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そうだ、ヒッチハイク、しよう⑦ 香川編 前編


電車で瀬戸大橋を渡る

人生初の四国上陸

ヒッチハイク生活10日目。朝から児島駅を出発し、電車に乗って香川は丸亀を目指す。瀬戸大橋を渡る電車の車窓から人生初の四国の景色に心を躍らせる。
丸亀と言えば大抵の人が思い浮かべるのがうどん。ただし全国に存在する丸亀製麺は別にここ丸亀発祥なわけでない、というのを現地の人から聞いた。(だから丸亀市には丸亀製麺は存在しないらしい)どないやねん

うどんは勿論食べるつもりだけれども、丸亀に来たのはそれが目的ではない。
察しの良い読者諸兄であるからして、もうお見通しであると思われる。
そう、丸亀には競艇場があるのだ。

今回の丸亀はナイター開催の為、1Rは15時半から。それまではスーパー銭湯で時間を潰す

開催まで時間があったので瀬戸大橋を臨む四国健康村で健康的に汗を流して待つ。もはやサウナとお風呂で旅の疲れを取ることがすっかり快感になってしまっており、旅は一人の人間を短期間でここまで変えてしまうものなのかと。

高松、横浜、大阪、博多にも店舗はあるが丸亀の一鶴が本店

さらに競艇場まで歩く道中で一鶴という骨付鶏の店を見かけたので腹ごしらえ。
店内を見回してみると大体みんな鶏とおにぎりをワンセットで食べていたのだが、鶏のボリュームを見てこりゃおにぎりは要らんわいと単品を注文。だが、私にはその鶏がスパイシー過ぎて、味覚の逃げ場としてのおにぎりの必要性を実感。
郷に入れば郷に従えとはまさにこのことなんだろうな、という学びを得る結果となった。
香川で食べるべき名物としてこの骨付鶏を推してくれたのが、これから香川を越えて会いに行くつもりの愛媛の友人、内藤くん
四国の民は大体自分の住む県以外の四国の三県にも詳しくなるらしく、私の四国の知識は彼とネットからの情報のみで成り立っている。

ナイター開催もまた趣があって良き

というわけで丸亀競艇。昨日の児島に比べて、丸亀の華やかさといったら!
綺麗な場内、女性専用席まで設けられソロ女子もチラホラ。今まで私が行ってきた戸田や徳山、児島とは明らかに雰囲気が違う。
丸亀に到着してすぐにあまり考えずに買ったレースが的中。やっぱ競艇ってそんなもん。

ナイター開催地だけあってライトを使ったお洒落な装飾もある

一応夜は仕事の募集もしてみたのだが、びっくりするくらいメールが少ない。働くのは早々に諦め、明日はいよいよ愛媛に行って内藤くんに会うつもりなので早めに就寝とする。


愛媛に行くつもりだったのだ、が、、、


丸亀で食べたうどん 違いが知りたくてシンプルなものを注文したが、今までのうどんはうどんじゃなかったと思い知らされた

夕方に愛媛は今治に到着するつもりで、午前中は猫ちゃんがおもてなししてくれるという地元の整体へ行ってマッサージを受けに行く。
これは内藤くんの仕事の休みを元に、岡山にいる内から練られた完璧なスケジュール。香川を丸亀しか堪能できなかったのは些か勿体ない気もするが、うどんは食べたし充分でしょう。

旅と言えばマッサージ。これは初めてタイに行ってマッサージを受けた時からの鉄板で、今回同様徒歩で歩き回ることの多い海外旅で足がパンパンになっても、マッサージさえ受ければすぐに回復してまた翌日から元気に歩き回れるという感動体験をしてから、旅にはマッサージがつきもの、むしろマッサージで回復するのを信じているからこそ多少無茶でも歩き回れると言うものだ。
整体を担当してくれたおばさんはすごくいい人で、ヒッチハイクの件で弾んだ話は結局マッサージ終了まで続いた。悲しいのは猫ちゃんにあまり懐いてもらえなかったことくらい。

