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嫉妬という「自己中心的な公平要求感覚」。 #Envi Ⅰ |進化心理マガジン「HUMATRIX」

" 妬みは、自分が持っていないものを他人が持っていると感じた時、攻撃性を増す。" ────トーマス・マン『ブッデンブローク家の人々』

" わが血は嫉妬のために湧きたり。われもし、人の幸福をみたらんには、汝はわれの憎しみの色に覆わるるをみたりしなるべし。" ────ダンテ 『神曲-浄火編』


# 何のために嫉妬するの? 


嫉妬/Envy」。────それは、自分より優れた人間に対する、妬み嫉み(ねたみそねみ)の気持ち。

嫉妬/エンヴィーは「自分にとって重要な領域で他者が優位に立っていると気づいた時にしばしば感じられる、不快で苦痛な感情」と定義されている。心理学者によれば、嫉妬/エンヴィーは敵対的な性質を帯びており、そのコアには劣等感があるという。*R.Smith (2008)

感情に関する考察は心理学者によって始められたわけではない。今から2000年以上も昔に「嫉妬は、他人が持っているものが自分自身に欠けているという信念から生じる」と哲学者アリストテレスは書いている。

もちろん、嫉妬について書かれた最古の文献が古代ギリシャの時代のものだからといって────(そうなの?そうらしい、知らんけど。知らんけど、というのは、オレは「感情の文化史」などというアホくさいテーマを探求する気はないからだ───文学部ではずいぶんとお盛んなようだが、感情の起源とは文化ではなく遺伝子にある)────だからといって、嫉妬という感情が古代ギリシャで生まれたとは誰も考えない(ブランクスレート主義者を除く)。

嫉妬という感情は、人類社会に1万年前、いや5万年前、いいや10万年前?否、おそらくそれよりはるか太古の昔からずっと存在しつづけており、ならばこれはヒトという種の生物学的本能に刻まれたものだ。


人類学者のジェームズ‪·‬スーズマンは、現存する狩猟採集民の、非常な嫉妬深さを指摘している。狩猟採集社会では、嫉妬が重要な社会的機能を果たしていた。そのことについては次回#Envi ⑵で詳しく書こう。*J.Suzman (2018)


さて、進化心理学者は、ヒトは何のために嫉妬するのか?と考える。この「何のため」とは、嫉妬という感情システムの機能、その機能が果たす生物学的目的だ。

もちろん生物自身、サピエンスその人は、「何のため」かを知らずに嫉妬する。では「何のため」かを生物自身が脳に表象していなければ目的は存在し得ないのか?

Noだ

感情とは、ただ爆発する以外に何の機能も持たない爆弾ではなく、心のサバイバル・ツールとして進化したシステムだ。

あらゆる道具(ツール)には〈使用目的〉が備わっている。


たとえばトースターという装置には〈パンを焼く〉という使用目的があり、心臓という装置には〈全身に血を送る〉という使用目的がある。


────同様に、進化心理学は〝感情システムの目的〟を探求する。

目的とはふつう「意識された目的」のことを指すので、正確には"亜-目的"と呼称すべきかもしれないが、とにかくあらゆる感情システムには、それぞれ進化上の目的/evolutionary purposeが備わっているのだ。

たとえば、恐怖の目的とは?
生物の生存を脅かすものから生物を逃すことだ。

もちろん生物自身は「何のため」かを知らずに恐怖するし、「なぜ怖がるの?」とヒトという生物に聞いても、脳のインタープリターモジュールを用いて作り出された、後からとってつけた説明しか期待できない。

恐怖の目的:「生物の生存を脅かすものから生物を逃すため」を答えられるのは、進化心理学徒だけだ。

それでは、嫉妬の目的とはなんなのだろう?

もちろん生物自身は「何のため」かを知らずに嫉妬するし、「なぜ嫉妬するの?」とヒトという生物に聞いても……(ry

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