見出し画像

人間を共食いさせる? アミノ酸に隠された秘密

 「頭が良くなると聞いて、妊婦が味の素を1日1本使ったら子どもが奇形児になった」「味の素を使うと中華料理症候群になる」「石油から作られている」……。
 味の素ほど世間にいじめられている調味料は他にないだろう。味の素はグルタミン酸ナトリウムであり、穀類(当初は小麦、現在はさとうきびやイモ類)を発酵させ、そこからアミノ酸の一種であるグルタミン酸を抽出、水酸化ナトリウムで中和したもの。原料は天然由来だが、中和過程で化学物質が使われるので化学調味料と呼ばれる(この呼び名はNHKがつけたそうだ)。
 グルタミン酸に毒性はなく、ビタミンCより安全という研究結果もある。そもそもグルタミン酸は体内で一番多いアミノ酸で、母乳にも含まれている。それが体に悪いわけがない。グルタミン酸の過剰摂取で体のしびれ等が起きるとする中華料理症候群も、神経に作用するような生化学反応は見つからず、現在は味の素の味を嫌う心理上の問題とするのが一般的だ。ラーメンを食べて舌がしびれたとしても、それは心の問題。グルタミン酸の強い味を味覚が受け付けなかったのだ。頭は良くならないし、たくさん摂っても体の外にすぐ出るので奇形児は生まれない。
 石油からできるというのは本当で、販売直前まで研究は進んでいたそうだ。ただし石油が意外と燃えやすく危ないことやオイルショックで石油価格が高騰したことなどから販売は断念したという。

 味の素が髪の毛から作られるという噂もある。これはあきらかな間違いだが、髪の毛から別のアミノ酸は採れる。L-システインという。L-システインは育毛剤やシャンプー、化粧品に使われる一方、なんと食品にも添加される。L-システインについて、ネット上のフリー百科事典ウィキペディア海外版にも<食品向けLシステインのもっとも安い原料は加水分解した人間の髪>(筆者訳)とあった。冷凍ピザやパンに使われ、生地を柔らかくする働きをするそうだ。私たちは人間の髪の毛入りのパンを食べさせられているらしい。ある種のこれはカニバリズム=人肉食ではないのか? イスラム教徒やベジタリアンは動物由来のL-システイン(髪の毛以外に鳥の毛や牛の角からも生成される)に反対、欧州では規制されつつある。
 2002年、インドのポータルサイトChennai Onlineに「Protein from Hair(=髪の毛からタンパク質)」というインドのアミノ酸メーカー、Protchem Industries (India) Ltd社(以下Protchem社)に関する記事が掲載された。同社創業者のT.K. Mohanは<髪の毛が満載された日本に向けの貨物>(以下筆者訳)が当初は何に使われているのか知らなかったが、それが<タンパク質に加工され売られている>ことを知り、日本人技術者の協力でアミノ酸製造に乗り出したという。
 インドからのコンテナを開けたら髪の毛でいっぱいだったという噂話を聞いたことがある。その時は都市伝説だと笑ったが、いやはや。どんぶりに髪の毛が入っていたとラーメン屋で怒っている場合ではない。髪の毛練り込み済みって、ものすごく失礼だろう。
 インド国内で集められた髪の毛は<手作業でタバコの吸いがらやマッチの端が取り除かれ><髪の毛のオイルその他は熱湯で洗い>流して分解、<髪の毛から取り出されたタンパク質は主に極東の国々>へ輸出される(なおインドにはGUPTA HAIRやRAJ IMPEXといった髪の毛商社があり、長い髪をカツラ用、短い髪をアミノ酸用として販売している)。髪の毛から抽出されたアミノ酸パウダーはビーフスープやピザ、トマトソースなどに使われるという。極東の国々に日本が含まれるのは言うまでもない。

 Protchem社の取引先について記事にこうある。<Its permanent customers include Ajinomoto Co. Inc., Asahi Foods Co. Ltd., Cosmo Foods Co. of Japan, >、つまり味の素、アサヒフーズ、コスモフーズが日本の主要取引先なのだ。
 実は味の素はL-システインを完全な化学合成法によって製造する世界で2社しかないメーカーの1つだ(もう1社はドイツにある)。動物由来のL-システインに反対するイスラム圏では、味の素のL-システインに全面的に切り替えようとしているほどだ。だから味の素にとってProtchem社が作る髪の毛由来のアミノ酸は不要のはずなのだが、いったい何に使っているのか? なおインド財務省が2002年8月16日に配信したリリースによれば、味の素はProtchem社に対して直接投資を行っている。
 先日、整形外科の医師と話をしていたらプラセンタの話題になった。よく効くそうで、毎週打ちに来る女性もいるそうだ。プラセンタは胎盤エキス、赤ちゃんが生まれる時の胎盤から作る。てっきり牛か豚の胎盤だと思っていたら、
「ヒトですよ、ヒトの胎盤」
 ……人間のエキスを人間に打つのか? 髪の毛どころか肉汁じゃないか! 牛に牛を食べさせて起きたのが狂牛病である。こんなことばっかりやって、狂人病が起きても知らないぞと不安になった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?