お妻と遠距離恋愛してる
お妻が約20日間のヨーロッパ旅行に行っている。先日ヤフーを退職して、次の仕事までの間、「こんなにまとまった休みがとれることはそうない」と言い、1人でヨーロッパの温泉を巡る旅に出かけたのだ。
僕としては20日間もお妻と会えないなんて考えたこともなく、そして考えたくもなく、入院していた時でさえ、週に2日くらいは会えていたのに、それが20日!?
「一体どうなってしまうのか!!???」
とバラエティ番組のCMつなぎで使われるようなセリフを口にしたいほど、なんだかソワソワして出発日をむかえた。
お妻は出発日の少し前までは、「行くの迷う」と口にするほどさみしがり、不安になってはいたが、前日ともなると、もはや淡々と準備をし、Netflixで見たい映画やアニメやドラマをダウンロードしまくっていた。
さらには毎日たのしみにしている「朝ドラ」と毎週たのしみにしている「大河ドラマ」を見るためにNHKオンデマンドにも加入した。
まあ、言うても僕も40歳。お妻の旅行は張り切って見送るつもりだったし、実際、当日は朝6時に起きて一緒に成田空港まで行った。
しばらく食べられなくなるからと、一緒に和食を食べて、そして見送った。
何も問題ないと思っていた。
だけど、帰りのバスに乗ったくらいから、どうやら「さみしいおばけ」が追いかけてきていたようだ。
お妻を見送ってから、友人たちと代々木公園で花見をして、それから自宅に帰ったあたりで、そいつは追いついてきた。
めちゃくちゃにさみしい。
何時になっても帰ってこないことを、心がようやく理解したようで、とてつもなくさみしい。
日本時間の深夜に、お妻の乗った飛行機がドイツのフランクフルト空港に着陸する。
せめてそのときまでは寝ないように、なんて思っていたけど、むしろ眠れるわけもなく、ネットで運行情報を見ながら、まだかまだかとはやく着陸することを祈るばかり。
そして、ついに、現地のWi-Fiにつないだお妻からメッセンジャーで連絡があり、ようやくホッとする始末。
日本から持っていったタブレットに現地のSIMカードを入れての開通作業。無事にできるだろうかとの心配をよそにすぐ開通し、しばらくすると、ホテルに着いたと連絡があって再びホッとする。
そして日本で設定したIP電話がつながることや、自宅VPNを介すことでNetflixもNHKオンデマンドも再生できることを確認して三度ホッとした。
もう深夜2時。
だけど、ここからFacebookメッセンジャーでビデオ通話した。フランクフルトは夕方手前で明るい。まだ光がさしこむ部屋の、お妻の表情は明るかった。機内で見た映画の話など、他愛もないことで盛り上がる。
そして気がついた。
これはもう、遠距離恋愛だと。
そう、僕にとって初めての。
これから約20日間、僕は自宅でひとり過ごす。毎日ひとり分の食器を洗い、週末は自分の分だけの洗濯をする。
そして、毎日、お妻と連絡を取り合うのだ。
とてもさみしいけれど、なんだかドキドキしている。
お妻よ、君の旅行は最高の体験になる。僕の一人暮らしも。
楽しんでおいで。
でもはよ帰ってきて。
いや、楽しんでおいで。
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