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どら焼きが語る人生

なにもないところに誘惑は来ない

君が寝る前に
どら焼きを食べようとしてるのを見て

流石にそれ一個は
マズイんじゃないかと
半分にしておいたらどうかと

こんなこと言っても
君は全部食べてしまうけど
もしかしたら四分の一くらいは残して

その残したのを
僕にくれるんじゃないかと目論んで
割と必死に食い下がったけど
無駄に終わった

そのやり取りを見ていた長男は
昨日食べ残したどら焼きが半分
冷蔵庫にあるよと囁く

だけどそれは白餡で
僕はちょっと苦手だった

僕が食べたかった黒餡のどら焼きは
もう存在していないという現実

さてどうしたものかと思う間もなく
差し出された白餡のどら焼き半分を
素直に受け取る自分がいた

君とのやり取りがなければ
食べることのなかったどら焼きだった

人生は胸焼けの連続だ

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