見出し画像

こども達が吸う空気・こども達の人権

 わたし達の活動では物資の運搬など、様々な場面でトラックが活躍しています。すべてのトラックは、その排出する窒素酸化物および粒子状物質を抑制する触媒装置を取り付けた車両か低公害車両のみです。このように多くの団体が利用する車両について環境への悪影響の少なくする考えを取り入れることで、こども達が直接吸い込む浮遊粒子状物質を抑制し、肺がんや呼吸器系疾患など健康への影響を減らすことに配慮します。*1 
 「空気」と「こども達の人権」に何の関係があるのかと多くの方は違和感を持つはずです。ここで述べたいことは、こども達の将来に関して、無関心ではいられないということなのです。
 国連は、2011年に『ビジネスと人権に関する指導原則』という文章を示しました。原則の3つの柱として、『第一、しかるべき政策、規制、及び司法的裁定を通して、企業を含む第三者による人権侵害から保護するという国家の義務。第二は、人権を尊重するという企業の責任。これは、企業が他者の権利を侵害することを回避するために、また企業が絡んだ人権侵害状況に対処するためにデュー・ディリジェンスを実施して行動すべきであることを意味する。第三として、犠牲者が、司法的、非司法的を問わず、実効的な救済の手段にもっと容易にアクセスできるようにする必要がある』。特に多国籍企業が各国で、人権を尊重しながら事業を行うべきとのことと考えてしまいがちだが、企業を含む第三者による人権侵害から保護することは、国家の義務であるということです。人権に関し、各企業が配慮をするのはもちろん、国家も国内で活動する企業に対し、人権を配慮するよう主導的な役割を果たさなければいけません。
 児童虐待に関するニュースを見ても、いかに過去のわたし達の社会が、児童虐待やこどもの人権について無関心であったかということが分かります。
 ある芸能会社の社長(すでに死去)による、長年、こどもの人権を無視した児童虐待が行われてきたことについて、被害者の証言が多く明るみに出てきています。それに呼応して、いくつかの企業がこの芸能会社との取引を継続をしないと表明し始めています。日経新聞社の記事検索(有料版)で追跡のできた企業を順にまとめたものが表1です。各企業が掲げる人権に関する考え方と相容れないとして、今後の取引方針について表明したものです。順番については、各社のプレスリリースや会見などのタイミングもあり、日経新聞 (https://www.nikkei.com/) の記事となった日ごとでまとめた。
            表1
  2023/09/07 日本航空、東京海上日動
  2023/09/08 キリン、アサヒ
  2023/09/11 日産、サントリー、日本生命
  2023/09/12 日本マクドナルド、第一三共、花王、伊藤ハム米久、資生堂(今後の計画を白紙撤回)

 これらは、企業としての人権を尊重する意識の高さ、人権に関する法令を遵守しようとしているか否か、意思決定をスムーズに行ったか否かの指標となります。
 スポーツ報知は『一方でこの日、大手人材派遣会社(中略)などが同事務所タレントのCM放映や起用を継続することを明らかにした』*4 と、この芸能事務所との取引について、特段に変更をしない企業もあるという報道をしています(2023/09/12)。
 この記事の真偽については、"スポーツ新聞"の記事であること、署名記事でないこと、この記事のなかで取引継続の方針をもつ別の会社について、『スポーツ報知の取材に(中略)現時点で契約をすぐに解除することは考えていない』とスポーツ報知が取材をしたと記載しているが、ここであげた大手人材派遣会社に対し『スポーツ報知が取材を行った』という記載が無い。引用元をこの記事で示していない他からの転載の可能性もありえます。 (2023/09/12付記事:https://imgur.com/HtVXUFA

 ここで、人権デューディリジェンスという考え方を紹介します。組織や団体が人権に関し適切で継続的な取り組みを行うことで、各企業、団体の事業のサプライチェーンにおいて人権侵害の恐れがないか、また、活動を通じ人権を尊重するという期待を明確に表明すべき、という考え方です。人権侵害をしている団体の取引先には人権状況の改善を求める責任があるというものです。既に述べた、国連による『ビジネスと人権に関する指導原則』(2011)で強調されている考え方です。
 人権デューディリジェンス、事業のサプライチェーンのなかでの人権尊重を考えた際に、人権への配慮、本稿では、特にこどもに関する人権への配慮に問題を抱える芸能会社と取引をしている、今後の取引について再考を行わない企業が、全国各地の自治体や国との取引を継続することは、国連による『ビジネスと人権に関する指導原則』の示す、あらゆる活動において、人権を尊重するという期待を、相手に対し明確に表明しているのかという点で大きな問題です。
 ここまで、わたくし達の取引先が環境汚染・大気汚染について如何に配慮し、こども達の吸い込む空気について真剣に考え行動しているのか、取引サプライチェーンという存在があり、みんなが大気汚染に配慮することで、きれいな青空や人体に悪影響の少ない大気をこども達に残そうとしていると述べました。人権についても同様で、人権サプライチェーンについて考えをめぐらせば、我々はどのような選択をするべきなのか自明です。


*1 写真出所:マサチューセッツ工科大学HP MIT Massachusetts Institute of TechnologySchool of Architecture + Planning https://dusp.mit.edu/projects/understanding-air-quality-experiences-china 
*2  NOx・PM法は、ある一定の年数を経過したディーゼル車が定められた地域において、ある年数を超えると車検が取れなくなる法律。 この法律に適合する装置ACR PMR装置が必要です。この装置がないと車検がとれない都府県はごくいちぶであり、8都府県に限られる。これらの8都府県以外では、健康被害を出す恐れがある粒子状物質を排出する車両も走行している。

*3  企業名は略称(株式会社、ホールディングスなどは略した)です。また、日経新聞の記事についてのみを調査した。調査基準日は2023/09/12。テレビCMでの取引など大きな取引だけではなく、実際には取引金額が小さいなどで、新聞記事とならなかった企業にも、人権に配慮し当該の芸能会社との取引を見直す、見直す予定であるという企業は他にもあると思われる。

*4 スポーツ報知『日産、サントリーHD、日本生命 ジャニーズ事務所と新規契約結ばず 花王などは継続 対応分かれる 2023年9月12日 5時0分』スポーツ報知WEB版 https://hochi.news/articles/20230911-OHT1T51201.html?page=1:2023/09/12

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?