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おとぎ話の夜

おとぎ話に出てくるような
完璧な三日月だった

熱を蓄えたアスファルトは
夜になってもまだ生ぬるく
なごりを惜しむように
蝉が鳴いている

気の早い秋の虫が
草むらから合いの手を入れて

こんな夜は
見えない渦が絡み合って
ぼんやりしてると
そのひとつに吸い込まれてしまう

何回も聞いたその話に
小さく頷いた僕は
別れ道で君を見送った

二人で思い出せない歌手の名前は
分からないままだった


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