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有性生殖システムは非モテオスを排除し遺伝子プールの質を“改善”する──「セックス獲得競争」の螺旋 (ダーウィンの悪夢、生存者が手にするボーナス、群淘汰の誤りとエンハンスメントの「正当化」) #sese ⑵ |エボサイマガジン

I travel not to go anywhere, but to go.私はどこかへ行くために旅をするのではなく、ただ行くために旅をするのだ。)” - Robert Louis Stevenson

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# ダーウィンの悪夢

ダーウィンの進化理論は、生物個体と子孫の「差異」に目を向けることから始まった(「みんな違ってみんないい」)。

生物個体は、同じ種であってもそれぞれに“個性”がある。これを「コンピータンス/有能性」の違いと呼ぼう(有能、無能、という言い方は優生学的な香りを放つために一部の人々はアレルギー反応を起こすかもしれないが)。

そのコンピータンスの違いによって、必然的な結果が生まれる───他の個体よりも生存する確率が高い者、繁殖する確率が高い者が生じるのだ。

自然界はつねに競争の場だ(これは生物界に限らず「崩壊した者は消え去る」というルールが星々のような宇宙レベルで成り立っている)。物質界と異なり生物界には「遺伝」があるので、競争上のわずかな差が世代を超えて蓄積され、変化が緩やかに増大し、新しいものが生まれる────。

────以上のように、

ダーウィンの進化理論は、「個体差」が原動力になっていた。


多種多様な個体が存在することで、その「差」が進化エンジンの燃料に利用されるのだ。

ダーウィンの父・ロバート=ダーウィンは医師だったが、同時に大地主の畜産家でもあった。畜産家は短い期間で家畜の形質を変えることができた。その際に利用されたのが「個体差」だったのだ。

たとえば、イヌの多様な方向への“進化”は、人間によって人為選択(どれとどれを残してセックスさせるかを決める)されて生じたものだが、これはバリエーション豊かな「差」を人間が生み出し、存分に活用してきた結果だ。


もちろん人間はそれぞれ「どんなイヌを作りたいか」が違っていた。番犬として役立つ強くて凶暴な奴をつくりたい者もいれば、愛玩動物として、いわば「人間の子ども」に似せた特徴を持たせた個体をつくりたい者もいた。

しかし──、とダーウィンは考えた。


人間がイヌにやっているように、「変異を促す方向で」どのオスとどのメスをつがわせるかを自然が決めることは可能だろうか?

もし、オスとメスがつがうセックスという仕組みによって、個体差が薄まっていく=平均化されていくような効果が生じるとしたら??


(たとえば、白人と黒人の間に生まれた子供はブラウンの肌を持つようになる可能性が高いだろう、これは差が「平均化」されているようにも思われるが・・・・)

ダーウィンは恐怖した。


────もし、セックスという仕組みによって、全体として個体差が薄まっていく=平均化されていくような結果が生じるようであれば、「差」をエサにして駆動するダーウィンの進化エンジンは、その時点で停止してしまうだろう。


────この「ダーウィンの悪夢」はしかし、『種の起源』の時点ではまだ世に出ていなかった概念である、メンデルによって発見された「遺伝子/Gene」のアイデアにより杞憂のものとなる。

進化生物学者のジョシュ・ミッテルドルフとドリオン・セーガンは、著書の中で以下のように述べている。

“ ダーウィンの最大の悪夢──多様性の喪失──を解決する方法は、メンデルの因子(遺伝子)の中にあった。セックスは因子を組み替えるが、因子を変えたり、弱めたり、薄めたりはしない。外見のレベルにおいて形質が平均化されたように見えることがあっても、それぞれの形質のポテンシャルはそのまま集団に残る。”

“ 多様性の喪失どころか、セックスには形質のさまざまな組み合わせを生み出す力がある。メンデルの因子ゲームは、そっくり同じ個体はあり得ないということを保証している。セックスは多様性の味方なのだ。”

(ジョシュ‪·‬ミッテルドルフ, ドリオン‪·‬セーガン著、矢口誠訳 『若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間』 集英社、2018年)


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# 有性生殖が勝利した理由


────「性」の誕生は、不可解なものだった。

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