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そして僕らの春が来る~Spring! Spring! Spring!~

 我が最愛のバンド、UNISON SQUARE GARDENは、相変わらず精力的にライブを敢行してくれている。年末のカウントダウン配信に続いて「いつものスタイルで」という趣旨で「Normal」と銘打たれたツアー。残念ながら遠方のため参戦はかなわず(でも円盤は出るのでそれを心待ちにしている)悔しい思いをしたのだが、間髪を入れず彼らは4月から次のツアーを繰り出してきた。 Revival Tour 「Spring Spring Spring」。過去(2012年)に行なったツアーの再現である。ま〜た面白いことするな~と思ったのだが、当初、参戦は二の足を踏んでいた。地元には来るのだけれど、ライブハウスかぁ……前にも書いたけれど、老体にはちょいきついかもしれない。日にちも、いろいろ予定が決まっている週の月曜日。いつも一緒に参戦する娘も、遠方に住んでいるし(車で2時間)年度初めの忙しい時期だし平日だし、「今回は無理かなぁ……」とのこと。諸々あって、先行予約には申し込まなかった。
 しかし今回はリバイバルなので、セットリストがもう公表されている。つい調べてしまった。年に1回新しいアルバムが出て、そのたびに好きな曲が増えてゆくのが私にとっての彼らの音楽である。だが、まだ出逢っていない頃のライブなのに、好きな曲だらけだ! しかも新しめ(とはいってもかれこれ5年以上になるけれども)のファンの私にとっては、若干、レアな感じのセトリ。やばい。この曲もあの曲も聞きた過ぎる。どうしよう。
 そんななか、4月のシフトが出た。なんと、ライブの日を含めて土日から4連休入ってる。これは「参戦せよ」というお告げですかお空の上のほうの方?! おりしも今回不参戦を決めた娘から、「ライブに行けないからせめてグッズで貢いだ!」という写真が送られて来た。おおーデイルくんアウターかわいいじゃん、などとひとしきりLINEを交わした後、水を向けてみた。
「どうよ、参戦しちゃおうかな?」
「行けるものは行っといたほうがいいと思います~でも一般販売ないかもよ」
 娘の言葉に背中を押されて、参戦決意。だが調べてみると……ほんとだ。一般販売行わないらしい。しょんぼり。いやしかし、直前に機材席開放とかいってもう少し出るかもしれないし。一縷の望みを託して公式をまめにチェックしていたら、出ましたリセールチケット情報! 迷わずエントリー、そしてめでたくチケットを勝ち取ることができた。リセールしてくれた人ありがとう! このご時世、きっとものすごく残念な思いをしながら参戦をあきらめたのではないだろうか。その思い、受け取った。私があなたの分まで、彼らに声援を送るよ!

 こうして初のひとりライブハウス参戦とあいなった。しかし、ここ1か月ほど、世間には何度目かの疫病の波が訪れつつある。特に我が街は首都圏より先に「おふれ」が出る始末。大丈夫か? 来てくれるのか? できるんだろうか、ライブ。当選メールの入った携帯を握り締め、ひたすら気を揉んだ。主催者さんの「予定通り開催いたします」のアナウンスがどれだけ嬉しかったことか。ありがとうノースロードミュージックさん。受け取ったチケットの画像を送ったら、娘からLINEが戻ってきた。
 「我々の好きなものを楽しむ且つ守る経済活動です どうぞよろしくお願いします」
 わかってる。任しとけ。

 当日、入口に掲げられたポスターには「THANK YOU SOLD OUT!!」の文字があった。よかった、チケット完売したんだ。それだけでもう嬉しくなる。居並ぶ人たちは距離をとり、必要以上に騒ぐことなく、係の方の指示に従って、粛々と入場する。ライブに行くたびに思うことだけれど、やっぱりUNISONの聴衆はみんなお行儀がいい。
 新しい生活様式のガイドラインに沿ったライブハウスでの公演がどんな感じになるのか、あまり想像できないまま会場に入った。床には充分に間隔を空けて貼り付けられた数字が並ぶ。自分のチケットにある番号の上なら、手をあげてもジャンプしてもOK。マスクは着用、声は出さない、飲食はダメ(ドリンクは入場時に料金を払い、終演後に帰りながら受け取る)以上がお約束。
 前後左右が開いているので、かつてライブハウスに参戦した時経験した、あの後ろからどんどん押されて首が死滅した(笑)なんてことにはならなそうだ。思いのほか快適である。しかもなかなかの良き位置。それにしてもこの番号札を床一面に貼るだけでも大変な作業だ。しかも、キャパ1,500人くらいのライブハウスなのに、1階の床に貼ってある番号は500番にも満たなかった。2階のシート席を合わせても、かなり少ない人数に抑えている。国のガイドラインにのっとる形で行うと、この定員になっちゃうんだ。いくらSOLD OUTでも、きついよねぇ、と思う。
 さらに場内では「必ずダウンロードしてください」とアナウンスのあったCocoaの確認、検温、消毒、チケットのチェックなど、たくさんのスタッフさんが忙しく動き回っている。その方たちのおかげで、今日我々は音楽の恩恵にあずかれるのだ。ありがとうございます――心の中で手を合わせた。
 やがて場内の照明が落ちて、『絵の具』が流れ始める。貴雄さん、田淵さんの順番で、いつものように登場する。そして最後に出てきた斎藤さんは、暗闇の中で高く右手を突き上げて、それから深々とお辞儀をした。

 いよいよだ。光と音がほとばしる。始まった! セットリストはとっくにバレているので、どんどん言っちゃうぞ!

