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骨髄バンクで提供するって、どういうこと?(3)

前回の記事はこちら
〇骨髄バンクで提供するって、どういうこと?(1)
〇骨髄バンクで提供するって、どういうこと?(2)

5.提供方法って?

(1)骨髄提供(入院期間:約3泊4日)

1⃣ 自己血採血

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骨髄提供の場合、通常 400~1200mL の骨髄液を採取(※1)することになります。 採取後にドナーが貧血に陥らないように、採取日の約1~3週間前にドナー自身の血液を採取しておき、冷蔵保存の上、採取当日に返血しています。
通常は 1~2 回に分けて、1回200~400mL 程度の採血を行います。採取予定量によっては、自己血採血を行わない場合もあります。

※1:採取量はドナーと患者の体格、ドナーの血液の濃さ(ヘモグロビン値)を基準に決定されます。ドナーのヘモグロビン値によって、体重 1 ㎏あたりの採取上限量は厳密に決められていますので、「安全に採取できる量」を超えて採取することはありません。

2⃣ 入院
骨髄採取に伴う全身麻酔の準備、また、骨髄採取後の体調管理のため、事前に入院が必要となります。
採取の 1~2日前に入院し、採取後2~3日で退院するのが一般的ですが、採取後の体調・傷の痛みによって入院期間が延びることがあります。

●費用・補償について
・医療費、交通費について、ドナーの負担はありません。
・仕事を休むための休業補償などはありません。

3⃣ 全身麻酔
画像2採取当日、まず手術室で仰向けになり、気管内挿管による全身麻酔が行われます。麻酔はだいたい 1~3時間くらいです。

●なぜ全身麻酔が必要なのでしょう?
全身麻酔は、安全な術中管理のために行います。
麻酔中、定期的に血圧を測定し、心電図モニターをとりつけて麻酔科医が厳重に監視を行うので、他の方法よりも、手術中の状態管理がしやすいのです。万が一救急の処置を行う必要が生じたときは、医師により適切な処置が行われます。

4⃣ 骨髄採取

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骨髄液は、骨盤を形成する大きな骨=腸骨(腰の骨)から注射器で採取されます。手術室でうつ伏せになった状態で、骨盤の背中側、ベルトの位置より少し下の腸骨に、皮膚のうえから専用の針を数か所(腸骨には左右数十か所)刺して吸引します。

●採取に伴う痛みについて
採取中は麻酔のため、痛みを感じませんが、麻酔から覚めた後に起こる痛みとしては、 以下のような症状が挙げられます。
・採取部位の痛み
・尿道カテーテル(必要な人のみ)抜去後の排尿痛 ・頭痛
・気管チューブ抜去後の喉の痛み など

また、吐き気や、37~39 度の熱が出たりするなど、症状やその程度については個人によって様々です。
ほとんどは通常 1~2 日ほどでおさまりますが、採取部位の鈍痛は1~7日間残ったという方が多いです。
万一採取によりドナーに健康被害が生じた場合は、骨髄バンクが加入する保険より、補償が行われることがあります。

(2)末梢血幹細胞採取(入院期間:約4泊5日~6泊7日)

1⃣ 注射(G-CSF)

末梢血

ドナーに G-CSFを3~4日間注射することにより、白血球が増え、本来骨髄の中にしか存在しない造血幹細胞が全身の血液に流れ出します。 

●注射の副作用について
骨の痛み(腰痛、関節痛等)、頭痛などがあります。
ほとんどが一時的なもので、鎮痛剤の処方が行われます。

2⃣ 入院
現在、多くの施設では、G-CSF の注射を入院で行い、採取を含め4泊5日~6泊7日程度の入院となります。一部の施設では、G-CSFの注射を通院で行い、2~4日間通院した後、1泊2日~3泊4日程度の入院で採取となります。

●なぜ入院が必要なの?
採取時には、しびれや倦怠感といった症状が出る可能性があります。採取終了後、止血の確認も含め、安静にするなど、慎重な経過観察が必要となるためです。

3⃣ 血液成分分離装置による採取
G-CSFの注射4日目または5日目に、末梢血(全身を流れる血液)に流れ出した造血幹細胞を専用の機器を使って採取します。腕(※4)に針を刺し、血液中の造血幹細胞だけを取り出し、残りの血液を戻します。採取した量が不十分な場合は、翌日2回目の採取を行います。所要時間は約3~4時間で、その間、両腕は動かせません。

末梢血幹細胞採取


※4:万一、腕から採取できない場合は、足の付け根の血管から採取することもあります。


6. 提供後はどうなるの?

採取後の経過

骨髄提供、末梢血幹細胞提供とも、採取後は通常数日内で退院し、日常生活に戻ることが出来ます。 退院後は定期的にコーディネーターがドナーの健康状態について、電話などでフォローアップを行っていきます。

以上が、骨髄バンクでの提供の大まかな流れになります!
皆さん、ご理解いただけましたでしょうか?ここで、改めて骨髄バンクでの「提供」の流れについて大事なポイントをお伝えします。 

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・骨髄バンクでの「提供」とは、健康なドナーから造血幹細胞
(血液のもとになる細胞)を採取し、患者に移植することをいう。
・HLA 型が患者と適合したドナー登録者が、ドナー候補に選ばれる。
・最終同意には家族の同意が必要。
・最終同意以降の提供意思の撤回はできない。
・提供前に健康診断を受け、問題がなければ提供に進む。
・提供の方法としては、骨髄提供、末梢血幹細胞提供の 2 種類がある。
・それぞれの提供方法には特徴があり、事前にどういうものか理解しておくことが大切。
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もし上記のこと以外で、骨髄バンクでの「提供」について不明な点などがあれば、日本骨髄バンクの問い合わせ専用ダイアル(03-5280-1789)にご連絡ください。

これを読んで、骨髄バンクにドナー登録をしている・していないに関わらず、少しでも皆さんが提供について前向きに考えてくださること、そして今、白血病といった様々な病気で苦しんでいる患者さんが 1 人でも救われることを心から願っております。

長くなりましたが、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

(おわり)


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