入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則
佐藤 玲子
オフィスアールエス代表。店舗の見せ方アドバイザー
1.「見た目で勝負!魅力的な売場作りの秘密」
本書のタイトルにもある「入りやすい、選びやすい、買いやすい」売場には、一体どんな秘密が隠されているのでしょうか?そのカギは、私たちが日々意識せずに頼っている「視覚」にあります。
まず、著者が強調したいのは、人間が受け取る情報の9割が視覚から得られているという事実です。脳が五感から受け取る信号のうち、圧倒的な割合を視覚が占めているのです。例えば、スーパーで野菜を買う時、私たちは鮮度や色、見た目の良さで選びますよね。同様に、服屋で服を選ぶときも、見た目の印象がほとんど全てを決定づけています。
だからこそ、お店では何をどのように見せるかが重要になります。お客様が受け取る視覚情報によって「売れる・売れない」が大きく左右されるのです。では、具体的にどのようにすれば売れるお店になるのでしょうか?
まず覚えておきたいのは、お客様は「パッと見て判断したい」ということです。情報化社会の中で、私たちの脳は常に情報を処理し、判断を繰り返しています。そのため、脳は非常に疲れやすく、無意識のうちにパッと見て判断できるものを好むのです。
この現象は「インスタ映え」の大ヒットに象徴されています。一枚の写真で全てがわかりやすく表現されていることが人気の秘訣です。料理サイトも、かつては「写真+手順」でしたが、今では「短い動画」でまとめられています。短い動画の方が直感的に理解しやすいからです。
このように現代は「良いものなら売れる」のではなく、「見た目の良さで売れる」時代です。だからこそ、視覚の重要性をしっかりと押さえておく必要があります。魅力的な売場作りの秘密は、視覚に訴える工夫にあるのです。
2.”店”も見た目
商品を買うかどうかを決める要因として「見た目」が重要であることは、誰もが経験的に理解しているでしょう。しかし、その「見た目」が重要なのは、商品だけではありません。実は、お店そのものの見た目も、非常に重要な役割を果たしているのです。では、入りやすいお店とそうでないお店の違いは一体どこにあるのでしょうか?今回は、入りやすいお店に共通する4つの条件についてご紹介します。
1. 開放感
お店のドアが開いていたり、中の様子が見えたりすることで、お客様は「このお店は自分を歓迎している」と感じ、自然と足を踏み入れやすくなります。入口周りに物を置いたり看板を立てたりすると、入り口へのアクセスが妨げられ、「拒絶感」を与えてしまうため注意が必要です。開放感のあるお店は、まるで「どうぞお入りください」と言っているようなもの。お客様は安心して訪れることができるのです。
2. 照明
明るいお店と暗いお店では、どちらが入りやすいかは明白です。明るい照明は、お客様に安心感を与えます。特に効果的なのは、お店の奥を明るくすること。店全体が明るく見え、開放的な雰囲気が増します。明るい照明は、簡易的なものであっても大きな効果を発揮するのです。照明ひとつで、お店の印象が大きく変わることを覚えておきましょう。
3. 統一感
人間の脳は統一感のあるものに惹かれる性質があります。陳列棚を揃えたり、商品を整然と並べたりすることで、お店全体に統一感を持たせることができます。POP広告も同じ形式で揃え、同じ高さに掲示することで、統一された印象を与えられます。乱雑な印象を与えると、お客様はどこか居心地の悪さを感じてしまうかもしれません。統一感のあるお店は、清潔でプロフェッショナルな印象を与え、お客様を引き寄せます。
4. 動き
スタッフが店内で動き回っている様子が見えると、お客様は入りやすくなります。なぜなら、「自分が注目されにくい」という安心感があるからです。逆に、店内に動きがないと、「自分が注目されるのではないか」という不安が生じ、入りにくくなります。また、動きが見えることで、お店が繁盛している印象を与えられるため、お客様はその活気に誘われて入店することが多いのです。
このように、入りやすいお店というのは、見た目の良さだけでなく、いかにお客様を安心させ、警戒心を解くかがポイントです。開放感、照明、統一感、そして動き、この4つの条件を満たすことで、お店はもっと魅力的になり、多くのお客様を引き寄せることができるでしょう。
3.買ってもらえる陳列
お客様が店舗に足を運んでくれた。それだけで満足してはいけません。最終的な目的は、商品を購入していただくこと。ここからが本当の勝負です。そのカギを握るのは、ずばり「陳列方法」です。
著者が重視するのは、商品をいかに見やすく、選びやすく陳列するかという点です。それが売上に直結するからです。そこで、著者が提唱する陳列の基本ルール、「整列させる」「顔を見せる」「規則性を持たせる」をご紹介します。
整列させる
陳列棚を整然と配置することから始めましょう。壁や床のリースラインに合わせ、棚の商品を整列させます。人間の目は直線や直角を自然と認識します。商品の前面は棚の端を基準に揃え、棚の奥も直角に並べて統一感を演出します。これにより、店舗全体がすっきりと見え、新規のお客様も安心して入店できるのです。また、整列させることは万引き防止にも効果的です。
顔を見せる
「見た目が命」です。商品はその魅力を最大限に引き出すよう陳列します。特に平たい商品は、高さ90㎝以上の棚では立てて陳列し、傾けるための枕を背後に置きます。90㎝以下の棚では、平置きか低めの枕を使います。前後に重なる場合はひな壇陳列を取り入れ、常にお客様の視線を捉え続けるよう工夫します。
規則性を持たせる
陳列に規則性を持たせることも重要です。色やサイズを順番に並べることで、お客様が商品を比較しやすく、選びやすくなります。例えば「赤・青・黄・青」や「S・M・L」の順に並べると、視覚的に整理され、購買意欲が高まります。
もちろん、陳列は一度整えたら終わりではありません。常に欠品や商品の期限をチェックし、全体のボリュームも考慮しながら手入れを続けることが必要です。
この3つのルールを実践することで、お客様にとって居心地の良い店舗を作り上げ、購買へと繋げることができるのです。
まとめ
成功している店ほど顧客にとって入りやすく、魅力的な要素が整っています。明るく清潔な外観、分かりやすいメニュー、親しみやすいスタッフなど、初めて訪れる人が気軽に足を踏み入れやすい工夫がされているのです。また、口コミや評判が良いため、新規顧客も安心して訪れることができるでしょう。このように、入りやすさが顧客を引き寄せ、さらに繁盛する好循環を生み出しているのです。
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