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マスクをしても「通る声」をつくる! 声のプロが教える すっきり3分音読

庄野 俊哉
東海テレビ放送アナウンサー 1965年生まれ。兵庫県西宮市出身。


1.使わなければ退化する

マスク生活が続く中、私たちは「声を出す」機会が減っています。しかし、このままでは思わぬ代償を払うことになるかもしれません。それが「声の老化」です。実は、声も使わなければどんどん衰えてしまうのです。特に女性では更年期にホルモンバランスの影響で声が変わり、男性でも年齢とともに粘膜の分泌物が減少し、滑舌や声色が変わってしまいます。

では、どうすればこの声の老化を防げるのでしょうか?答えは簡単です。「声を出すこと」です。そして、著者がすすめるのは「音読」です。音読は年齢を問わず、手間もかからず、誰でもすぐに始められる簡単な方法です。音読の効果は非常に多く、特に「声・のど」の筋肉を強化し、「誤嚥性肺炎」のリスクを減らすことができます。

そもそも、誤嚥性肺炎の原因は「えん下能力の低下」です。えん下能力が低下すると、食べ物や飲み物が誤って気管に入りやすくなります。しかし、音読を続けることでこのえん下能力を向上させることができるのです。マスク生活が続く中でも、声を出す習慣を取り戻しましょう。さもなければ、声はどんどん衰えてしまいます。

2.心と脳にも効く

音読がもたらすメリットは、のどの筋肉を鍛えるだけにとどまりません。心と脳にも驚くべき効果をもたらすのです。

まず「心」への効果についてです。音読の準備として推奨される「腹式呼吸」が、実はうつや自律神経失調症の予防に役立ちます。腹式呼吸とは横隔膜を動かす呼吸法で、自律神経を整える効果があります。副交感神経が優位になることでリラックスし、メンタルヘルスに良い影響を与えます。さらに、自律神経が整うことで血圧や体温の安定、便通の改善など、多くの健康効果も期待できます。特にコロナ禍で増加するうつ状態の予防に役立つでしょう。

次に「脳」への効果です。音読は脳機能を活性化させ、老化を防ぐ効果があります。MRIで音読中の脳を測定すると、多くの脳の領域が活性化していることがわかります。これにより記憶力や認知機能が向上し、読むスピードを上げることで判断力や情報処理能力も向上します。毎日の音読習慣が脳の健康を保ち、さらなるメリットを引き出します。

3.音読の作法

ここで知っておきたいことは、音読の正しいやり方についてです。著者が紹介するのは次の3つのステップです。

1. 正しい姿勢で座る

美しい声を出すための第一歩は、正しい姿勢から始まります。体が曲がっていたり、猫背だと声が出にくくなります。椅子に座る場合、背もたれを使わず、背中と椅子の間にこぶし一個分の隙間を作りましょう。そして、肩を落としたまま背筋を伸ばします。視線はまっすぐ前を向き、少しあごを引くことがポイントです。本は机に立てるか両手で持ち、肩や肘に余計な力が入らないようにしましょう。足は肩幅程度に開いて床につけます。

2. ウォーミングアップ

顔の筋肉をほぐすことも重要です。まず、両手をこすり合わせて温めます。手の甲も忘れずにまんべんなくこすりましょう。その後、グーとパーを繰り返すことで血行を促進します。次に、掌で頬を円を描くように揉みほぐします。最後に、口角を上げてそのままキープ。これを2〜3セット繰り返すことで、顔の筋肉がリラックスし、発声がしやすくなります。

3. 腹式呼吸

音読には腹式呼吸が欠かせません。著者は胸式呼吸よりも、鼻から息を吸う腹式呼吸を推奨しています。ポイントは「吐く」ことに意識を集中することです。まず鼻から息を吸い、口からゆっくりと吐きます。3秒で吸い、6秒で吐き切るのが理想的です。おへその下に手を当て、お腹が膨らむのを感じながら、吸って吐く切り替えの際に一瞬だけ息を止めます。呼吸の際に肩が上下しないように注意しましょう。

まとめ

マスクの着用が日常化した現代、コミュニケーションに新たな挑戦が生まれました。顔の半分が隠れることで、表情から読み取れる情報が減少し、言葉や声のトーンがより重要になっています。さらに、アイコンタクトや身振り手振りの活用が求められます。このような状況下でも、人々は創意工夫を凝らし、心を通わせるための新しい方法を見つけています。マスクが障壁となる一方で、私たちはコミュニケーションの本質を再認識し、より深い理解と繋がりを追求しているのです。

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