「自作トランプゲーム」を作った者たちへ捧げる「ゴーアウト」のすゝめ
初めに
…ん?前も見たって?いやいや、よくごらんなさい。前回は「トリックテイキング」ですが、今回は「ゴーアウト」です。
で、当然出てくる疑問がこちら。
「 ゴ ー ア ウ ト 」 っ て 何 ?
でしょうね。これはゲームタイトルではなく、ゲームジャンルのお名前です。もうはっきり申し上げますとこれです。
ほら!お前らが散々遊んできた大富豪だよ!これだよ!
要は…
「手札をすべて出し切った人が勝つゲーム」
のことを指します。この記事は自作トランプゲームを作った皆様に対し、「ゴーアウト」をかみ砕き、それらを作るときの手助けをする記事です。
よろしければ最後までお読みくださると幸いです。
ゴーアウトの細部・ゲーム全体像
カードについて
ゴーアウトは、トランプで遊ぶこともあれば、例えば『ピーパー』というゲームのように専用の数字構成かつ牌を使うこともある、多彩なバリエーションで遊べるゲームです。
ここでは自作トランプゲームのことを考えるため、カードについて考えます。
大抵の場合は全てのカードを使うことがほとんどです。また、場合によってはジョーカーが数枚入ることもあります。いわゆるどんな数字にもなるワイルドカードですね。
カードの数字・スート(マーク)
トランプには当然、数字とマークが存在します。この記事では、英語圏など海外のトランプゲームに基づいて、数字のことを「ランク」、マークのことを「スート」と呼びます。
「ランク」はそのカードのもつ強さを表すもの、及び、カードの順序を示すものです。大きければ大きいほど強い。大富豪がそうであったように、今目の前に出されているカードよりもより強いランクのカードを出すことが出来る。その判断基準を定める大切なものです。
一方「スート」というのは、ぶっちゃけあってもなくてもいい存在です。これに関しては、「大富豪」のローカルルールに「縛り」というものが存在します。これは、2枚か3枚連続で同じスートが連続すると、以降全員がパスするまで連続しているスートのカードしか出せなくなるというもの。つまり、ランク最強のカードがあったとしても、同じマークでなければ出せなくなるというものです。
しかし、これは飽くまでローカルルール。これが無くても「大富豪」というゲームは成立します。あった方がよりスパイスが効くというだけで。
また、「スート」に強弱関係が生じるものもあります。これらは、台湾の「大老二(Big 2)」に見られます。同じランクでも、「スペード」がもっとも強く、それぞれのスートに強弱関係があるというものです。
基本的にゴーアウトはこの2つの要素を持つカードを寄せ集めて遊ばれます。数字の書かれたカードしかないものもありますが、それも立派なゴーアウトです。
ただ、何をどれだけ寄せ集めるかはそれぞれのゲーム次第。
もしかしたら、1から100を1枚ずつ集めて「ゴーアウトです」と言い張るゲームもあることでしょう。
得点/順位についての概念
ゴーアウトの中には、「得点」をつけ、何度かゲームを行うことによって勝敗を決めるものがあります。一方で、1度だけ、もしくは何度かのゲームを行い「順位」を決めるものもあります。
順番が前後しましたが、「順位」の概念について説明します。
「順位」を定める場合、「誰か1人を残すまで」か「1人が手札を無くすまで」の2パターンがあります。
前者の「1人残し」の場合、上がった順に単純に順位付けします。最も分かりやすい方法です。もちろん、最後まで上がれなかった下手な奴を決める残酷な方法でもあります。
後者の「1席限定」の場合、その時点で持っている手札枚数や、その中身に応じて順位を付けるパターンです。この場合、枚数の場合は同じになることも多いですし、極端に離れることもあります。また、中身を見る場合は、たとえ大量に弱いカードが余ったとしても、少しの枚数の強いカードよりはマシ、という「枚数」と逆方向の順位が付けれらることもあります。
「点数」を設定する場合、それらはいろんな要因に基づいて採点されます。
例えば単純に残ったカード1枚につき-1点であったりだとか、「ランク」に応じて減点が決まっているとか。「ランク」基準の場合は強いカードほど大きな減点となることがほとんどです。
さらに、「順位」と絡ませることも可能です。例えば1位には+4点、2位には+2点、3位には+1点だとか。早く上がれば上がるほど点数が高くなるというのが基本原則です。ただし、ルールを妙にして「1位抜けに失点をあたえ、2位に大きな加点を与える」というものもあります。(ちなみにコレ)
ゴーアウトでのプレーの最終結果を決定づけるものとして、「点数」と「順位」という概念があることを説明しました。では、どうしてこの2種類の概念があるのでしょうか?それは負け方の平等性にあります。
