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NHK大河ドラマ「光る君へ」を見て考える、平安時代の女子の生き方。

毎週楽しく見ている大河ドラマ「光る君へ」は、例年になく珍しいことに武将や合戦は出てこないのに、ハラハラドキドキさせられて、ストーリーテリングの巧みさに振り回されっぱなしです。
あれが伏線で、こうなってしまったか、と。

ドラマ中に細かい描写や演出がたくさんあって、画面を作り込んであるので情報量が多いですし、1回では見落としてしまいます。
せっかくなのだから、丁寧に味わいたい。
リアルタイムで1回見て、録画をもう1回見直して楽しんでいます。
毎週楽しみに見るドラマなんて、久しぶりですね笑

「光る君へ」に登場する主要女性キャラクターを身分の上下で並べてみますと、今のところは

詮子さま(円融帝女御・右大臣家)
倫子さま(宇多帝曾孫・左大臣家)
まひろちゃん(受領階級・右大臣藤原定方の曾孫・学者の家系)
清少納言(受領階級・高名な歌人を輩出した家系)

上のお二人、大臣家の詮子さま・倫子さまは生まれついてのお嬢様で、未来のお妃様になることが期待されている人。
でも、まひろちゃんと清少納言は逆立ちしてもお妃様にはなれない。

ドラマ「光る君へ」で描かれているように、一握りの高い地位にある人以外の人間は、引き立て役としてふるまうことが求められています。
そうした立場の違いは、例えばまひろちゃんが倫子さまに、持っている本を貸しますと申し出たら、
「いらないわ」
「私は字を読むのは苦手」
と、きっぱり断られてしまうシーンに表現されていたと思います。
身分の高い女性が身につける教養は、

字を美しく書く
琴をたしなむ
和歌を詠む

ことで、本はお仕えする人が読み上げてお聞かせするもので、高位の人が自分で読むものではないからです。
自分と同じように人も
「本を読む」
という前提を持ってしまう、そこにまひろちゃんの生まれが見えてしまって、チクリと感じました。

せっせと本を読んで、女性が読むなんてはしたないとされていた漢籍にまで手を出していた紫式部は、元をたどれば大臣家という自分の血筋や、男性でさえ自分ほどに高い教養は持っていないというプライドがあったことでしょう。
でも、后として人から敬われる身分になることはないし、兄弟よりも早く漢籍を暗記できて、
「この子が男だったなら」
と惜しまれるほど優秀でも、官僚として出世することは絶対にない。
釣り合った結婚をして、高貴な方々の噂話をしたり華やかな催しに呼ばれて社交界の気分を味わう程度で満足できる人だったなら、物語の執筆はしなかったと思います。

やっぱり、思うところはあったはずで、源氏物語のなかで主人公の光源氏に、
「しっかり学問を修めた人物が高い地位に就くべき」
と、論じさせているのは、家柄だけで出世する連中がよっぽど許せなくて、ここぞとばかり力説したかったんだろうな…と笑

「私が男だったなら」
という悔いはあったかもしれませんが、でも紫式部が男に生まれたら物語を創作する原動力は生まれなかった、はず。
ポストを獲得するために人に頭を下げ、出世競争に熱中することに何も疑問を持たずに一生を終えたでしょう。
そうだとするなら、いくら才能が豊かでも、女性に生まれたせい、家柄のせいで負わされたフラストレーションを
「物語」
のなかで解放できたのは、むしろ幸運だったのかも。

日記のなかでは、ずっと
「宮仕えしんどい」
「だるい、何もしたくない」
と言い続けている人ですが、生前にすでに

あのヒット作、源氏物語の作者!
大作家の式部先生!

として有名ですし。
あれだけ仕事の愚痴を言っても、真面目に勤務して上司からの信頼も厚く、副業でプリンス熱愛物の創作もしっかり取り組んでいる。
書きながら生きて、生きながら書いた人ですね。
今でも少しだけ、次回作を期待している自分がいます。


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