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個人製作とは思えないクオリティのノベルゲー「シロナガス島への帰還」をレビューする(ネタバレなし)

steamでお勧めのゲーム一覧を掲げるwebページは数多存在し、私もちょいちょい見る機会はある。そんななかで見つけた「シロナガス島への帰還」が非常によくできていたので本稿でレビューしようと思う。ただし、ミステリーアドベンチャーゲームの宿命としてネタバレには踏み込めないので奥歯にものが挟まったような言い方になってしまうのはご容赦いただきたい。

本作はノベルゲームである。ノベルゲームとはnovel, つまり小説のように文章を読んでいくことが主体のゲームだ。映像と音楽を合わせて読み進めていく小説と思ってほしい。

百聞は一見に如かず。PVを見てもらえば本作の魅力はわかってもらえるだろう。事前に知っておくべき内容として、本作のキャッチコピーは「―私は帰還する あの忌まわしきシロナガス島へ―」である。

探偵であるあなた(作中では池田というキャラを操作する)は大富豪の死をきっかけに遺族から調査依頼を受け、シロナガス島へ赴く。助手となるのはPVのサムネイルを飾る完全記憶能力者「出雲崎ねね子」だ。まともに初対面の人と話せない彼女というお荷物を引き連れて身分を偽った潜入捜査が始まる。

シロナガス島ではいったい何が行われているのか?シロナガス島の悪魔とは?そしてシロナガス島で突如起こる奇怪な殺人事件…。己の身を守りながら事件の謎を解き明かし、呪われた島から脱出しなければならない。

本作との魅力となるのはそのテンポだ。飽きることなるプレイヤーを楽しませようとする作者の意思が作品から伝わる。ノベルゲームではどうしても文章を読むという行為が主体なので、長い文章を読まされてなお進展しない展開に対して辟易してしまうことがある。だが、本作では謎のちりばめ具合や事件発生のタイミングが抜群であり、謎はいまだ大量に残っているものの目の前の事象に対処しなければならない…!という緊迫感から飽きることなくストーリーに没入できる。

SnapwireSnapsによるPixabayからの画像

探偵である池田とヒロインねね子のコンビもいい。お互いにけなしあいながらも互いへの信頼が伝わってくる。常識人で自己完結している池田に対し、ねね子は一人ではどうしようもない女だが、作品中盤から好きになってくるだろう。ところどころ作者の趣味めいたものが見えるのだが、それも含めて好きになってあげられるとなおよい。

本作が個人製作と知って驚いたし、値段が500円であることにも天を仰いだ。確かに文章とシナリオは首尾一貫しているから個人製作というのは納得なのだが、こんな名作がワンコインで遊べてしまうなんておかしい(作者に多大な感謝を!)。そりゃ多くの人がおすすめゲームとして挙げるわけだ…。

結果として本作は7万本以上売れた。が、話はここで終わらない。ボイスをつけたいし、ニンテンドースイッチでパッケージ版を出したい!という作者の強い意思と、ファンからの根強い応援のおかげで2600万もの支援をクラウドファンディングで達成した。いとうかなこ氏によるイメージソング付きである。PVで見ていただいたボイス付きスイッチ版は2022年6月現在未リリースなのである。

多くの人に愛されるのが数値で可視化された本作は続編の体験版も公開されている。遙かなる円形世界(仮題)だそうだ。…いったいいつになったら正式版リリースされるんだよ!!!!早くプレイさせてくれYo!!!と思いながらURLをたまにたたいている。前作を知ってしまっていると期待が上がってしまうが、ぜひ早くプレイしたいので、作者である鬼虫兵庫氏は健康に気を付けてほしい。

ストーリーの根幹には踏み込めないのでざっとこんな説明になってしまったが、私の熱量は伝わったのではなかろうか?本作をボイス付でプレイしたいのならスイッチ版のリリースを待つ必要があるが、ボイスなしでよければsteamへ今すぐジャンプしよう。たった500円で十数時間は楽しい時間を過ごせること請負である。


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