「順位」の場合、「1位」というのは、「2位に大差がついていても」「2位と僅差でも」どちらも同じ「1位」です。つまり、どんな状況であれ順位間の評価の差は同じです。もう少し詳しく言えば、全体から抜け順などを 見る「相対評価」になります。
「点数」の場合、上記の「大差がついたか」や「僅差か」を数値的に評価することが出来ます。たとえば、誰かが上がった時点で終了するものとして、2位と大差だった場合は「2位の点数が大きく下がる」。僅差だった場合は「小さく下がる」のように、その時の状況に応じて減点がされるわけです。これも詳しく言えば、手札0枚で終わるのが最も良いとして「絶対評価」なわけです。
ラフにまとめると、こういう感じです。
・勝てば良かろうなのだ:「順位」で決着
・道中も評価します:「点数」で決着
点数について
上記のように「点数」については様々な方式がありますが、ここで「点数」についてもう少しかみ砕いてみます。
基本的に見るものとしては以下の通りです。
残ったカードの枚数
残ったカードのランク
上がった順番
枚数に関してはまさにその通りです。1枚当たり何点だとか、1枚ごとに減点を設けることが多いです。なお、残っている枚数が多いと、減点が倍になるなどの変わったルールもあります。前に挙げた「大老二(Big 2)」もおそらくこの方式だったはずです。
ランクを見るものは、強い数字があるほど減点が大きくなる傾向があります。分かりやすく言えば、「1~13」の数字を使うゲームで、手札が残ったら「その数字分減点」というものもあります。つまり、「10」が残ったら10減点ということになります。
これらを組み合わせたものはあんまりありません。
逆に、「道中で点数を拾う場合」もあります。
珍しいゲームですが「ハギス」というゲームがありまして、これらは、カードを出していき、最後にカードを出した1人が出されたカードを獲得。獲得したカードに奇数があれば1枚につき1点がもらえる、というものです。ちなみに減点は無く、相手の手札は1枚につき5点で計上されます。
でました、珍しいパターン2。「カードに点数があるのに」「1枚当たりの点数が付く」パターンです。これもかなり変わったゲームなので何とも言えませんが…。
上がった順番は、何ゲームか遊ぶ場合に付けられるものです。
今までの物は1ゲームごとにつけて、1ゲームだけでも、複数ゲームの積み重ねでも絶対的な評価を出すものです。
しかし、この場合に関しては、複数ゲームのプレーを前提にしています。順位に応じて点数がつくということは、それらの順位の積み重ねを点数として可視化し、絶対的に成績が良かったプレイヤーを探ることをするわけです。
ゴーアウトの細部・プレー中の動作
カードの出し方
大富豪がそうであるように、カードの出し方には一定のルールがあります。
ランクに基づくものやスートに基づくものです。
通常の基本原則として、ランクが前の物よりも大きいことがほとんどです。ただし、ゲーム中にその大小関係が逆転したりするものもあります。
多くの場合は同じランクを出すのは禁じられます。ゲームによっては、あえてそれを許可している場合もあります。
スートを持つ場合、前に出ているものと同じスートの物しか出せないなどという制限があります。
「組み合わせ」とか「役」とか
この手のゲームの場合、複数枚出すことが許可される「組み合わせ」というものが存在します。「役」と呼ぶこともあるかと。
例えばランクが同じカードを「ペア」として出すことが出来るなど。
同じ数字であれば何枚でも連ねて出せるなど。そういった「まとめて出せる」という機構があります。
あるいは、「同じスートで続き数字になっている」場合は「3枚から繋げて出せる」など。俗に階段と呼ばれるものです。
これらの役は
「同じランクがそろっている」とか、「同じスートで順番」といったものがほとんどです。
また、スートに関係なく「順番になってたら出せる」というものもあります。
ゲームによっては、「役」に強さがあることがあります。この場合は、カードのランクよりも、役の枚数を強さの基準とすることがほとんどです。
例えば「13の3枚」よりも「1の4枚が強い」などといった形です。
どうしてこのような「役」を設けるかというと、出し方に制限を設ける為です。たとえ強いカードがあったとしても、前の出し方に従うというルールで、1の4枚出しに対しては数字の大きいのを4枚出さなければならないというルールになるわけです。要するに、「同じ枚数で戦う」or「枚数が多ければ強い」という原則のどちらかになります。
例外的に「フルハウス(3枚同じ数字+2枚同じ数字)」のような特殊な出し方を認めるものもあります。ここまで行くとすこし変わったゲームの部類になると思います。