 のっけから『フルカラープログラム』、イントロでもうトップスピード。ライブハウスに虹がかかる。今日の斎藤さんのシャツは安定の黒だけど、右側に縦に太めの市松模様の切り替えが入っていてオシャレ。
 続く『プロトラクト・カウントダウン』は生ではお初。うわあぁ、めちゃくちゃカッコイイ! これと『マスターボリューム』の2曲は、ライブがCDの100倍カッコイイですよ!
 『空の飛び方』、BeeSideの時聞けなかったやつ。『スカーズデイル』、ライブでは1回しか聞いたことないやつ。どっちも大好きなので、聞けたのが嬉しくって、『空の飛び方』なんかぴょんぴょん飛んでしまった。あの曲、なんか跳ねたくなりません?
 閑話休題。「ずっとホール公演だったから、ライブハウスは久しぶり。会場が違うと音も違って、なんかライブハウス、やっぱいいですよね」と言う斎藤さんがすごくうれしそうで、こちらも嬉しくなる。「そうですか、私たちもとってもいい感じです!」とみんなで拍手。
 続いては、今まで唯一、このツアーでだけやったという、噂のメドレー。斎藤さん、「MCも当時のまんまで行きます!」と豪語して、開口一番思いっきり噛みました。そして「あ~違う違う、もう一回!」と照れまくる。スン、として全くフォローに入らない田淵さんと貴雄さん。声出しOKなら大笑いのとこだった。も~う、「ついてきてちょーだいっ!」なんて、煽る系のいつも言わないようなこと言おうとするから~。若かったんですね。ご愛敬。でもなんか得した気分。いいもの見せていただいた。
 メドレーは『ライドオンタイム』でスタートして、『ガリレオのショーケース』で締める、緩急織り交ぜたナンバーで楽しかった。スーパーガールとコーヒーカップはやっぱりかわいい。余談ですが田淵さんの曲、女子が唄うとすごくかわいくなると思いませんか?(『Thank You Rock Band!』のLISAちゃんとバスピエさんでそう思った)
 メドレー終了後、いきなり投入される『シャンデリア・ワルツ』。当時は新曲だったらしい。今ではライブの定番曲なので、イントロが始まった瞬間、歓声はないけどフロアのテンションがドカン! と3段階くらい上がったのが空気で感じられた。その後、『クローバー』と『シュプレヒコール』でゆっくり、しっとり聞かせてくれる。そして再び大好きな(何曲有るんですか大好きな曲、って? いっぱいあるんです!)『cordy beats』。ライブで聞きたかったやつ。聞けて嬉しい! そして畳みかけるようにオリオンをなぞり、場違いなハミングバードが飛びまわり、ひとまずステージは終了。でも過去セットリストそのままやるなら、ありますよね、アンコール。拍手は鳴りやまない。

 斎藤さんが言っていた。「(この街は)今なんか大変みたいだけど、僕たちは相変わらず曲を作っていると思うので、また来たときは遊びに来てください」優しい……今日諸事情であきらめた方たちに届けたいこの言葉。大丈夫だって。また来てくれるって! だから次こそは、あなたも、逢いに来ることができますように!

 怒涛のアンコール3曲。ひとつひとつからメッセージが伝わってくる。『アイラブニージュー』(大好き、聞きたかった!)の「今夜のライブも最高ですわ!」、『サンポサキマイライフ』の「心配ない、大丈夫さ」、そして最後にトドメの『kid, I like quartet』で「as you like(キミのお好きなように)!」
 ――終演。場内指示に従って、最初と同様に粛々と退場する。満たされた気持ちを抱いて帰路につく。あー、楽しかったあ。
 今宵の春(spring)の宴はこれでおしまい。彼らの届けてくれた、とめど溢れ、尽きせぬ音の泉(spring)に、私たち聴衆は身をゆだね、揺れ、手を振り、跳ねた(spring)。「SpringのSpringでSpringな」ひとときだった。


 昨年の着席ライブ以来、半年ぶりのライブは、始まってしまえばあっという間だった。いつも通りの通常運転。貴雄さんスティック回す回す、田淵さん縦横無尽に大暴れ、斎藤さんはギターをかき鳴らし、彼らはステージの上で好きなように好きな音楽を目いっぱい楽しんで演奏していた。10年近く前からこんなにかっこいいライブをしていたとは……UNISON、恐ろしい子。しかも今聞いても全然色褪せず、なんならその時より数倍かっこよかったかもしれない。ほんとうに幸せな時間だった。

 後日、「ライブ、あったのよ!」と話したら、仕事仲間に言われた。
「いいなあ、推し(のバンド)が来てくれるんだもんね」
 彼女は去年確保したけれど中止になってしまったライブのチケットを未だに払い戻せずにいる。手放してしまったら次の時にチケットが獲れるかどうかわからないからだという。そのバンドも配信ライブなどはやってくれているのだけれど、「配信はDVDとあんまり変わらないからねぇ、やっぱりライブが聞きたいのよ」と言っていた。その気持ち、わかる。そして、来てくれることのありがたさ、今回のライブのために、たくさんの人が動いてくれたありがたさを、しみじみと噛みしめる。

 改めて、来てくれたUNISONの3人と、尽力してくれたスタッフの皆さんに、心からの感謝を。来てくれてありがとう。ありがとう。そしてありがとう。大事なことなので3回言いました。

  このツアーが終わったら、次は夏をはさんで秋ごろから、去年出た一番新しいアルバムのツアーが始まる予定だそうだ。その頃世界はどうなっているだろう。先は見えない。でも彼らはきっと、音楽を鳴らし続けるだろう。その時が来たら必ず参戦できるように、諸々気を付けて日々を過ごしていこう。まだライブハウスでも参戦できそうだし(体力的に)。

 絶対に、また逢いにゆく。

 その日を楽しみにしてる。


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