くことで、ユースセンターが高校生にとって日常的で、しかし大切な居場所の1つとして感じ取られていることが具体的に伝わってきました。
ユースセンターを増やしていくために
日頃から中高生と関わっている方であっても、こうした中高生の日常や、自分の過ごす施設に対する思いを聞く機会は少ないでしょう。それが、普段は中高生と関わらない方であればなおさらです。
そうした中高生自身のリアルな思いを、中高生自身の声によって届けているのが、この「#ユースセンターがある生活」というイベントです。このイベントでは、利用者の声を届けることを大切にしながら、ユースセンターの価値を伝えたいと思っています。そして、その先で中高生の選択肢の1つとして当たり前にユースセンターがあるような社会が訪れることを願っています。
#ユースセンターがある生活は、文京区青少年プラザb‐labと尼崎市立ユース交流センターの2つのユースセンターが事務局となって開催しているイベントです。ユースセンターの価値を当事者の視点から広めていくことを目的として、日本全国の様々なユースセンターのスタッフと利用者をゲストとしてお招きしています。2022年3月に第1回を開催して以来、数か月に1回開催し、今回で第7回を迎えました。
第8回となる次回は、東京都府中市にあるユースセンター「Posse」の皆様をお招きして、12月21日(木)18:30‐20:30に開催する予定です。ユースセンターの存在を初めて知ったという方でも、今回のレポートで興味を持ってくださった方には、ぜひご参加いただけるとうれしいです。皆様と画面越しでお会いできることを楽しみにしております。
また本イベントでは、#ユースセンターがある生活 というハッシュタグを使用しています。TwitterやInstagramにて、#ユースセンターがある生活で検索いただくと、様々なユースセンターでの日々の様子をご覧いただけるかと思います。ぜひこの機会に、そちらも併せてご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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