また、ゲームによっては、「4枚組を前の組み合わせを無視して出せる」といった方式もあります。いわゆる「ボム」というものです。手番を割り込むこともあり得るので、この辺りでルールが複雑になりがち。それはそれで面白いんですけどね。
手番の回り方とパス
大体の場合、手番が回るのは時計回りで、1人を残してパスをするまで出されたカードは場に残り続けます。
また、他のパターンとして、「1人1回ずつカードを出すかパスをする」というパターンもあります。全員が一回ずつカードを出すかパスをした後、最後にカードを出した人が新たなカードを出して始める、という仕組みです。
そして、「パス」にもいくつか種類があります。基本的には「ソフト」と「ハード」の2つです。
前者は「大富豪」の方式です。1度パスしても、また手番が回ってくるという、常にグルグルと回り続けるパターンです。
後者は1度パスをすると「場が流れるまで、永遠にスキップされる」というものです。この方式の場合、「いったんパスして出方を窺う」ということが出来なくなります。
個人的には後者の方が好きです。すこしひりつく感じがして、パスは手札を置いて、待てばよいので、誰がパスをして、誰がカードを出したかがはっきりしやすいのです。
ゴーアウトを作成するとしよう
ここまで、長々と書きましたが、ゴーアウトを作るためには以下の項目を設定すればよいのです。
カードの構成
プレー人数
カードの出し方のルール
得点の付け方(点数で評価をする場合は)
手番の回り方
パスの方式
と、いうことで、前回同様フォーマットを作ったら自分でやれよ!って言われると思うのでやります。ええ。
①カードの構成
初めにトランプゲームだって言ってんだろ。トランプ1デッキ…。いやまて。
「トランプ1デッキ」ってどこまでを指す?
JOKERを含めるか含めないか。カードをすべて使うのか。うーん。
とりあえず、JOKERなし、それ以外全部使う52枚で行きましょう。
②プレー人数
プレー人数は3~5人とします。もうこれ自分の常套手段になってきたな。
3~6人でもいいな。後でそれは考えよう。
③カードの出し方のルール
トランプである以上、スートはいやでも付いてきます。このスートをうまく使った遊び方って何かないかしら。
スート以外に「色」という概念を使ってもいいのですが、稀にスートごとに分けた4色のトランプもあります。それを考える以上、すべてのトランプで遊べるように考えたい。一応まとめて出せるようにはしたいのです。一気に枚数を減らせるようにはしたい。
…ちょっと待てよ?「多く出せても強いとは限らないゲームシステムにするには?」
今まではカードの枚数によって制限が生じました。しかし、それを崩せるルールがあればどうなるでしょう?
思いついたのはこう。
「どんどん強いランクになるようにカードを出していく」
「同じ数字があるならまとめて出していい」
「複数枚出されたときに、出した組み合わせにないスートかつ強いランクなら、その1枚で返すことが出来る」
つまり、「7の3枚出し」をしても、例えばクラブ・スぺ―ド・ハートだったら、その組にない「ダイヤ」の8以上の「1枚」でカウンターされるという仕組みです。さすがに4枚組で出されたらダメですけど。
折角だし、縛りのルールも設けましょう。同じマークの1枚出しが2連続したら、以降はそのスートのみ出すことが出来るとします。
飽くまで1枚出しなので、2枚出しになるとこのルールは効きません。
④得点のつけ方
上記のルールのままだと、「じゃあ1枚ずつ出しちゃえばいいじゃん」と思うかもしれません。しかしここでその制限に縛りを仮想的に設けるのがこれです。
ここで失点を、手札にある「同じ数字の枚数」として考えます。
手札にあるカードについて
1枚しかない数字:-5点(-5点/枚)
2枚の同じ数字:-6点(-3点/枚)
3枚の同じ数字:-7点(-2.333…点/枚)
4枚の同じ数字:-8点(-2点/枚)
と減点を定めます。1枚ずつ出すとなんと1枚当たりの減点が増えるというトンデモ仕様。分かりやすく言えば、各数字について1枚につき-5点、以降同じ数字は1枚-1点です。
つまりちまちま出すよりも、同じ数字があるときはまとめて出した方がお得になります。逆に、1枚しかないカードは強いほどお得です。弱い1枚では太刀打ちできないこともあるかもしれませんが…。
⑤手番の回り方・⑥パスの方式
今回のパターンだと、1周するまででいい気がします。同じ人が親になりにくいというメリットが生まれます。全員がカードを出すかパスするかをしたら、その時点でカードを流す。最後にカードを出した人が次の親を務めるというルールでいいと思います。
パスについていうなら、一種の「ハードパス」になると思います。
*弱い1枚をどうする?
