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カラスは意外と重い

こんばんは。ゆうきです。

ここのところ、時間や曜日の感覚がなかったのですが、昨日、買い物の帰り道に燕を見かけました。もう4月も終わりですね。


今回もタイトル通りのお話です。


そろそろカラスが巣作りする季節になり、ご近所の掲示板にはカラスに注意の貼紙が出ていました。この時期は子育ても始まるため、ご両親がピリピリしているんですね。知人に、地面に落ちた雛を巣に返したら、攻撃されたと勘違いされて、1年近く付きまとわれた人が居ました。何で判断しているのかはわかりませんが、一回会っただけの人間をその一度で覚えるというのは賢いですね。私は取引先の人の顔を一度で覚えられないのに……。


その日も、買い物の帰りでした。一週間ぶんの食料を買い込み、重いレジ袋を両手に、公園の前に差し掛かった時です。

公園に居たカラスがギャアギャアと騒ぎ出しました。それと呼応するように、道路を挟んだ電線の上のカラスが公園に向かって何か叫んでいます。私はカラス同士の喧嘩の真ん中に立たされました。「お願い! カラスを刺激しないで!」という貼紙の文言が頭をよぎりましたが、私が何かするまでもなく、両者興奮状態です。

しかし、その時の私は「野生の生き物の喧嘩は迫力があって恐いなぁ」と呑気でした。ヒートアップするカラス。飛び立つ電線のカラス。ドン、と鈍い音がして、私の頭が誰かに殴られました。


怒られていたのは私だった


気がついたら、私は当事者になっていました。「景色」だったものの只中に、私は両手に大きなレジ袋を下げたまま放り込まれました。

一撃目では何が起こったのか分からなかったのですが、爪が食い込む感覚と、生き物のなまなましい柔らかさを頭に感じ、自分がカラスに襲われていることを理解しました。どうやら、のしかかってから、爪を食い込ませるように蹴って飛び立つ、という蛮行が私の頭頂部で代わる代わる行われているようです。思い切り体重をかけられたせいもあると思いますが、一撃の重さが中々頭にきます。洒落になりません。

信号待ちの間、私はどうすることもできず、じっと頭への衝撃に耐えていました。横断歩道の向かいに居た人は、カラスに襲われながら信号待ちをしている私を見て、引きつった顔をして一瞬固まった後、何度もこちらを振り返りながら、その場を離れて行きました。

信号が青になった瞬間、私は走って正面のマンションの物陰に隠れました。カラスはそこまで追ってきませんでした。


買ったばかりのキャップには引っかかれたような跡が残されました。衛生面を考えて、帰宅後にとりあえずファ○リーズを万遍なく噴射しておきました。キャップが無かったら恐らく血まみれだったと思います。

とても惨めでした。


それから1年、私はその公園の前を避けて通りました。親しくない友人に見つかりたくないのと似た感覚で、私はあのカラス達に出くわすことを恐れました。

あれから、同じ季節が巡ってきました。遠くから眺めると、公園にカラスが増えたような気がします。

近所の人通りは減りましたが、生き物達は変わらずそこで生活しています。


令和2年 4月30日 

ゆうき けい



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