新護憲神奈川 主体的平和戦略② 「9条護憲の再検討・再構築と国連軍・多国籍軍」
前回①の続き
6. (日米安保体制を改編する)そのためにこそ9条護憲運動は力を注ぐべきである。その主張を市民団体、労働組合、政党に浸透させる努力をすべきである。
この間、防災省(あるいは災害対策省)の創設については、同意見・賛同意見はいくつかあったが、自衛隊解体、日米安保条約廃棄については従来の主張を超える目新しい主張を目にすることができなかった。
このような状況の中で、2023年4月に「9条護憲論の再検討・再構築を」というメールが私のもとに届いた。
発信元は「完全護憲の会」の草野好文さん。彼とは20年来の付き合いがある。「かながわ憲法フォーラム」で共に活動してきたが、ここ数年は事情あって私の活動が鈍くなり、疎遠になっている。彼は数年前から病と闘っている状態にあるが、彼の並々ならぬ決意の表明として真摯に受け止め、論議の対象にしたい。
現在の日本の軍事力増強と現憲法をめぐる改憲の動きに心を痛め、渾身の力を込めて私たちに訴えているメールであった。
同世代で伊豆で一人暮らしをせざるを得なくなった私にも、その切羽詰まった気持ちが強く受け止められる。
彼の主張を紹介しつつ、私の思考を少しでも前に進めると同時に、9条の精神を活かして日本・世界の平和を目指して活動している人々との論議を創り出していきたい。
A4・16ページの草野さんの全力を注いだ主張で、簡単には紹介できないがその小見出しを列挙してみると、
① ウクライナ・ロシア戦争の展開に勢いづく改憲勢力
② あらためて憲法9条が問われている
③ 9条護憲論の硬直と揺らぎ
④ 9条が問われている焦点は何か
⑤ ウクライナ・ロシア戦争が提起した重点・論点
⑥ 憲法9条をいかす道
⑦ 世界がどうあるべきかを含めて考える
⑧ 世界は紛争を抑止する「公的」な警察力・軍事力を必要としている
⑨ 「自衛隊を国連の指揮下に」はその一歩
⑩ 抑止力強化の「恐怖の均衡」は必ず破れる
⑪ 問題は日本の選択にある。
⑫ 9条「絶対平和主義」理解の弊害
⑬ 9条護憲の再検討・再構築を
となっている。
草野さんは、①で「核共有」「敵基地攻撃」「防衛予算GDP2%超」などの主張と同時に世界の現実とかけ離れた空論の喧伝が蔓延している状況を指摘し、②で護憲勢力が適切な対応が出来ていないことを指摘している。福島社民党党首や志位前共産党委員長の発言を取り上げ、一連の発言が多くの国民に納得できるものになっていないと主張。とりわけ、志位前委員長の「自衛隊活用」論には手厳しい。私も同感である。
③では、「他国へ侵略ができないようにするための条項が9条なのです」という福島党首も、ロシアの軍事侵攻で不安を抱えている多くの国民を前に硬直した9条の意義の強調にとどまっていて、納得させるものではない。「9条の会」他の護憲関係にも共通しているのでは、と指摘している。
誌面の都合で全体的に紹介できないのが残念だが、私と認識が共有できる面が多い。⑤で「独裁政権」「軍産複合体」の問題を取り上げ、⑥で「9条護憲派は、こうして9条が死滅させられてしまう前に、この9条の『戦争放棄』の理想を未来に向かって現実化し得る道筋を何としても探しださなければならない。そのためには、現在の日本国民の多くが、憲法9条を維持しつつ、かつ、「自衛隊は必要だ」「自衛のための必要最小限の軍備は必要だ」とする声に正面から向き合い、この声を生かしつつ、いかにしたらこれを9条の理想と両立させることが出来るか、その方法を探り出す必要があるのである」
彼の主張の焦点は、9条護憲運動の硬直した「絶対平和主義」を乗り越え、自衛隊を国連の指揮下に提供すべきだということだと思う。
国連は、戦勝国が主導して作り上げた組織とは言え、「平和団体」と称される国際組織として創設された。平和を維持するための軍事組織として「国連軍」が想定されている。しかし、東西冷戦の激化で「国連軍」がアメリカ主導の「多国籍軍」の一翼を担うように方向転換することが今の「国民」に最も説得力があると主張している。
かつての「平和基本法」論争当時を想い起こし、今、「9条を活かす」という戦略の全体像を考え直す時である。
私の提起してきた「自衛隊半減」「防災省の創設」もその実現のための戦略的思考が不十分である。今後、論議の柱をしっかり立てて再度、提起していきたい。
現在、多くの人が取り組んでいる9条護憲運動の問題を指摘しつつ、(今までの新護憲神奈川の総括もかねて)新しい展望を念願している。
9条を知らせ、広める、9条について学習を深め自分の考えを進化させる、運動を担う仲間を増やす、多くの組織の結集を図る、憲法の制定過程・国会での論議、憲法学者間での論争、平和運動の歴史、権力の自衛隊・日米安保に対する政治的判断の変遷、現在の政権の改憲構想、米国の日本への要求内容、世論誘導されている「国民」の意識、労働運動の衰退と「国民」の暮らしの実態・・・どれ一つ蔑ろにしていいものはない。多くの課題の前に、9条護憲の運動を国会議員の3分の1獲得のための、あるいは政権交代のための選挙運動に収斂させていいのだろうか。
当面、軍事基地の新設・増設、兵器の爆買い、軍事費の拡大に反対しつつ、私たちの運動の将来的発展のための「戦略」を総力を挙げて構築しなければならない時代に来ている。最大限の努力をしていきたい。
➡次回 主体的平和戦略 ③に続く
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