このままのルールで行くと、「ランクが低い1枚」のカードを処理するのに困ります。弱いものが固まると…ああ大変!特に、「最弱のランク・1枚」が最も困るはずです。となれば、それを救済する措置が必要になります。
ここで思い出してください。1枚出しの時は縛りが発動すると。その時にだけ、ランクの強弱をずらすこととします。
これまでのルールをまとめると
以上をもってゲーム完成としましょう。ではまとめます。
・使用する物
トランプ1デッキ(Jokerを除く52枚)
得点を記録する物
プレイヤー3~5人
・ゲームの準備
各プレイヤーに以下の枚数を配ります。
3人プレー時:15枚
4人プレー時:13枚
5人プレー時:10枚
余ったカードは伏せて脇に避けておきます。
・ランクについて
カードの数字には強弱があります。
「2>A>K>Q>J>10>9>…(数字の大きい順)>3」
(わかる人向けに言うと大富豪と同じです)
・ゲームの流れ
最近大富豪で遊んだ人がスタートプレイヤー(1番手)になります。
スタートプレイヤーは、手札から1枚以上のカードを出します。同じ数字であれば、2枚以上出しても構いません。
以降、時計回りに条件に沿ってカードを出します。条件は以下の通りです。
前に出されたカードよりも「ランク」が大きい。(前と同じランクを出すことはできない)
枚数が前に出されたものよりも多いなら、「ランク」が小さくなっても出すことが出来る。(ex:[Qの1枚]に対し[7の2枚]を出すことが出来る。)(後述の「ロック」が発生した場合はプレーできません)
複数枚出されている時、その枚数より少ない組み合わせを出すことは基本的にできない。(後述の「カットイン」を除く)
【重要】特殊な出し方「カットイン」/特殊ルール「ロック」
前の組み合わせが複数枚出ている時、「その組み合わせにないスート」を出すことが出来れば、1枚でプレーすることが出来ます。これを「カットイン」と呼びます。「カットインの時に限り、同じランクを出すことが許されます。」
(ex:[Jのクラブとハート]に対しては、J以上のスペードかダイヤ1枚が出せる。)
(ex:[7のクラブとハートとスペード]に対しては、7以上のダイヤ1枚が出せる。)
また、1枚出しの時、同じスートが連続して2枚出た場合、「ロック」が発生します。「ロック」が発生した場合、その時からランクの強弱が反転します。また、以降は1枚出しのみ許可され、異なるスートを出すことはできません。
(ex:7のダイヤの直後に9のダイヤが出た。この場合、以降はダイヤの8以下しか出せなくなる。)
上記のルールに従ってカードが出せない場合や、出したくない場合はパスを宣言します。
全員がカードを出すかパスをしたら、その時点で一度手番の流れを止めます。このように手番が1周することを「ターン」と呼びます。
「最後にカードを出した人」が、次のターンのスタートプレイヤーを務めます。
ターンが終了した時に、誰かが手札を無くしたら、ゲームを終了します。途中で手札が無くなっても、最後まで手番を回します。
手札が無くなったプレイヤーは+5点を得ます。複数のプレイヤー仮名唸った場合、その全員が+5点を得ます。
手札が残っているプレイヤーは以下のように点数を減点します。
1枚しかない数字:-5点
2枚の同じ数字:-6点
3枚の同じ数字:-7点
4枚の同じ数字:-8点
(各数字1枚目は-5点、2枚目以降は1枚-1点)
人数分のゲームを行って最も点数が高いプレイヤーの勝利です。
同点の場合は同着とします。
終わりに
今回は「ゴーアウト」を構造ごとに区切り、最後にゲーム制作の手本として1ゲーム作成しました。
前回のトリックテイキングと異なり、要素がかなりフリーダムに設定できる分、まとめるのに時間がかかると思います。
一方で独創的なゲームにもなりやすいので、ぜひ一度トライしてみてください。
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