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美しい日本語「海の歌」シリーズ1:椰子の実

私が住んでいる東京もようやく梅雨が明けました。今年は色々と異例なことが多いですね。例年だと「海の日」周辺で梅雨が明けることから、祝日として制定されたそうですが、今年はだいぶ長かったー。

ようやく夏空が広がり、すっきりした気持ちでいっぱいです。夏といえばやはり海。そして、毎年思い出されるのが、子供の頃に歌った「海の歌」。なぜか懐かしく思い出され、郷愁の念に駆られます。年々、子供の頃に歌った曲が思い出されるのは、なぜでしょう。

大好きな海の歌は3曲あるのですが、1日目の今日は「椰子の実」です。


「椰子の実」
一、

名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実一つ
故郷(ふるさと)の岸を離れて
汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)

二、
旧(もと)の木は 生(お)いや茂れる
枝はなお 影をやなせる
我もまた 渚を枕
孤身(ひとりみ)の 浮寝の旅ぞ

三、
実をとりて 胸にあつれば
新たなり 流離の憂(うれい)
海の日の沈むを 見れば
激(たぎ)り落つ 異郷の涙
思いやる 八重の汐々(しおじお)
いずれの日にか 故国(くに)に帰らん

1901年に書かれた島崎藤村の詩に、1936年に大中寅二が作曲された曲です。「日本の歌百選」にも選ばれていて、私は小学校で習いました。小学校で習った歌というのは歌詞は意味が分からなくても、今でもよく覚えているものですね。私は夏が近づくと、自然とこの歌が思い浮かびます。

口ずさんでいる時は歌詞の音がきれいだな、と思うくらいで、意味はあまり考えていなかったのですが、(数十年ぶりに!?)文字にしたものを目にするとまた新しく見えてくるものがありますね。


1898年の夏に伊良湖岬に滞在した柳田國男が、浜に流れ着いた椰子の実の話を藤村に語ったことがきっかけで生まれた詩だそうです。伊良湖岬は愛知県田原市にあり、太平洋と三河湾を望む渥美半島先端の岬で太平洋に面しています。


椰子の実が流れ着いた話を聞いて、こんなに素敵な詩がつくれるなんて藤村の想像力はすごいですね。そして、その日本語の美しさ。こうして漢字で読むことで初めて意味が分かるものも多いのですが(汗)、何て綺麗な表現なんだろうと惚れ惚れしてしまいます。

汝(なれ)・幾月・影をやなせる・浮寝・胸にあつれば・流離・激り落つ・八重


使われている難しい言葉の意味を書こうかな?とも思ったのですが、全部を説明してしまうと雰囲気が損なわれてしまうと思ったので、今日は是非その漢字と音と詩全体の雰囲気とで、情景を想像してみてくださいね。


1936年に曲がつけられて、一番最初に東海林太郎さんに歌われたそうですが、その音はこちら。ノスタルジックな感じ♪


そしてこちらは、UAバージョン。海の音とUAの声が素敵☆


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