体力も回復し万全の態勢で今治へ向かう為の駅へ向かう。
タイトルのヒッチハイクはどこ行った?と言われそうなくらいにはここ数日の移動を公共交通機関に頼っているのだが、予定が決まっているので仕方がない。
ヒッチハイクとは予定と時間に縛られない真の自由人にのみ許された行為なのだ。
と、ここで当の内藤くんから衝撃の連絡が届く。奥さんが感染性胃腸炎に罹ってしまった為に会えなくなった、と言うのだ。
ここまでの計画が全て水の泡と化したが、こればっかりはどうしようもない。ここ香川に留まって回復を待つ、と言う手もあるにはあるのだが、いつ回復するのかもわからないし、何より香川でそれだけ時間を潰す自信もなかったので内藤くんとの逢瀬は帰り道に回すことに。

香川県高松市

せっかく駅まで来ていたので今治とは反対方向の電車に乗って香川で最も大きい高松へ。高松には成人映画館があるらしいので、ひとまずはそこが目的地だ。

あなたの街に成人映画館はありますか?一昔前のAVや日活ロマンポルノを上映し続ける成人映画館は、このストリーミング全盛の現代において時代逆行の最先端だ。そして何故か各地の成人映画館は女装やゲイの遊び場として残り続けている。
年齢層が高めなのも全国の成人映画館の共通点で、熊本のような他に屋内で遊べるような女装施設がない県では貴重な憩いの場として重宝される。

高松の成人映画館 ロッポニカ

事前のリサーチによるとこの映画館の近くに快活もあると言うので、16時頃になってしまったがとりあえずそこで一旦化粧と着替えを済ませてから映画館に向かった。しかし、到着した瞬間に店主と思しき老人があっけらかんと言い放つ。
「もう今日は客が誰もいないから閉めるところだよ」
確かに平日ではあったが、まさか自分以外誰もいないとは。
「残念だけど、また明日にでも来ておくんな」
そう言って帰って行く店主の背中を見送りながら途方に暮れる私。女装姿になっているのでそのまま街をぶらつくのも憚られるし、かと言って今しがたチェックアウトしたばかりの快活に戻るのもちょっと気まずい。
仕方ないので映画館の隣にあった稲荷神社に心ばかりのお賽銭を投げ入れ、少しだけ居させてくれな、と呟いてその場で仕事の募集を開始する。

お賽銭のおかげかもしれない。この募集によって現れたのが、今旅行中でも1、2を争うレベルで私がお世話になった、そして印象に残り続け、以降のヒッチハイク中でも会話の鉄板ネタになり続けた家出さんであった。


家出さんとの出会い

現れたのはとても穏やかな話し方をする50代のおじさん。挨拶もほどほどに、おじさんの運転で向かったのは所謂女子会向きのラブホというやつで、写真映えを狙って何らかのコンセプトに沿った装飾がされていた。

確かにカップル向きとは思えない

今回泊まったのがロックバンドのKISSを前面に押し出したロックな部屋。他にもAC/DCやガンズ、フランク・ザッパの部屋なんかもあったりして、この階はそういうコンセプトで統一されているらしい。

一仕事終わって恒例の雑談タイム。なんでもこのおじさん、色んな事情から現在家出中らしく、私と会うまでは車中泊をしたり一人でビジネスホテルに泊まったりして過ごしていたらしい。50代にして家出中という強烈な個性は私に彼を家出さんと呼ばせるに相応しい衝撃だった。
他に泊まるアテもないならこのまま一緒に泊まりませんかという申し出を受けて、まだ夜も早めの時間だったこともあって他の仕事も取れるかもしれないという考えが一瞬頭を過ぎるも、この人の話をもっと聞きたいという欲求に負けて快諾したのだった。

さすが女子会向けだけあって、軽食のメニューも他のラブホに比べるとだいぶ小洒落たものが揃っている。私は普段からそんなに飲まない方だから缶チューハイ一本で十分なのだが、家出さんは話が盛り上がると同時に酒のペースもヒートアップしていき、いつの間にか部屋の冷蔵庫のお酒を全部飲み尽さんとしていた
酒の勢いもあったのかもしれないが、家出さんは明日以降も自分の用事が終わり次第、私の四国旅行に付き合ってくれるという。

ここまでずっとほぼ一人旅だっただけに、家出さんという心強い旅の相棒が出来たことに心を躍らせながらこの日は就寝。
そして翌日からヒッチハイクで全国を回る女装と、絶賛家出中の謎の無職おじさんの二人四国旅が幕を開けるのである。



今回の移動まとめ

  • 児島(岡山)-丸亀(香川) 電車

  • 丸亀(香川)-高松(香川) 電車


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