第1部 蒼い想い 洋祐は、舟に立ちながら忙しく切符に鋏を入れている改札員の背後で、何故か立ち止まった。車の行き交う目白通りを睨むと、彼は静かに顎を突き出し、深く息を吸った。そして再び歩み始め、舟の平板へ切符を軽く放り、眩しく視界の開けた外界に出た。 どんなに心待ちにしていただろうか。最早何ものにも捉われず、過多な遠慮は一切無用、そして自分が自分である為の、ここが第一歩なのだ。そんな希望に満ちた思いだった。 千石町に在る工業高校を、やっとの思いで卒業したのが半月前だっ