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テック・ストレスから身を守る方法

エリック・ペパー
サンフランシスコ州立大学ホリスティック医療研究所教授。博士(心理学)。ストレスマネジメント、バイオフィードバック、ホリスティック医学の国際的権威。

リチャード・ハーヴェイ
サンフランシスコ州立大学ホリスティック医療研究所教授。博士(健康心理学、カリフォルニア大学アーバイン校)。

ナンシー・ファース
「Health Writers' Group」会長。医療ソーシャルワーカー、修士(公衆衛生学、カリフォルニア大学バークレー校)。


1.テック・ストレスの正体とその対策

現代生活において、テクノロジーはもはや不可欠な存在です。パソコンやスマートフォン、インターネットは、私たちの生活を飛躍的に便利にし、効率的にしています。しかし、その一方で、これら最新技術の進展が私たちに悪影響を及ぼしていることをご存知でしょうか?そう、それが「テック・ストレス」です。

テック・ストレスとは何か?

「テック・ストレス」とは、テクノロジーの過度な利用により引き起こされるストレスのことを指します。例えば、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用がもたらす「腰痛」「肩こり・首痛・頭痛」「手首の痛み・しびれ」、さらには「メンタル疲労」「不眠症」などが挙げられます。特にアメリカでは、腰痛症にかかる医療費が毎年500億ドルにも上り、オフィスワーカーの3人に1人が腰痛を経験していると言われます。これらの症状は、長時間座りっぱなしの仕事が原因です。

デスクワークで注意すべき5つのポイント

  1. 人間工学的な要因は一部にすぎない

  2. 痛みを感じるまでは筋肉の緊張に気づかない

  3. 座りっぱなしは喫煙と同じく、生活習慣として好ましくない

  4. 身体の緊張には副作用がある

  5. 精神的ストレスも筋外傷の原因のひとつ

特に注目すべきは③の「座りっぱなしは喫煙と同じく、生活習慣として好ましくない」という点です。人間は50万年以上もの間、地球上を歩き回る狩猟採集民として進化してきました。つまり、私たちの体は現代のように動かずにじっとしている環境には適していないのです。十分な運動ができていないと、身体に緊張が蓄積され、筋肉や神経に悪影響を与え、不眠症や疲労などの慢性的な痛みを引き起こします。

テック・ストレスから身を守るために

このような「テック・ストレス」に対抗するためには、意識的に身体を動かすことが重要です。デスクワーク中でも、こまめに立ち上がりストレッチをする、適度に休憩を挟むなどして、身体の緊張をほぐすことが必要です。

2.睡眠の力

現代の生活で避けて通れない「テック・ストレス」。スマホやパソコンを手放せない私たちが、そのストレスから解放され、心身ともに健康を保つためには、何をすればいいのでしょうか?著者が強調するのは、「睡眠」です。広義では、日中に使われた体内物質を合成し、回復させる重要な時間であり、睡眠中には防御免疫細胞である「マクロファージ」が血流を巡回して微生物やがん細胞を処理したり、身体のメンテナンスや掃除を行ったりします。

しかし、この大切な睡眠を妨げるのが「慢性不眠症」。その症状は主に3つ、「寝付きにくい」「夜中に目が覚める」「早朝に目が覚める」です。良質な睡眠を確保するためには、適切な環境作りが不可欠です。

著者は「睡眠のための30のテクニック」を紹介していますが、ここでは特に「光の最適化」に焦点を当てます。現代社会ではコンピューターやテレビ、スマホなどから発せられるブルーライトが問題視されています。ブルーライトは睡眠ホルモンの分泌を妨げ、入眠を困難にするため、寝る30分前にはこれらのデバイスを避けることが推奨されます。

さらに、ブルーライトをブロックするメガネの使用や、電子書籍ではなく紙の本での読書も有効です。そして、重要なのは「概日リズム」を整えること。毎晩ほぼ同じ時間に就寝し、朝日を浴び、室内照明を適切に利用することで体内時計をリセットし、スムーズな入眠をサポートします。

3.テック・ストレスを解消するための最適な椅子と机の選び方

現代のテクノロジー社会において、私たちは長時間パソコンの前に座りっぱなしで仕事をすることが日常茶飯事となっています。その結果、知らず知らずのうちにテック・ストレスに悩まされることが増えているのです。その原因の一つとして、「歪んだ姿勢」が挙げられます。適切でない姿勢での長時間作業は、筋肉の疲労や不快感、さらには外傷を引き起こすこともあります。そこで、今回はデスクワークにおける「椅子」と「机」の選び方についてご紹介します。

理想的な椅子の調整方法

まず重要なのが、「椅子」です。適切な椅子の選び方と調整方法を知ることで、姿勢の改善が期待できます。以下のポイントを参考にしてください。

  • 座面の高さ:理想的な座面の高さは、股関節と膝関節の角度が90~100度になるように調整します。この角度を保つことで、自然で負担の少ない姿勢を維持できます。

  • 座面の角度:座面の前部が少し下に傾くように調整すると、腰にかかる負担を軽減できます。膝裏と座面の前端との間に4~5センチの隙間ができるのが目安です。

  • 座面の広さ:椅子の背もたれにしっかりともたれかかることができるよう、奥行きのある座面を選びましょう。

昇降デスクの魅力

次に「机」についてですが、著者は「昇降デスク」を強くおすすめしています。昇降デスクを使うことで、一日の中で座ったり立ったりしながら作業をすることが可能となり、これが疲労感の軽減と生産性の向上に繋がります。

昇降デスクのメリット

昇降デスクを使用することによって得られる多くのメリットを見てみましょう。

  • エネルギーレベルの増加・疲労の減少:立ち座りの動作がエネルギーを活性化し、疲労感を軽減します。

  • 集中力の向上:姿勢を変えることで、集中力が持続しやすくなります。

  • 生産性向上:タイピング作業の効率が上がり、仕事の生産性が向上します。

  • 体循環の改善:血液やリンパの流れが良くなり、筋肉の老廃物排出が促進されます。

  • カロリー消費と健康改善:カロリーをより多く消費し、体重減少や糖尿病リスクの低減にも寄与します。

理想的な机のスペック

具体的な机のスペックとしては、以下が理想的です。

  • 天板のサイズ:奥行80×幅120㎝。

  • 作業台の高さ調節範囲:60~82㎝であれば、ほとんどの利用者に適応可能。

  • 昇降デスクの高さ調節範囲:62~120㎝が理想です。

デスクワークの環境を整えることで、健康的かつ効率的に仕事を進めることができます。

まとめ

テック時代…。常に情報にアクセスできる状況が、仕事やプライベートの境界を曖昧にし、休息を妨げます。しかし、テクノロジーが生活の一部となった現代では、テックストレスとの共存が必要です。適切なデジタルデトックスやメディテーションなどの方法でバランスを保ちながら、テクノロジーを活用し、効果的にコントロールすることが重要です。

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