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「グレー企業」になりなさい! 中小企業が生き残るための「究極の経営戦略」

長尾雅昭
特定社会保険労務士・税理士
長尾事務所所長・労働保険事務組合多摩同友会会長


1.新しい中小企業の在り方

なぜ「グレー企業」を目指すべきなのか?

「グレー企業」とは、白(ホワイト)と黒(ブラック)の間の存在。従業員に優しく、法律を遵守しつつも、会社の経営を守る新しい企業モデルです。

ブラック企業のリスク、ホワイト企業の理想

「ブラック企業」のレッテルを貼られてしまえば、顧客は離れ、売上は急落します。しかし、財政的に余裕のない中小企業が社員の望む通りの待遇を提供することも難しい。そこで、社員の待遇を改善しながら会社を守る「グレー企業」が理想的なのです。

著者の提案する「グレー企業」の姿

著者は「大手企業のように万能ではないけれど、法律に定められた最低限の優遇を確保する。会社が健全に経営できる範囲で、社員の立場を尊重する」ことが重要だと説きます。残業代や有給休暇だけでなく、育児休暇や介護休暇、病気での長期欠勤など、社員を尊重するための明確な決まりを作ることが求められます。

「グレー企業」への第一歩:就業規則の整備

多くの中小企業では、休日の規定、就業時間、給与、ボーナス、残業代についてはお互いに確認・合意していますが、有給休暇の日数や病気やけがの場合の休職規定などは、口約束やなんとなくの合意に留まっていることが多いのです。これが原因で、社長が苦境に追い込まれることも少なくありません。

就業規則で働く環境を明確に

働く環境を整えるためには、労働基準法で定められた「労働条件」と会社が定める「職場のルール」を具体的に決めておくことが重要です。賃金規定や休職規定をあらかじめ決めておくことで、いざという時に会社を守ることができ、社員にとっても明確な基準があることで安心して働ける環境が整います。

2.”人件費”を制する者はグレー企業を制す

就業規則を整備することは、グレー企業への第一歩です。しかし、それだけでは十分ではありません。次に考えるべき課題は「人件費」についてです。人件費とは、経営において基本中の基本ですが、ここにブラック企業とグレー企業の分岐点が隠されています

例えば、破格の値段で人気商品を大量に仕入れたとします。経営者としては、「必ず売れるし、売上も上がる」と期待するでしょう。しかし、その先に何が待っているかを考えたことがありますか?多くの商品を仕入れると、その分だけ営業や販売の人手が必要になります。さらに、流通にかかる手間や売れた際の伝票処理、追加対応など、見えない仕事が次々と発生します。

この時、「スタッフは喜んでやってくれるだろう」と安易に考えてしまうと、ブラック企業への道が開かれます。社員は「その分見返りがある」と期待します。ボーナスや残業手当など、何らかの報酬があるからこそ、無理を承知で働いてくれるのです。しかし、もし利益が予想通りに出なければ、社員は報われず、徒労感に苛まれることになります。

では、どうすれば良いのでしょうか?重要なのは、通常以上の労働を求める場合、その分の報酬を「常に考慮」することです。予定を超える仕事量が発生した際には、「同時に人件費も発生する」と念頭に置き、計算することが経営者には求められます。人件費を初めから頭に入れておけば、仕入れる量や利益の予測が立てやすくなり、在庫を適切に管理し、利益を確保することができます。そして、その分をボーナスとして社員に還元できれば、全てが「終わり良し」となるのです。

経営者が人件費を軽視せず、適切に管理することこそが、グレー企業への道を確実にする鍵なのです。社員の努力に見合った報酬を提供し、健全な企業文化を築くことが、長期的な成功への第一歩となるでしょう。

3.グレー企業が目指すべき理想のイメージとは?

企業経営において重要なテーマの一つに「会社のイメージ」があります。これは単に外部からの評判を指すだけでなく、社員が安心して働ける環境を意味します。健全な経営が成り立ち、社員全員が心地よく働ける会社は、利益創出と会社の発展を同時に実現できます。それは社員だけでなく、社員の家族にまで幸せをもたらし、ひいては社会全体の豊かさにも繋がります。

しかし、そのような理想的な環境を築くためには、経営者には明確な「本来の務め」が求められます。売上を伸ばすことに集中するのは当然ですが、それ以前にまず必要なのは「社員の士気を高めること」です。特に、社員が自らの給料を自分で稼ぐ意気込みを持てるような職場を作ることが鍵となります。

例えば、ただ社長の指示に従って働く社員と、アイデアを持ち、自ら積極的に行動する社員とでは、明らかに後者の方が生産性が高いです。社長が目指すべきは、こうした意気のある社員を育てることです。では、どうすればそのような社員を育てることができるのでしょうか?

答えはシンプルです。「社員が『社長になったつもり』で働ける会社」を作ることです。もし職場が社長のつもりで働ける雰囲気になれば、社員たちのやる気は自然と上がります。たとえ会社の規模が小さくても、一人一人が社長のように売上を伸ばし、成果を上げることに情熱を注げば、会社が発展しない理由はありません。

このように、経営者は社員の士気を高めるための職場づくりを率先して行うべきです。グレー企業もこの考え方を取り入れ、社員全員が生き生きと働ける環境を提供することで、健全な成長と社会貢献を果たせる企業へと変貌を遂げることができるのです。

まとめ

グレーゾーンは、黒と白の間にある曖昧な領域を指します。曖昧な領域ではありますが、この領域には明確なルールや規則が存在しないため、柔軟性や創造性が育まれます。さらにグレーゾーンがあることで、新しいアイデアや解決策を生み出され、異なる視点やアプローチが可能となります。これらを踏まえるとグレーゾーンは、多様性や柔軟性を尊重する社会や組織にとって不可欠な存在なのです。

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