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映画『若き見知らぬ者たち』撮影終了直後!内山拓也監督インタビュー

いよいよ撮影が終了し、いざ編集が始まるというタイミングで、内山拓也監督へのインタビューを実施。通常、映画に関するインタビューは完成後や試写の時期がほとんど。だが、『若き見知らぬ者たち』では制作過程から情報発信をしていこうということで、新しい試みとしてこのタイミングでの監督インタビューを敢行した。

脚本の前に、魂がある。

  今回の映画では、さまざまなことに「チャレンジ」していると伺っています。撮影前の段階で内山監督にとって「チャレンジ」だったことはどんなことですか?

内山拓也監督(以下、内山)
俳優やスタッフがほぼ全員「はじめまして」だったというのはある意味挑戦でしたね。『若き見知らぬ者たち』は構想に7年かかっていて。構想期間が長かった分、凝り固まったものにしてはいけない、と強く思っていたんです。そのためには、自分が緊張する現場にしなければ、と。

映画は人生を映す鏡で、フィクションが現実に負けちゃいけないと思っています。撮影現場でも、主演の磯村(勇斗)と「現実で想像もつかないありえそうにないことに出会った瞬間って、リアルじゃないよね」と話していて。そういう出来事って、映像にしたら途端にベタになりすぎるんですよ。

よく「内山の作品はリアルを追求している」とか「生っぽい」と言っていただくことがあります。でも、リアルというものほど、とてつもなく「映ってくれない」ものなんですよね。現実を現実のまま映像にするのは本当に難しい。脚本の秀逸さ、つまりストーリー、構造、キャラクターというのは、最終的には自分だけでなく現場のみんなで作り上げていくもの。だけど、さらにその前にある魂みたいなものを共有することに、今回は特に力を入れようと思って。

だからこそ、ただ脚本を実現しようとしてもらうのではなく、ここに至るまでの時間や心の機敏、あとは逆に想いのすれ違いもあればそれもきちんと伝えて、ひたすらに諦めないということに努めました。

テストはしない。アドリブもほとんどなし。

  その「魂を伝えることを諦めない」というスタンスは、実際の撮影現場でどのように生きていたのでしょうか?

内山
たとえば、シーンを撮る時にテストをしませんでした。これは、俳優のみなさんにも喜んでいただけていたように思います。
緊張感があって難しいけど、ナマモノで対峙するっていうことの大切さが伝わったというか。ただこれは、一回で撮り切る美学を持っている、というわけではないんです。もちろん、もう一度撮るということもします。

それから、アドリブはほとんどしていません。現場での流れを見て、僕から率先して脚本を変えることはあります。でも、そういうときは俳優と必ず、それが直前だったとしてもしっかり話して意図を伝えています。『佐々木、イン、マイマイン』でもアドリブは1カ所しかなくて、全部狙ってやっていました。

大切にしていることは、準備したことを現場で捨てる勇気を持つということ。事前に準備した通りにするのではなくて、一旦壊す。そのときに思ったことを大切にする。この感覚を伝えるのが中々難しくて、「それが僕なんです」としか言いようがないんですけど(笑)。

日本で一番、現場でゴミを拾う監督かもしれない

  「緊張感」というキーワードが何度か出ていますが、現場での監督と役者さん、スタッフさんとの関わり方はどんな雰囲気でしたか?

内山
最終的なジャッジはもちろん自分が決めているのですが、委ねて柔軟になるところと、ある種独裁的になるところのバランスは持ち合わせようと思っています。いわゆる「監督然としている」かどうかはどうでもいい。とにかく、集中して、撮り逃さないように齧り付いているという感じでした。

カメラって、映したいものはなかなか映してくれなくて、映したくないものは簡単に映ってしまう凶暴な装置だと思っていて、現場ではそれぞれの持ち場をみんなに委ねている。だから、みんなが気づかないところを探しているのかもしれません。たぶん、日本で一番、現場でゴミを拾ってる監督だと思います(笑)。

編集前の率直な気持ちは「怖い」

  撮影が終わって、これから編集に入るとのことですが、今のお気持ちは?

内山
率直にいうと、怖いです。その日ごとに撮った映像は毎日確認したり、撮影期間中も仮で編集していたんですけど、編集の平井さんと話しながら、フルで繋げて観るのはここが初めてになる。想像していなかった良い方に行っていてくれ、という祈りでしかないですね。期待はしているけど、怖い。確信はずっと持てないです。

編集のときは、現場でのOKカットを信じないようにしているんです。結局、映像を繋いでいる時にどれが良いかがわかってくるものなので、編集の時に思ったことを、一番大切に編集しようと思っています。

だから、完成させるときは不安。『佐々木、イン、マイマイン』のときも、「面白いと思うんだけどなぁ」と思いながらもずっと不安で。でも、オフラインの状態で、観てくれた関係者の方が皆さん笑って泣いていた。それを見たときに、ちょっとだけ勇気をもらって、間違ってないんじゃないかと思えました。

『若き見知らぬ者たち』はまだ撮り終わったばかり。僕は芸術や娯楽が世の中を変えられると本気で思っているので、観客の皆さんにどのように届けられるか、それもただひたすらに諦めたくないと思っています。

取材/編集:山本梨央
写真:向後 真孝

■映画『若き見知らぬ者たち』2024年公開予定
オフィシャルサイト:http://youngstrangers.jp
映画公式note:https://note.com/youngstrangers
映画公式X(旧Twitter):https://twitter.com/youngstrangers

■映画『若き見知らぬ者たち』2024年公開予定

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原案・脚本・監督:内山拓也
出演:磯村勇斗福山翔大
製作:「若き見知らぬ者たち」製作委員会
企画・製作:カラーバード
企画協力:ハッチ
配給:クロックワークス
©2024 The Young Strangers Film Partners

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