1789のサイラモナムールが歌われがち問題

あくまで個人の感想ですが、ミュージカル本公演以外で1789の曲が披露される場合、たいてい「サ・イラ・モナムール」が歌われている気がしてならない…
それは多分、本公演以外で歌うのが主人公ロナン演じた加藤和樹さんが歌う機会が多いからだと思うのだけど、帝国劇場で上演された東宝ミュージカルの歴史を辿るコンサート「THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE」でもこの曲を選択された事に「う?ううん?」と唸ってしまったので、ここで私の考えを書いておきたい。

ミュージカル「1789」とは

元はフランスで上演された「1789 : Les Amants de la Bastille」というミュージカルです。
フランスのミュージカルはspectacle musicalとも言われていて、一番の特色はダンサーと歌手の分業制だと思います。
特にこの1789はこの分業制が顕著でショウアップされた作品。
それを日本で俳優がダンスも歌もこなす通常のミュージカルに落とし込む際に、お芝居重視に演出しなおしたのが小池修一郎演出版「1789 -バスティーユの恋人たち-」となります。
初演が宝塚、その後東宝ミュージカルにラインナップされました。
日本で上演されるにあたり、新曲がいくつかあります。
とりあえず曲がかっこいいから、以下にいくつかフランスのオリジナルの動画を貼るので、気に入ったらCD買ってみてくださいな。

「サ・イラ・モナムール」とは

原題は「Ça ira mon amour」
この曲は革命前夜、恋人たちと過ごす時の歌で、ソロ曲ではありません。
だけれど以下の理由で歌われるのか?と思います。

・ソロ曲ではないが全体意思による歌詞なので誰が歌ってもOK
・バラードではなくロックな感じを出せる
・革命前夜の歌だから盛り上がるんじゃね?


でもね…
まずはフランスオリジナルの公式クリップをご参照ください。

海外のミュージカルはこういう動画が出厚い。日本もこういう公式クリップ欲しいですよね~!!
そして東宝版の「サ・イラ・モナムール」

聴いてみてわかりましたでしょうか?
東宝版、オリジナルから2音(4半音)下がってるんです
オリジナルからこんなにキーが変わっているのはこの曲のみ。
キーが変わってしまうと曲のイメージが変わってしまうのです…
また、フランス語だと色んな発音があるのに対して日本語だとシンプル化してしまうために間が持たない為、原曲よりややテンポアップしています。
その為ベース音を原曲よりもシンプルにしないと…とたくさんの調整を経ている東宝「サ・イラ・モナムール」。
これを帝劇でやったフレンチミュージカルの代表曲とするのはあまりにも危険に思えるのです。
原曲から一番変えているものを代表曲にするなんて。

主人公ロナンが歌う他の曲

Tomber dans ses yeux / 二度と消せない
バラードナンバーなので、フレンチロックさはあまり無い…

Sur ma peau / 肌に刻み込まれたもの
これもバラードではあるのだけど…ロックバラードだし、サビ前とかフレンチロックらしい音の動きなので、どうせソロ曲で披露するならばこちらの方が適任なのでは?と思っています。

他の登場人物が歌うソロ曲など

1789はフレンチロックが印象的な演目なのに、主人公ロナンと恋人オランプの曲を抜き出すとバラードが多いのです。
よくよく考えてみると、ロックでノリが良い曲は他の登場人物が歌ってました。そして、アンサンブルの歌唱やダンスが無いとそれなりの形にならないものばかり…
なので先日の帝劇コンサートではサイラ~以外の以下の曲をやって欲しかったですね。

以下、公式クリップなどがあればタイトルにリンク埋めておきますので、興味があったら再生してみてくださいね。(リンクが無かったら仏版は曲名で検索してみてください)
日本版は単独のものが無いので再生開始場所を指定してあります。

La nuit m'appelle / 夜のプリンセス
ロナンの妹ソレーヌが娼婦として歌う曲。ダンサー従えてショウアップしても見栄えする曲だと思うけど、歌い手一人でも様になるからどこでも披露しやすい気がする。

Je veux le monde / 世界を我が手に
東宝版だと別称「パン屋襲撃の歌」(笑)
小麦粉が手に入らなくてパン屋に抗議しに行く時の歌ですが、女達の怒りの歌なので迫力のあるロックナンバーです。

Je mise tout / 全てを賭けて
マリー・アントワネット登場曲。派手さが命なのでアンサンブルがたくさんいるコンサートで是非やって欲しい。

À quoi tu danses ? / 誰の為に踊らされているのか?
ロベスピエールのソロ曲。ノリの良いダンスミュージックだが、アンサンブル必須で見せないといけない気がするので、それなりの規模のミュージカルコンサートで是非お願いしたい。
珍しく古川さんがミュージカルコンサートに出ていたから帝劇コンサートで聴きたかった…

Nous ne sommes / 国王陛下の名の下に
ペイロール将校の重めなナンバー。かっこいいし、これは結構アンサンブル少人数でも聴かせられる曲だと思う。が、歌いこなすのが難しい曲。

La Sentence / 許されぬ愛
ロナンと恋仲になるオランプのソロ曲。ムーディーなバラード曲。

Je vous rends mon âme / 神様の裁き
マリー・アントワネットの悟りの曲。フレンチミュージカルがどうの、は関係なく普通にミュージカルコンサートで披露できるバラード曲。

Pour la peine / 悲しみの報い
最後に生き残った人たちが歌う全体曲。

の希望

ミュージカルコンサートで1789の曲から1曲だけ、となったら、私としては

・男性曲なら 肌に刻み込まれたもの or 誰の為に踊らされているのか?
・女性曲なら 夜のプリンセス or 世界を我が手に

あたりが東宝版でもカッコよさを伝えられる選曲かなぁと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?